イノシシ
は猛進せず!?
第864回 2007年1月7日
2007年の干支、
イノシシ
。イノシシは私達に身近な動物にもかかわらず、あまり知られていない事実がたくさんあったのです。そこで今回はイノシシのあらゆる疑問を科学で徹底解明します。
まずはこんな疑問。有名な孫悟空に出てくるブタの妖怪、
猪八戒
。
ブタなのに「猪」という漢字が使われているのはなぜでしょう?
その謎を解明すべく矢野さんが中華料理屋さんを訪ね、店員の方に聞いてみると、なんと「猪」という漢字は、
中国ではブタを指す
のだそうです。
そもそも
ブタは今からおよそ1万年前に人間がイノシシを家畜化した
ものと言われており、よりたくさんの肉がとれるように、太った胴長の体型に改良され現在のブタが誕生しました。
ブタとイノシシは学名も同じであるように、分類学上は同じ動物
なのです。
そこで実際に見比べてみると、鼻もひづめもしっぽも似ています。大きな違いといえばやはりキバと言えそうです。しかし、イノシシ専門の研究者の方によると、
ブタにもキバがある
というのです。実際に
デュロック
という品種の巨大なブタを見てみると、確かにキバがありました。実はおなじみの
白いブタも安全のためにキバが切られている
だけなのです。ブタとイノシシの子どもであるイノブタ同士でもさらに子どもが出来ることも、同じ動物である証拠なのだそうです。
続いては、誰もがイノシシと聞いて思い浮かぶ言葉「
猪突猛進
」についてです。その意味は「むこう見ずに猛然と突き進む」と広辞苑にあります。
そこで、イノシシは
本当に猪突猛進するのか実験
してみました。直線のコースの途中に障害物として木の枝をたくさん置いて、人が後ろから追い立てたところ、イノシシは何の躊躇もなく突っ切ってしまいました。研究者の方によると、イノシシは林や藪の中を駆け抜けるのに最適な体型で、ちゃんと
考えて行動している
というのです。
そこで、今度は
向かってくるイノシシの目の前でワンタッチ傘を開いてみました
。すると、
傘が開いた瞬間、イノシシは急ブレーキをかけUターン
したのです。確かにイノシシはむこう見ずどころかちゃんと考えて行動していたのです。ショーで平均台や滑り台を乗り越える事ができるのもイノシシが賢い何よりの証拠。実際にイノシシがスタジオに登場して、跳び箱やサッカー、さらにはお手まで披露してくれました。
イノシシは決して猪突猛進ではなく、しっかり考えて行動するとても賢い動物だった!
ところで、最近、夜になると住宅地に出没してはゴミを漁るイノシシが各地で問題になっていますが、実はイノシシはもともと他の動物に比べて低い里山や平地に住んでいて、人間がその生活圏に近づいたため、住宅地に出没するのは当たり前なのだそうです。さて、そんな
イノシシは何を食べるのでしょう?
そこで、
色々な食べ物を与える実験
をしたところ、
野菜類
はもちろん、肉、魚、ゆで卵などの
タンパク質もあっさり完食
し、さらには人間でも好き嫌いが別れる
くさや、納豆、銀杏、梅干もあっという間に食べてしまいました
。基本的に雑食のイノシシは普段ドングリや木の根などを食べていますが、昆虫なども食べるのです。ならばと、
おろしたワサビを与えてみると
、さすがに食べない様子でしたが、なんと
ワサビに体をこすりつけ始めた
のです。
実はこの行動、理由ははっきりと分かっていませんが、強い臭いは虫除けになるとイノシシが思っているからだと考えられています。ちなみに「
のたうち回る
」という言葉は、イノシシが
ヌタバ
と呼ばれる場所で寄生虫から身を守るために泥をこすり付ける、
ヌタウチという行動から生まれた
のだそうです。
さて、
イノシシ料理
といえば、赤い身がぼたんの花のように盛り付けられたぼたん鍋ですよね。でも、
なぜぼたん鍋以外のイノシシ料理は見かけないのでしょう?
その理由は、
肉に臭みがある
ためで、味噌仕立ての鍋で臭いを消して食べるほかなかったからなのです。そして肉の特徴である赤い色は、
ミオグロビン
と呼ばれるタンパク質の色で、ミオグロビンが多いと
脂肪の酸化が早く進みブタ肉より臭いが強くなりやすい
のです。しかし、かつては捕獲後の処理に時間がかかりましたが、最近はイノシシを
生け捕りにして処理し、すばやく冷蔵することで臭みの少ない肉もできた
というのです。
そこでこの肉を取り寄せ、トンかつではなく
イノかつ
を作り、佐藤アナを含む6名にどちらがイノシシ肉かを知らせずに、トンかつと食べ比べてもらったところ、なんと
全員がイノかつのほうが美味しいと答えた
のです。さらに研究所で肉の味を決める遊離アミノ酸の組成を調べてみると、
ブタ肉よりイノシシ肉のほうがアミノ酸を多く含み、味が濃く美味しい
ということがわかりました。その理由は、イノシシがイベリコ豚と同様、秋にドングリをたくさん食べるからと言われています。
ならばとフレンチの巨匠にイノシシ肉を使ってカルパッチョやポトフを作ってもらい、スタジオで所さんに賞味してもらうと、その料理は全て大好評でした。
アミノ酸を多く含むイノシシ肉は、臭味が出ないうちに素早く処理すれば、とっても美味しく食べられるのだ!