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救え 東京湾 ヘドロ発電
第937回 2008年6月8日


 近年、水質浄化の努力が実り、キレイになってきたと評判の東京湾。しかしそんな東京湾に、密かに忍び寄っている危機があったのです。

 矢野さんが江戸前寿司専門店に行ってみると、なんと東京湾で獲れたのはアナゴとコハダだけで、シャコ、ハマグリなど海底でとれる他のネタは東京湾以外で獲れたものでした。一体、東京湾の海底に何が起きているのでしょうか!?
 東京湾は、富津岬と観音崎を結んだラインの北側が内湾、南側が外湾と呼ばれています。近年、内湾の海底に住む魚介類が獲れなくなってきたとういうので、その理由を探りに、矢野さんがお台場の海へ向かいました。早速潜ってみたところ、海水は意外とキレイで小さいハゼがたくさんいました。しかし、沖へ行き潜ると、海底から黒いドロが採取できました。さらに矢野さんは船で内湾の中央部へ向かい、水深15メートルの海底のドロを採取してみると同じような真っ黒のドロが採れ、強烈な匂いを発しています。実はこれはヘドロと呼ばれ、なんと東京湾の海底のドロがどんどんヘドロへと変わっているというのです。そこで、研究家の方に、実際にヘドロを作ってもらいました。水槽に東京湾からとってきた砂と海水を入れ、そこにお米のとぎ汁も入れ、その状態のまま1週間置きます。その様子を観察すると、2日目に黄土色の物体が底に溜まり、7日経つとその物体が真っ黒になりヘドロが出来ました。なぜ普通の砂がヘドロへ変わったのでしょう?このヘドロを顕微鏡で観察してみると、微生物がいっぱいいました。実はヘドロはプランクトンの死骸が泥に混じったものなのです。米のとぎ汁などに含まれ、プランクトンのエサになるリンは、浄水施設でも取り除くことが難しく、河川から流れ込み、プランクトン増加の原因になっているのです。その増えたプランクトンが死にヘドロになり、死んだプランクトンを微生物が分解するとき、硫化水素が発生して悪臭が生まれるのです。

所さんのポイント
ポイント1
私達の生活排水が原因で東京湾に大繁殖するプランクトン。その死骸が泥に混じりヘドロになっていくのだ!

 ところで、ヘドロを作る実験の時に、同じものを入れた水槽をもう一つ用意し、片方にアサリを入れてみました。するとアサリがプランクトンを食べ、水槽の水がキレイになっていったのです。さらに、アサリを1時間入れただけの水は、その後1週間放置してもヘドロが出来なかったのです。かつて東京湾に多くあった干潟が埋め立てられたことでアサリなどプランクトンをエサとする生物が激減したこともヘドロ増加の原因の一つだったのです。
 そして、再び海底にヘドロが溜まったポイントで水中の酸素濃度を測定してみると、水深15メートルの海底は、なんと魚や貝が窒息死する無酸素状態だったのです。これは溜まったヘドロをバクテリアが分解する時に酸素が使われるためで、ヘドロの量が多いほど酸素は大量に使われます。その結果、今この瞬間も海底に生きる生物が窒息し死んでいるのです。
ホンビノスガイ  さて、なんと東京湾の海底には元々いた生物が消え、いるはずもない外来生物が侵入しているというのです!試しに海岸を掘ってみると、ハマグリの仲間で、味も見た目もそっくりなアメリカ原産のホンビノスガイという貝が大量に出てきました。
 さらには地中海原産のチチュウカイミドリガ二も発見し、ムール貝としてお馴染みのムラサキイガイも防波堤にびっしりついていました。実は彼らは海外の貨物船が安定のために現地で汲んだバラスト水を東京湾で捨てる際や、養殖など、様々な形で東京湾に侵入していたのです。しかし、酸欠状態の東京湾の海底で、なぜ外来生物は生きられるのでしょう?そこでハマグリVSホンビノスガイで耐久実験です。東京湾の海水の入った水槽にそれぞれを入れます。すると、4日目にハマグリは死んでしまいましたが、ホンビノスガイはなんと1週間以上も生き延びたのです。実はホンビノスガイは酸欠や水温の変化に強く寿命は40年とも言われるタフな貝でした。東京湾の海底にはこうした生命力の強い外来生物が住み着いていたのです。

所さんのポイント
ポイント2
東京湾には、外国船が捨てる水から侵入した、生命力の強い外来生物が多く住み着いている!

 さて、ヘドロといえども泥!ということで、ヘドロで陶芸はできないかと工房を訪ねました。プロは塩分など余分な成分が多く柔らかすぎるヘドロに悪戦苦闘しながらぐい飲みを作りましたが、焼きあがった作品は不純物が多いせいで、焼く前より大分縮んでしまいました
ヘドロ電池  さらにはなんと、ヘドロが電池になるとのことで、実際に開発者の方に作ってもらいました。まずは針金で2つの炭を繋ぎ、片方をペットボトルに入れます。そこにヘドロを入れその上に海水を入れます。最後に海水の中にもう一方の炭を入れたらヘドロ電池の完成です!この電池4つとLEDをつないでみると、見事に点灯!
 実は、ヘドロの中でバクテリアがプランクトンの死骸などを分解する時、水素イオンと電子が作られます。電子は電極となる炭を通り水の中の酸素と結びつき、海水側の炭の方へ移動するため、電気の流れが作られるのです。このヘドロ電池の電力は弱いながらも、スタジオでは目覚まし時計を鳴らすことに成功しました!



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