これが
タマネギ
新常識
第855回 2006年11月5日
秋といえば、食べ物がおいしい季節ですが、実は私たちの身近にある意外な食べ物も今が旬なのです。それは家庭の常備野菜
「タマネギ」
。古くは
紀元前から食べられていた
という人類とも付き合いの長い野菜ですが、実はまだまだ知られていないパワーがあったのです。
まずは、日本一のタマネギ生産地・北海道に矢野さんが向かいました。しかし、案内されたタマネギ畑では、なぜか
大量のタマネギがゴロゴロと捨てられていた
のです。実は、農家の人が言うには、捨てているのではなく、こうして寝かせているのだとか。その理由は、
タマネギは寝かせた方が甘くなる
からなのだそうです。果たして、本当なのでしょうか?
そこで、
「寝かせていないタマネギ」と「寝かせたタマネギ」を街の人たちに食べ比べてもらいました
。すると、なんとも不思議な結果が出たのです。
それは、生の状態では「寝かせていないタマネギ」の方が甘いという人が多かったのに対して、加熱した状態では「寝かせたタマネギ」の方が甘いという人が多かったのです。なぜ、こんな結果になったのでしょう。
そこで、両者の糖度を測ってみたところ、
「寝かせていないタマネギ」よりも「寝かせたタマネギ」の方が、糖度が約2倍も高い
という結果がでました。つまり、農家の人が言っていたとおり、寝かせたタマネギは甘くなっていたのです。それなのに、なぜ生の状態では「寝かせていないタマネギ」の方が甘いという人が多かったのでしょうか?
実は
「寝かせたタマネギ」は、辛み成分も同時に増えていた
ことがわかりました。つまり、辛みが甘みを打ち消してしまい、生の状態では「寝かせていないタマネギ」の方が甘く感じたというわけだったのです。しかし、
この辛み成分は、加熱すると消えてしまう性質をもっている
ので、加熱した場合は「寝かせたタマネギ」の甘みをちゃんと感じられるようになります。
ちなみに、甘いと言われる
「新タマネギ」
とは、この「寝かせていないタマネギ」のことで、今回の実験から生で食べたときに甘さが感じられるということがわかりました。
タマネギは寝かせると甘くなる。寝かせていない新タマネギは生で、寝かせているタマネギは加熱すれば、甘く食べられるのだ!
実は、いくつかの資料で
「タマネギの香りには眠りを誘う効果がある」
という報告がなされているのです。しかし、本当なのでしょうか?そこで、「本当にタマネギの香りで眠くなるのか」大実験!
普段、なかなか園児たちがお昼寝してくれずに困っている保育園
に協力して頂きました。
実験方法は、園児たちには内緒で、タマネギ25個分のみじん切りを詰めた「タマネギクッション」を、お昼寝する部屋に置いておき、園児達の様子を観察するというもの。すると結果は、前日までは元気いっぱいで全然お昼寝しなかった園児たちが、なんと
タマネギクッション置いた日は次々と寝息を立てて眠りだしたのです
。これは確かに普段よりよく眠っていると、先生も驚きの結果になりました。
しかし、この実験だけではまだ納得できません。そこで今度は、矢野さんがタマネギの香りをかいだ時にどんな変化が起こるのか、脳波を調べてみました。すると、矢野さんがタマネギをかぎだしてから数分後、
脳に入眠のときに現れる「シータ波」という脳波が活発に出始め、なんと居眠りを始めた
のです。やはりこの結果からも、タマネギの香りには、眠りを誘う効果がありそうだということがわかりました。
しかし、まだその理由はよくわかっていないのですが、
タマネギの香りが副交感神経を刺激して体をリラックスさせ、眠りを誘っている
のではないかと考えられているのです。
皆さんタマネギを調理する時に、外側の茶色い皮は捨てますよね。しかしこの皮、何かに使えないものでしょうか?
そこで茶色い皮を分析してみたところ、タマネギの内部を紫外線から守る役割をする
「ケルセチン」
という物質が多く含まれていることがわかったのです。ならば、
「紫外線を防ぐというなら日焼けから肌も守ってくれるのか?」
茶色い皮を煮出して濃縮し日焼け止めを作ってみました。それを腕に塗り、日焼けをしてみると、なんと見事にケルセチンを塗った部分だけが、日焼けをしていなかったのです。しかも、その効力は日焼け止めクリームよりも、紫外線をカットしていることがわかったのです!
今回のタマネギでは、香りに眠気を誘う効果や、外側の皮に紫外線をカットする効果など、新事実が確認されたのだ!