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違い歴然! 温泉 入浴法
第856回 2006年11月12日


 肌寒いこれからの季節、お湯にのんびり浸かって日頃の疲れを癒してくれるのはやっぱり温泉ですよね。そこで今回は温泉とその入浴法を科学します。

 日本には全国に約3000ヶ所も温泉があり、その数はなんと世界一です。その理由は日本には火山が多く、熱せられた地下水に、様々な成分が溶け込み「温泉」となって湧き出しているからなのです。ちなみに温泉と認められる条件は、二つあります。一つは源泉の温度が25度以上あること。そしてもう一つは、19種類の特定成分のうち1つ以上の成分が規定量以上含まれること。このどちらかを満たしていれば温泉として認められます。
 まず紹介するのは年間およそ300万人もの人々が訪れる日本三大名湯の一つ、草津温泉です。草津のお湯は、源泉の温度が98度と高く、昔は「湯もみ」をして温度を下げていました。そんな草津の湯は恋の病以外はなんでも治せると言われていますが、矢野さんが長湯をしていると体がピリピリしてきました。注意書きを見ると、「強酸性質」と書かれていました。そこで、草津の湯の酸性度を調べてみるとPH1.9でした。ちなみに一般的な水道水は中性で、PHおよそ7です。PHが低くなれば酸性、高くなるとアルカリ性を示します。温泉につける前と一週間後のコンクリート比較お酢のPHが3ですから、つまり草津の湯は酢よりも強い酸性のお湯なので体がピリピリしたのでした。その酸性の強さを調べるためコンクリートと包丁を草津の湯の「湯畑」に一週間沈めてみました。すると一週間後、なんとコンクリートは表面が完全に溶け、中の石がむき出しになり、包丁は刃の部分が溶けてボロボロの状態になってしまったのです。
 ではこの草津のお湯には一体どんな効能があるのでしょうか?それを確かめるために体の細菌の数を調べる培地を使って実験です。まずは温泉に入る前に手のひらを培地につけておきます。そして、3分間草津の湯の強酸性泉に入浴した後の新しい培地に手をつけます。その培地を30度で24時間置いたところ、温泉に入る前には手にいっぱい付いていた細菌が入浴後はほとんど死んでいたのです。普通の湯で同じように実験しても、草津の湯の殺菌効果とは比べものになりません。草津の湯はこの強い殺菌効果が特徴で、「皮膚の湯」とも呼ばれますが、長時間入浴すると皮膚にある良い細菌まですべて死滅してしまうので入りすぎに注意することが必要です。強酸性泉の正しい入浴法をまとめると(1)長時間入浴すると体に必要な菌も死んでしまうため、一回の入浴時間は3分。(2)肌荒れを防ぐためにあがり湯をして皮膚の表面から酸性泉を流し落とす。(3)アルカリ性の石鹸は酸性水では泡立たず、さらに皮膚のばい菌は入浴で死んでいるので石鹸は不要。この強酸性の温泉は、他に山形県の蔵王温泉、秋田県の玉川温泉などが有名です。

所さんのポイント
ポイント1
草津などの強酸性の温泉ではアルカリ性の石鹸が泡立たず、温泉自体に殺菌効果があるので体を洗わなくていいのだ!

 続いて矢野さんは最近注目を浴びているという大分県の長湯温泉を訪ねました。早速入ってみるととてもぬるく、温度を計ってみるとわずか31.4度でした。そして、お湯に浸かると体中が泡だらけになりました。実は長湯温泉は、高濃度の炭酸ガスが溶け込んだ珍しい温泉だったのです。温めてしまうとせっかくの炭酸ガスが揮発してなくなってしまうのでお湯はぬるいままだったのです。しかし驚いたことに長い間入っていると体が温まり、温泉に浸かっていた部分は真っ赤になったのです。これは一体どういうことなのでしょうか?そこで実験です。長湯温泉とほぼ同じ温度、炭酸ガスの濃度も同じ「炭酸湯」とただの「さら湯」を用意し、この2つのお湯で入浴時の血流量を測定します。15分間それぞれ入浴しましたが、さら湯の場合は体温より湯の温度が低いため、時間が経つにつれて血流量が下がり血行が悪くなりました。続いて炭酸湯は、なんと入浴直後から血行が良くなっていくのです。そして15分後にはさら湯に比べ9倍以上も血行がよくなっていたのです。この秘密は、体にたくさんの炭酸ガスが付いた時、皮膚を通過した炭酸ガスが血液に入ります。すると体は「血液中の酸素が少なくなった」と勘違い、酸素を補うために血管が広がり、その結果血行が良くなると考えられています。長湯温泉が注目されているわけはこの炭酸ガスの効果によるもので、長い間入っていられる温泉だから長湯温泉と名付けられたのです。そして、炭酸泉の正しい入浴法をまとめると、(1)多くの炭酸ガスを吸収し血行を良くするために、一回の入浴時間は15〜20分。(2)皮膚にある温泉成分が流され効能が持続しないのであがり湯はしない。(3)炭酸ガスが皮膚の汚れや細菌を洗い落としてくれるので石けんは不要。  試しに炭酸温泉を使って炭酸飲料のラムネを作ってみました。ガムシロップで甘みをつけ大分名産のカボスで風味を出し混ぜて、目がテン特製!温泉ソーダの完成です。そのお味は試飲した所さんも絶賛でした。炭酸泉は「胃腸の湯」とも呼ばれそのまま飲んでも効果が期待できる「飲泉」でもあります。炭酸は胃腸を刺激して食欲増進や疲労回復にも効果があると言われています。 おもりが落ちた傾斜角度の比較  次に、お湯に浸かると肌がツルツルするという、美肌の湯を紹介します。その女性の夢を叶えるという温泉は神奈川県厚木市の「飯山温泉」です。しかし、本当に肌がツルツルになるのでしょうか?そこで、番組特製の美肌測定マシーンで実験します。手を板の上に置き、その上に重りを載せて、板を斜めに上げて重りが落ちた角度を測定します。落ちた角度で「肌のツルツル感」がわかります。同じ温度で、片方の手は「温泉」のお湯に、もう一方は「さら湯」に入れ、5分間入浴します。ゆっくり板を上げていくと、美肌の湯の方は35度で重りがすべり落ち、さら湯の方は65度でようやくすべり落ちたのです。  確かに、美肌の湯に入ると肌がすべりやすくツルツルになったようです。この美肌の湯のPHは10.25で、草津温泉とは逆の強いアルカリ性のお湯でした。  では、なぜアルカリ性のお湯に入ると肌がツルツルするのでしょう?実は、人間の皮膚には脂があり、この脂がアルカリ性の温泉水と反応し、皮膚の表面に石鹸と似た物質を作っていたからなのです。ならばと、美肌のお湯で洗剤を使わずに頑固な汚れのカレーが付いたTシャツを洗濯してみることにしました。比較のため普通の水道水を使ったぬるま湯で同じ洗濯をしましたが、水道水の場合はほとんど汚れが落ちていませんでした。一方美肌の湯で洗ったTシャツは汚れがかなり薄くなっていました。美肌の湯の強いアルカリ性が石鹸効果をもたらしたようです。 それでは、強アルカリ性泉の正しい入浴法です。 (1)入浴時間は5分ぐらい。(2)あがり湯はしない。(3)皮脂が少なくなり乾燥肌になるおそれがあるため石鹸は不要です。その他、長野県の白馬八方温泉や大分の由布院温泉も強アルカリ泉として知られています。

所さんのポイント
ポイント2
温泉は効能によりそれぞれ効果的な入浴法が異なるので、注意して入るべし!




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