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体にいい 綿 驚きの秘密
第857回 2006年11月19日


 タオルやTシャツをはじめ、綿(めん)は私達の生活の必需品です。そこで今回はとっても身近でも意外と知らない綿を科学します。

 人類と綿のつきあいは古く、その出会いは7000年も前になります。綿は、植物としての呼び名は「わた」、製品になると「めん」と呼ばれます。世界の繊維需要量を見てみると綿が30%以上を占め、化学繊維を含めてもトップの需要量です。でも実は日本はほぼ100%輸入に頼っているのです。
綿花  しかし、東京にもワタが畑に生えているということで佐藤アナが狛江市で綿花を個人的に栽培しているという畑を訪ねました。畑には白い綿花(めんか)がポンポンと咲いていました。
 佐藤アナはワタの収穫を体験させて頂くことにしました。綿花を摘むと、フワフワした中にコロコロしたものの感触がありました。実はこれがワタの種子なのです。種子を半分に割ってみると、種子の表面から毛が出ていていました。綿毛は種子の皮の細胞が変化したもので、つまりその綿毛が集まった綿花は花ではなく実なのです。白い綿毛が、花が咲いているように見えることから綿花と呼ばれていたのです。ちなみに、本当の綿の花はアオイやハイビスカスと同じアオイ科の植物で、黄色い可憐な花を咲かせます。
 では、この綿花一つからどのくらい糸がとれるのでしょうか?昔ながらの糸紡ぎを出来る方に協力してもらいました。まずは綿操り機(わたくりき)というものを使い、綿花をローラーの間に通し種子を取り出します。続いて、弓のような道具が登場。弦の部分でかたまった綿毛をほぐし、おはしに巻き付けてまとめます。その綿毛の端を指で軽くつまんでねじっていくと、不思議なことにするすると糸が出てきました。最初にきっかけを作れば後は糸車にかけてよっていくだけです。こうして巻き付けて10分が経過しましたが糸はまだまだ出てきます。今回紡いで頂いたのは20番手という一般的な太さです。でも、なぜちょっとつまんでねじっただけでするすると糸が出てくるのでしょうか?実は、綿毛の一本一本が長いのではなく、綿毛はその毛自体が天然のよじれを持っていて、そのよじれとよじれが絡みあい一本の糸になっていくのです。一般的な品種の綿の毛は2.5cm程度でとても短いのです。結局一つの綿花から30分以上かかりようやく糸が巻き切れました。長さを測るために今度は、1周1m30cmの巻き取り機で糸を巻き取ります。すると73回転分もあり、余った長さを足すと、なんと95m3cmもありました。

所さんのポイント
ポイント1
一般的に綿の毛は2.5cm程の短さだが、綿毛自体が天然のよじれを持っていてよじれとよじれが絡みあい一本の糸になっていくのだ!

 さて、私達の身近にある綿製品ですが、一体どのくらいの綿花が使われているのでしょうか?そこでTシャツの糸の長さを調べる大実験です。今回は紳士用LサイズのTシャツで実験します。両腕の部分は身ごろから外し糸を引き出し別に計測します。このTシャツは2本の糸を同時に引っ張るとほどけるタイプでした。Tシャツから巻き取っている実験1周200mの陸上競技場で糸の端をパイロンに貼り付けます。男性にTシャツを着せ回転椅子に座らせグルグルまわってもらいます。一周するのに約1時間、200mでまだ裾だけです。開始から6時間が経過した頃、とうとうTシャツも首輪だけになり、8時間後にすべてTシャツはほどけました。Tシャツ本体は10周と半分ということでおよそ4200m。それに両腕の部分を足すと5604m33cmでした。これを綿花1個からとれる糸の長さ95mで割った結果、Tシャツ一枚はおよそ60個分の綿花で作られていたことがわかりました。
 さて、綿の魅力と言えば汗などをタップリ吸ってくれる吸水力です。その吸水力の秘密を探るため綿毛を顕微鏡で見てみると、中心に大きな空洞がありました。この空洞に水分が取り込まれるのです。綿毛の断面が直径60cmのマンホールだとすると、直径25cmもの大きな穴が空いていることになります。
 綿は着る以外、布団にも使われていますが、布団の打ち直しの実力を明らかにしてみました。まずは究極のせんべい布団をフリーターの方に提供してもらいました。中を見ると綿がつぶれてペラペラになってしまっています。この究極のせんべい布団を老舗の布団店で打ち直してもらうことにしました。いよいよ打ち直し開始です。まずは中綿を裂いてバラバラにし機械にかけます。せんべい布団は、長年の圧力で繊維と繊維が絡み合い、固まった状態です。それをドラムに付いたトゲでほぐし、元の綿毛に戻すことでふわふわの状態になるのです。ちなみに、昔は弓のような器具の弦の部分で布団を打っていたので打ち直しと呼ばれたのです。潰れた綿を一度バラバラに分解し、綿毛に戻したら薄いシートの形にします、一枚の布団から20枚のシートができました。それを重ねて布団の形に仕上げていきます。人が寝る部分は、他の部分より厚みをもたせるのがコツなんだそうです。角をキレイに織り込み、上からもう一枚シートを掛ければ完成です!高さを測ってみると、打ち直す前のせんべい布団は3cmでしたが、打ち直した後はなんと27cmで9倍の厚さにもなりました。蘇った布団の寝心地は最高だと持ち主も大喜びでした。
 さて、綿といえば、綿菓子を思い浮かべますが、もちろん綿そのものは食べられませんよね。そこで本当のワタから食べられるリアル綿菓子は作れないものか考えてみました。ワタについてリサーチすると、種子の殻の中になんとキシロースという糖が含まれていたことがわかりました。種子の中身から綿実油という油を取っている会社から大量に殻をもらい、その殻からキシロースを取り出してもらおうという無茶なお願いをしてみました。まず手作業で殻を剥き、ミキサーで粉々にし、加圧釜にかけて中のキシロースを抽出します。その殻を、不純物を取り除きながら1週間かけて精製、結晶にするという大変な作業の末、3万個の種子から100グラムのキシロースが完成しました。このキシロースを綿菓子機にかけ、リアル綿菓子の完成です!そのお味は綿菓子そのもので、所さんも大喜びでした!

所さんのポイント
ポイント2
綿の種子の殻含まれるキシロースという糖を抽出して綿菓子機にかければ、リアル綿菓子も可能なのだ!でも、作業はとても大変…。




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