春の
京都
へ! 絶景の謎
第880回 2007年4月29日
毎年賑わう大人気の観光スポットといえば「
京都
」。実は、京都のほとんどの美しい寺院や庭園には池や滝が設けられているのです。そこで、京都の風景には欠かせない、
水
をテーマに京都を探っていくと、これまでとは違った京都像が浮かび上がってきました。
京都市は海から遠く離れた、三方を山に囲まれた盆地。平安京が造営された794年から1896年に東京遷都されるまで、京都には千年以上も都が置かれていました。そしてこの
千年もの間、京都が栄えた秘密がなんと豆腐に隠されている
と言うのです。矢野さんが京都の街を歩いたところ、
約3km四方のエリアに20件以上もの豆腐屋
がありました。そして、ある豆腐屋さんに立ち寄ると、豆腐ではなく
水だけを貰いにくるお客さん
がいました。実はこのお店の豆腐は、
製造からすべて地下水を利用
して作っていて、お客さんは地下水を貰いに来ていたのです。調べてみるとこの一帯では
ほぼ全ての豆腐屋さんで地下水を利用して
いました。
京都に豆腐屋さんが多いのは、美味しい地下水が豊富にあるからだった
のです。
ならば京都市内のどこを掘っても地下水が出るのかを確かめたくなった矢野さんは、工事現場を探し、改装中の民家の庭を掘ってみることに。スコップを使い3時間穴を掘りましたが、地下水が出るのはとても手で掘れる深さではないことがわかりました。
そこで、近くに地下水を掘っている現場があるというので行ってみると、ボーリングマシーンという機械で穴が掘られていました。しかし、マシーンで掘っても
地下水が出る深さまで掘るには3日かかる
とのことでした。そして3日後、現場に行ってみると、大量の地下水が湧き上がっていました。そして、
この水が飲めるかどうかは緑茶で試験すればわかる
とのこと。早速この地下水と、違う層から取った水質が良くない地下水それぞれに緑茶を注いでみると、
水質の良くない地下水は、数分で真っ黒に変色
しました。これは、
水の中に鉄などの金属が多く含まれていると緑茶の中のタンニンと反応して色が黒く変化
してしまうからなのです。このお茶の試験に合格した地下水はとても美味しく飲めました。
確かに、京都の街のど真ん中に美味しい地下水がありました。京都には上水道が完備した現在も
7000以上もの井戸がある
と言います。しかし何故これほど地下水があるのでしょうか?実は、
京都盆地の地下に巨大な水瓶が存在している
というのです。
関西大学の楠見教授が最新機器を使い地道な調査を続け、実に5年の歳月をかけて成功させた、三次元で京都の地下を表現した映像を見てみました。すると
京都の地下には琵琶湖に匹敵する211億トンもの大量の水が眠っていた
ことがわかったのです。
京都の都が千年も続いたのは、都市が発展するのに欠かせない農業用水や生活用水が京都の地下に豊富にあったからだった!
さらにこの地下水を利用したある特殊な施設が京都の錦市場のお寿司屋さんにあるというので行ってみました。なんと
店の奥に井戸
があったのです。さらに階段でその地下に降りてみると、そこにはなんとも不思議な空間が広がっていました。温度を測ってみると、
外気温は変化しているのに部屋の温度は一日中ほとんど変化せず涼しいままの
この部屋は、実は
地下水を利用した天然の冷蔵庫
だったのです。この地下水のおかげで海から遠く離れた京都でも魚介類が食べられていたのです。実は錦市場もかつては魚市場でした。
また銭湯にある水風呂も京都が日本一の設置率
です。その理由は、地下水が年間を通して温度が一定で水温調節が必要なく水風呂にピッタリだからだそうなのです。
さて、京都のお楽しみと言えば
京料理
。繊細な京料理の味付けには京都の水が欠かせないと言います。それは何故でしょう?
そこで、東京の地下水と京都の地下水を比較するため、それぞれの水で昆布ダシをとってどちらが美味しいか対決してみました。審査員は舌には絶対の自信を持つ3人のソムリエの方々と特別参加の佐藤アナ。慎重なテイスティングの結果、なんと、
佐藤アナ以外の全員が京都の水でとったダシが美味しい
と選びました。感想を聞いてみると、
京都の水は、余韻が長い、奥が深い
というのに対し
東京の水は、苦味や雑味を感じる
とのことでした。一体どういうことなのでしょうか?実はダシを取っている時に
東京の水の方が灰汁
が多く出ていたのです。この灰汁こそが、昆布ダシを飲んだ時に感じられる
雑味の元
だったのです。
なぜこのような差が出たのか?その理由は
硬度の差
にありました。硬度とは、
水に含まれているカルシウムやマグネシウムなどのミネラルの量
を表します。硬度を比較してみると、
京都の水は15度、東京の水は150度
と、東京の水は
ミネラルが10倍も多かった
のです。東京のような硬度の高い水でダシを取ると、
昆布のうま味成分グルタミン酸が水のミネラル分と結びついて灰汁
になるのです。素材の味を活かす京料理にはやはり
京都の水が適していた
のです。関東の水が関西の水より硬度が高いのは関東地方が火山灰土壌で、ミネラルが溶け出しやすい性質を持っているからなのです。一般に、カツオなどの魚介系ダシの場合は魚の臭みを取る硬度の高い硬水の方が向いていると言われています。
ミネラルの少ない京都の地下水は、繊細な素材の味を引き出す京料理に最適の水だった!