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インフル (秘)科学対策
第1008回 2009年11月7日


 猛威をふるう新型インフルエンザ。この冬さらに流行が心配されています。そこで今回は、意外と知られていないインフルエンザの疑問を解消します。

 インフルエンザが冬に流行する理由は、「冬は湿度が低く乾燥し、ウィルスが生き延びるから」と思っている方が多いようですが、試しに、80%と40%の湿度に保った容器にインフルエンザのウィルスを入れ、5分置いてみると…なんと湿度80%の容器だけでウィルスが生き延びるという真逆の結果に!なんと、ある専門家の研究によれば、湿度はインフルエンザの流行に関係なく、1m3の空気中に含まれる水分量が11gより少なくなると、ウィルスが生き残りやすくなるというのです。さらに、空気中に含まれる水の量は、温度によって限界があり、気温が下がるほど、水分量の限界値も下がっていきます。実は、実験で使った80%の容器の温度は9℃と低く、水分量が少ないのでウィルスが生き延び、40%の容器は35℃と温度が高く、1m3当たりの水分量が11gを超えているため、ウィルスは死滅したのです。
 では、この水分量11g以上を満たすのはどんな場所でしょう?矢野さんが空気中の水分量がわかる計測器を持ち、色々な場所で測ってみました。まずは東京タワー周辺で測ってみると…空気中の水分量は9.5gと危険領域!さらに、海ほたるパーキング、奥多摩・日原鍾乳洞、草津温泉の源泉と、どこも水蒸気がたくさんありそうな場所ですが、結果は全てアウト。どうやら冬の屋外では、インフルエンザウィルスから逃げるのは難しいようです。そもそも気温13℃未満では、1m3あたりの水蒸気が11g以上になることがないので、日本で流行するのは仕方ないようです。

所さんのポイント
ポイント1
インフルエンザウィルスは、湿度が高くても、空気中1m3当たりの水分量が11g未満だと生き延びてしまうのだ!

 さて、インフルエンザのウィルスは、鼻や口から人間の体内に侵入しますが、鼻の中に入ったウィルスはどうなるのでしょうか?そこで、ウィルスに見立てた人口甘味料を鼻の中に置いてみると…5分後、男性が「甘い」と反応しました。今度は鼻の中に墨汁をつけ、内視鏡で覗いてみると、鼻の中を、奥へ奥へと移動していくのがわかりました。実は、鼻の粘膜には繊毛と呼ばれる毛が隙間無くはえていて、1分間に900回以上の速さで鼻の奥へと動いているのです。鼻から入ったウィルスや雑菌は、繊毛の動きによって喉へと移動し、セキやタンと共に体の外へ出されたり、胃に運ばれ胃酸で分解されます。つまり、繊毛の動きが速いほど、ウィルスから体を守ることができるということ。では、夏と冬で繊毛の動きはどう変わるのでしょう?温度と湿度を設定できる人工気象室で、まずは暖かく湿った梅雨時の環境を作り、人工甘味料を3人の鼻の中に置きます。そして、甘いと感じるまでの時間を計測してみると、3人の平均タイムは4分19秒でした。今度は日本の冬場の環境にして再び実験すると…平均は8分32秒。気温が下がると毛細血管が収縮し繊毛の動きが鈍り、防御機能が弱くなるので、冬は注意が必要なのです。

 さて、インフルエンザ対策に良いとされる「手洗い」は本当に効果的なんでしょうか?まずは、細菌の数で汚れを測る機械で、番組ADが朝起きて顔と手を洗った後に計測してみると、手の汚れは475でしたが、顔は2959とかなりの数値。そして、午前中の仕事を終えた後、もう一度計測すると、顔は2倍の5917、手の汚れはなんと17倍の8136に!紫外線を当てた女性の顔彼が今日触った物も計測してみると、エスカレーターの手すりは12699。エレベーターのボタンは7500。パソコンのキーボードは12000。車のハンドルは19200と、どこも細菌だらけ!感染予防には、こまめな手洗いが効果的なようです。でも、ウィルスは手から直接侵入しないからと安心してはいけません。試しに、紫外線を当てると光る特殊検査薬を2組の親子全員の手に塗り、そのまま普通に過ごしてもらい、20分後、顔に紫外線を当ててみると…なんと全員の顔中、特に口の周りにたくさん検査薬がついていました。大人でも、手で無意識に顔を触っている事が多く、口や眼などの粘膜から接触感染してしまうのです。

所さんのポイント
ポイント2
人は無意識に細菌のついた顔を手で触ってしまい、口や眼などの粘膜から感染してしまう。手洗いはこまめに行うことが重要なのだ!

 ところで、ウィルスは空気中でどのように広がるのでしょうか?そこで、満員電車を再現したセット内に、蛍光塗料の粉末を人間の咳と同じ速度で噴射します。すると…粉末は人と人との間を縫って、遠くの人の全身につくほど広がりました。このような飛沫感染はマスクで予防できるのでしょうか?そこで、マスクの中がどれだけクリーンなのか調べるため、マスクの内側と外側にセンサーを置き、両方の微粒子の数を測定します。N95規格マスクを装着する所さんまずは、一般的なプリーツ式のマスクを装着し計測すると…およそ80%も漏れ入っていました。実はパッケージによく書かれている99.9%カットとはあくまでもフィルター部分だけの性能だそうです。次に顔にフィットする立体型マスクで計測すると、結果は63%。一般のマスクはどうしても隙間ができてしまうようです。そこで、病院などで使われているN95規格と呼ばれるマスクで計測してみると…漏れ率は0.31%という驚きの高性能でした。でもこのマスクは医療向けのため、市販のマスクでできるだけ隙間を無くして装着する事を心がけましょう。



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