貝が飛ぶ!?(秘)
バカガイ
第879回 2007年4月22日
「
バカガイ
」という貝をご存知ですか?聞いたことはあってもどういう貝かイメージが浮かばない人は多いはず。でも、実はバカガイは私たちにとても身近で、バカとは言えないくらい驚くべき力を秘めた貝だったのです!
そもそも
バカガイって、一体どんな貝なのでしょう?
そこで矢野さんが、バカガイがいるという千葉の潮干狩り場でバカガイ探しに挑戦。しかし収穫できたのはアサリとハマグリだけでした。ところが、捕れたハマグリらしき貝を焼いてみると中から
赤い身
が出てきました。実は矢野さんが
ハマグリだと思っていたこの貝こそがバカガイだった
のです。よく見るとハマグリとは模様は似ているものの中身は全然違っていたのです。
実は、
寿司ネタでおなじみの「青柳」と「小柱」はバカガイだった
のです。その名前の由来ですが、一大産地である東京湾で、
馬鹿みたいに大量に採れるのでバカガイ
といわれた時期もあったそうです。しかし、貝殻から、
特徴的な赤い舌のような身を出しているのがバカっぽく見えるからというのが有力な説
とされています。
寿司ネタでおなじみの「青柳」も「小柱」もバカガイの体の一部。バカガイは私達にとても身近な貝だったのだ!
では、
バカガイはその名の通り本当にバカなのでしょうか?
そこでまずは、
アサリ、ハマグリ、バカガイを砂の入った水槽に入れて、砂潜りレースをスタート
。すると
バカガイが驚異の23秒というタイムであっという間に砂に潜って一着
。ちなみにハマグリは2分10秒、アサリは14分50秒もかかりました。
バカガイはなぜこんなに速く砂に潜ることができるのでしょう?実はバカガイは大きな赤い舌のような、「
斧足(ふそく)
」という筋肉がとても発達していました。バカガイはこの斧足を伸ばしては、先端を曲げ砂に引っかけ、2枚の殻を大きく開け閉めして砂の中へ斧足を振動させ潜っていたのです。
実はこの
斧足こそがお寿司屋さんで握りになる「青柳」
なのです。ちなみに、青柳の名前の由来は、江戸時代「青柳村」と言われていた現在の千葉県市原市付近の海で大漁に捕れたからだそうです。
さて、いつもポカンと貝殻をだらしなく開けているように見えて、敵に襲われたらひとたまりもなさそうなバカガイ。一体、
バカガイは,どうやって身を守るのでしょうか?
そこで天敵、2枚貝の殻に穴を開け食べてしまうという
肉食性のツメタガイをバカガイに近づけてみました
。すると、ツメタガイが近づいた瞬間になんとバカガイは
砂の中から勢いよく飛び出しジャンプして逃げた
のです。
バカガイは砂から出した水管で天敵の存在をキャッチし斧足を使ってジャンプをしていました。その
ジャンプの記録はなんと18センチ
。バカガイの大きさは5センチですが、もし、
バカガイが所さんと同じ172センチあったとすれば、条件は違いますが棒高跳びの世界記録6.14メートルを棒なしでジャンプ
したことになります。さらに、
バカガイの殻の重さは同じ大きさのハマグリと比べてもおよそ半分
だったのです。つまりバカガイは
高く遠くに飛ぶために殻を軽くしていた
のです。
バカガイは速く砂に潜ることができたり、天敵からジャンプして逃げることができたりと、優れた能力を持つ貝なのだ。
さて、お寿司屋さんで食べられる青柳ですが、実際
食べているところは斧足の部分だけ
。実はバカガイは
内臓周辺にある膜の中に入った砂がとりにくいため、内臓は捨てられていた
のです。
ならば砂抜きすれば食べられるはずと考えた矢野さんは、バカガイをきれいな海水に入れ持って帰ると、アサリは元気なのにバカガイは
全て死んでしまっていた
のです。
実は、アサリは、海水が一時的に干上がる干潟に生息しているため無呼吸状態に耐えられる仕組みを持っているのに対し、バカガイは海中に生息しているので、この仕組みを持っておらず、
水中の酸素が不足するとすぐに酸欠で死んでしまう
のです。そのため、バカガイは
すぐに死んでしまうので砂抜きが完全にできない
のです。
ならばバカガイを長生きさせれば砂抜きができるはずと考えた矢野さんは、水槽にエアレーションをつけてバカガイの酸欠を防ぎ、
完全に砂抜きをさせてみました
。そして48時間後にレントゲンで見てみると、砂抜き前にはあった砂の白い影が完全になくなっていました。
そしてこのバカガイを使ってプロの料理人の方に
今まで出来なかった「バカガイまるごと料理」
を作ってもらいました。スタジオに登場した焼きハマならぬ焼きバカ、煮ハマならぬ煮バカ、バカ蒸し、バカ汁は、どれも大変おいしく、所さんもバカガイをすっかり見直したようです。