卒業式
で呼びかける訳
第1074回 2011年3月19日
3月は別れと旅立ちの季節。中でも象徴的な行事といえば、「
卒業式
」ですよね。そこで今回は、卒業式の秘密を科学で解明します。
そもそも、なぜ卒業式をする必要があるんでしょうか?そこでこんな実験です。10人の学生さんを5人ずつのA、Bのグループに分け、それぞれのチームに、プロの先生が教える、全く同じ材料を使ったステンドグラスの体験教室を受講してもらいます。そして、両チームとも3時間かけて、初めての作品を仕上げた後、Bチームだけには、先生から一人一人に終了証書が手渡され、ねぎらいの言葉もかけてもらいます。つまり、卒業式を行ったのです。さて、ここからが実験本番!皆さんには自分が作ったステンドグラスに値段をつけてもらいます。すると…
Aチームの平均は1170円だったのに対し、終了式を行ったBチームの平均は1753円と、大幅に上回ったのです。
最高価格をつけた女性に話を聞くと、終了証書にお誉めの言葉まで頂いたからと、自信満々のコメント。集団心理学の先生に、この理由を伺うと、
終了式を行ったことで、自分のやってきたことが一定のレベルに達したと保証をもらった気分になり、自信がついたためだと考えられるそうです。つまり、卒業式にも実験と同じく、卒業生に自身を持たせるという効果があるようです。
卒業式を行うことで、卒業生には何かをやり遂げたという気持ちが芽生え、自信を持って次のステップへ進むことができるのだ!
さて、卒業式といえば卒業アルバム。街で皆さんに自分の写真について聞いてみると、写りには誰一人納得していない様子。でも、プロが撮った写真なのに、なぜでしょう?そこでこんな実験!ある高校生の男子を、卒業アルバムと同じ方法でプロの写真家に撮影してもらった3枚と、目がテンが独自に編み出した、ある特別な方法で撮影した3枚、計6枚の写真をパネルに貼り付けます。そして、何も知らない街行く人に、一番良いと思う写真を選んでもらいます。すると…なんと25人中22人が、目がテン写真室で撮った写真3枚のどれかを選んだのです!同じ実験を、女子高校生も含む、合計4人で行った結果、いずれも目がテン写真室の写真が圧倒的に支持を集めました。
さて、目がテン写真室では一体どうやって撮影が行われたかというと…
実は、カメラの横には写真家ではなく、マジックミラー。高校生側から見ると、単なる鏡で、高校生たちは自分の表情をチェックしながら、リモコンシャッターを使い、自分の好きなタイミングで写真を撮影していたのです!
マジックミラー越しの写真が人気を集めた理由を心理学の専門家に伺うと、
撮影に慣れていない一般人は、いざカメラを向けられても、自分の表情がわからず、笑顔を作れないためだと言います。つまり、高校生は鏡を見ながら表情を作り、理想の決め顔でシャッターを押していたからこそ、良い写真が撮れたのです。
ところで、卒業式といえば、一人一人が学校での思い出を言葉でつないでいく呼びかけ。でも、なんで日本中の小学校で行われるようになったのでしょう?
そこで実験!同じ小学校に通う生徒を2チームにわけ、同じ内容の文章を、片方は「呼びかけ」で、もう一方には代表者が最後まで読み上げる「一人読み」で、それぞれの保護者の方々に聞いてもらいました。文章の内容は、「ボリビアの文化と歴史」。あまり馴染みのない国のことを、2つのパターンで発表します。
さて、ここからが実験の本番!2チームの発表が終わった後、保護者の皆さんには、子供たちが発表したボリビアに関する20問のテストに挑戦してもらいます。
実は、「呼びかけ」と、「一人読み」で、どちらが記憶に残るか検証する実験だったのです。そして、かなり発表がたどたどしかった、呼びかけチームの保護者の皆さんの平均は8点。対して、一人の子が流暢に読み上げた、一人読みチームの保護者の方々の平均は5点。呼びかけチームの方がなんと3点も上回ったのです!
この理由を専門家に聞くと、呼びかけのほうが、「自分の子供がうまく言えるのか」、「自分の子供はいつ言うのか」などが気にかかり、自然と関心が高まったためと考えられるそうです。実際に、呼びかけチームの保護者の方に話を伺うと、自分の子供以外の時でも、集中して聞いていたそうですが、一人読みチームの保護者の方は、途中で自分の子供が読まないとわかり、他の事を考えてしまったそうです。つまり、呼びかけは、もともとすべての子供たちが発言できるようにと始まったものですが、結果として、聞いている保護者の方々に内容がよく伝わるので、卒業式の定番になったようです。
呼びかけは、保護者の方々が最後まで集中して聞き、内容がよく伝わるので、卒業式には欠かせないのだ!