ホタルイカ
の光で読書
第878回 2007年4月15日
春の富山湾といえば、これから旬を迎える「
ホタルイカ
」。ホタルイカといえば、美味しさと共に、幻想的に青く光る姿が思い浮かびますよね。そこで今回は、
なぜホタルイカは光るのか?という謎
に、科学の目で迫りました。
ホタルイカの仲間は世界でおよそ40種類います。しかし
日本で食用とされているのはホタルイカ一種類のみ
。そして、5〜6センチと非常に小さい体長ながら、腕は10本あり、漏斗(ろうと)と呼ばれるところから水を吐いて泳ぎ、スミも吐きます。つまり
ホタルイカは、体は小さくても普通のイカと全く同じ特徴を持っている
のです。では、
なぜホタルイカは光るのでしょう?
その秘密を探るべく、矢野さんは
富山湾に面する滑川市
を訪れ、深夜のホタルイカ漁に同行させてもらいました。
ホタルイカ漁は、
昼間は水深200mから600mの深海に生息し、夜になると餌のプランクトンを求めて海面近くにまで上昇するホタルイカ
を、事前に仕掛けておいた網で引き上げる漁法で行われます。そして、漁船から網を引き上げると、大量のホタルイカが青く光りを放ち、幻想的な風景になるのです。
続いて同じ市内にある、
ほたるいかミュージアム
を訪れた矢野さん。そこで出会った大量のホタルイカを光らそうとすると、とても簡単に
網ですくうだけで青く光った
のです。さらに手のひらに乗せてみても光っていました。そこでよく見ると、ホタルイカの
10本のうち2本の腕だけが光っていた
のです。
光を放っていたのは第4腕と呼ばれる一対の腕の、先端部分にある黒い発光器
でした。では、
ホタルイカは自然の状態ではどんな時に光るのでしょう?
飼育員の方に伺うと、敵が来ると光って相手を驚かせるのだそうです。そこで、部屋を暗くして、
ラジコンのミニ潜水艇をホタルイカの水槽に入れて泳がせてみました
。
すると
腕を光らせたホタルイカが潜水艇に襲い掛かってきました
。つまり、ホタルイカが光るのは、
敵に接触した時に相手を威嚇する手段だった
のです。
ホタルイカは敵に接触した時、威嚇するために二本の腕の先端部分を強く光らせるのだ!
ちなみにホタルイカの光を放つ仕組みですが、発光物質ホタルイカ・ルシフェリンと発光酵素ホタルイカ・ルシフェラーゼという物質の化学反応によって光り、これは
ホタルなどが光る仕組みとほぼ同じ
なのだそうです。
ホタルイカの強い光を見た矢野さんは、
この光で字を読むことができるのか?
という実験に挑戦してみました。まずは光の明るさを測定する
輝度計
で、ホタルイカの光を測ってみると、
2.155カンデラ毎平方メートル
でした。ちなみにろうそくの光は5152で、
線香の光は0.497
。ホタルイカの光は
線香の約4倍も明るかった
のです。
早速、暗闇にいる矢野さんに、記事の内容を知らせずに
防水加工をした新聞を渡し、ホタルイカ一匹の光で記事を読んでもらいました
。すると
一匹では読めませんでしたが、大量のホタルイカを透明な箱に入れて挑戦してみると、大きな文字の見出しだけは読むことができました
。
ところで、実は
ホタルイカが光るのは腕だけではない
というのです。
では一体、他にどこが光るのでしょう?
そこでホタルイカの体を高感度カメラで見てみると、
体全体がポツポツと星空のように光っていました
。なんとホタルイカの体には
小さな発光器が約1000個も並んでいる
のです。さらにこの発光器は
海の底に向いたおなか側にだけ集中的についていました
。これは一体何のためでしょう?
そこで、
発光ダイオードを取り付けたホタルイカの模型を作り、さらに青い紙の下側につりさげて、太陽のある海面近くにいる状態のホタルイカを再現し、下からカメラで映してみました
。すると、ホタルイカが発光していない時は、影になった姿がくっきり見えますが、
発光ダイオードを徐々に明るくしていくと、体が消えたのです
。これは敵に襲われないために自分の影を消す「
カウンターシェイディング
」と呼ばれるもので、ホタルイカは眼の上にある光受容器で光の状態を感じ取って海の色と同化して身を守っていたのです。
ホタルイカは下から魚に狙われないように、おなか側にあるたくさんの小さな発光器を光らせ、自分の影を消していた!
さて、普通のイカと同じように、
イカスミを持つ
ホタルイカですが、イカスミといえばイカスミスパゲティ。ということで、佐藤アナが
ホタルイカのイカスミでスパゲティ作りに挑戦
しました。まずはホタルイカからイカスミを取り出す作業ですが、ホタルイカのイカスミは体重のわずか0.15%と非常に少なく、
一匹分でわずか0.013g
しかありません。これはホタルイカのすむ深海は暗いため、イカスミを使って分身の術のように敵から逃げるのはあまり有効ではないからと言われています。
しかし、佐藤アナは4人のお手伝いさんと一緒に地道にイカスミを取り出し続け、ついに
5.63g
のイカスミを集めてシェフに調理を頼みました。
そして、全部で
420匹
のホタルイカを使った贅沢なホタルイカスミスパゲティを所さんにスタジオで食べてもらいました。すると、これまでの目がテンで食べた料理の中で一番美味しいかも…とまさにお墨付きをもらいました。