「ジンギスカン」
と
「スイーツ」
の科学
第1186回 2013年7月14日
北海道グルメの大定番といえば、やっぱり「ジンギスカン」。そして!とろける口どけが人気の甘〜いお菓子北海道スイーツ。そこで本日の目がテンは、北海道グルメスペシャル!ジンギスカンとスイーツに隠された秘密を科学の力で解明します。
①大実験!鍋の形で味が変わる?
②北海道の牛乳はなぜ乳脂肪分が高い?
③北海道スイーツの特徴“口溶けの良さ”は生クリーム!?
④生クリームを入れると“とろみ”が増す?
①大実験!鍋の形で味が変わる?
たっぷりの野菜と、羊の肉を豪快に焼いていただく、まさに北海道民のソウルフード「ジンギスカン」!柔らかくてヘルシーだと言われ、女性にも大人気の「羊の肉」。その美味しさを探る上で気になるのが、ジンギスカンならではの丸く盛り上がった鍋。ではなぜジンギスカンだけ、こんな不思議な形の鍋を使っているのか?そこで札幌で実験!
素材・大きさ・厚さが同じA「ジンギスカン鍋」とB「フライパン型の鍋」を2種類用意し、この2つで同じ部位の羊の肉を、同じ時間だけ焼きます。鍋の形が違うことで味に違いが出るのか、それぞれで焼いた肉をお客さんに食べ比べてもらったところ・・・ なんと12人中9人がA「ジンギスカン鍋」で焼いた方が美味しいと判定!この理由を、肉の味に詳しい専門家に伺うと、「脂が落ちる時にマトン(羊肉)臭の分岐脂肪酸が除かれるので臭みが減る」という。羊の脂には、臭みを持つ成分が含まれていて、加熱することで溶け出します。肉の下に脂がたまるフライパンとは違い、ジンギスカン鍋で焼いた肉の脂は縁の方に落ちていきます。ジンギスカン鍋の丸い山型は、脂を落とすことで臭みを減らし羊の肉を美味しく食べるためだったんです!
しかも、この丸い山型にはもう一つ、羊の肉を美味しくする驚きの秘密が!温度変化が分かるサーモグラフィで二つの鍋を比較してみると・・・二つを同じ火力で加熱すると、ジンギスカン鍋の方がどんどん温度が上がり、早く赤くなったんです!その秘密は、鍋の裏側にある“空洞”。ジンギスカン鍋の場合、火で温められた空気が、空洞の中で対流し、熱が閉じ込められます。一方、フライパン鍋の場合、横に逃げていく熱があるため、ジンギスカン鍋より高温になりにくいのです。では、早く鍋が高温になると、なぜ肉が美味しくなるのか?専門家によると「メイラード反応が起きやすいのでいい香りがする」。メイラード反応とは、トーストや餃子など、焦げることで出来る美味しい香りのこと。高温になるジンギスカン鍋で燒くことでさらに臭みが消え、香ばしさが増すんです。
ジンギスカンは、羊の肉をおいしく食べるための究極の料理法だったのだ!
②北海道の牛乳はなぜ乳脂肪分が高い?
口当たりが濃厚な北海道の牛乳。その濃厚さを他の地域の牛乳と比較してみると、北海道以外の牛乳の乳脂肪分は平均すると3.8%なのに対し、北海道の牛乳は平均4.0%と乳脂肪分が高かったんです。この乳脂肪分の高さが、濃厚な口当たりの秘密。でもどうして、北海道の牛乳は乳脂肪分が高いのか?牧場の方に伺うと、「北海道の牛は牧草を食べているので、それだけ(牧草の)成分が多い牛乳になって(乳脂肪分が)濃くなる」という。
実は、牧草に含まれる繊維質が、牛の体内にいる微生物の働きで、乳脂肪分の元になる物質に変化するんです。つまり、牛が牧草をたっぷり食べれば食べるほど、牛乳は濃厚になるんです。そして、牛たちがたくさん牧草を食べる理由は北海道の土地柄にありました。
乳牛のホルスタイン種は夏でも涼しいオランダやドイツ北部が原産地。そのため、牛たちが気持ちよく過ごせるのは4℃から24℃。ホルスタインは暑さに弱く、25℃以上になると、餌の量が減り、牛乳の乳脂肪分が少なくなるんです。しかし、北海道の月ごとの平均気温をみると、夏でも25℃を超えません。乳牛たちの食欲が落ちることがないので、北海道では1年中、濃厚な牛乳ができるんですね。
北海道以外でも高原などの涼しい地域では濃厚な牛乳が生産されるのだ!
③北海道スイーツの特徴“口溶けの良さ”は生クリーム!?
北海道グルメの中で、特に人気が高いのが、甘いお菓子スイーツ!その大きな魅力とは、「口溶け感」にあるようなんです。そこで、“とろける口どけ”の秘密を探るべく、ルタオの工場へ。ルタオといえば、北海道スイーツの中で指折りの人気を誇るチーズケーキ。ベイクドチーズとクリームチーズムースの2層が織りなすとろける口どけがたまらないんだとか。では、そのとろけるような口どけ感はどうやって生み出されているのか?今回、特別に工場見学!
まずは下の段のベイクドチーズケーキ。ずらりと3列に並んだ型にタネを流しこんでいき、それを一気にオーブンで焼き上げます。焼き上がったベイクドチーズケーキの上にチーズムースを注ぎ込み、最後にムースを表面全体に塗り、スポンジをまぶして完成。この中で、とろける口どけを生み出しているのがチーズムース。なんと、このムースに大量の生クリームを使っていたんです!実は、ルタオのチーズムースには年間100トンもの生クリームが使われており、この生クリームが口溶けの良さを生み出しているようなんです。
では、生クリームを入れるとどれだけとろける口溶けになるんでしょうか?そこで実験!2種類のチョコを溶かして固めますが、Bには生クリームを入れて生チョコに。まずは二つの硬さを計ってみると、やはり生チョコの方が圧倒的に柔らかい。続いて、溶けやすさを計ってみます。
傾斜のついた板を環境試験室の中に設置し、そこに銅板を載せ、温度計で溶ける温度を計測します。銅板のスタートラインには、普通のチョコと生チョコ。温度を徐々に上げ、どちらが早く下の皿までたどり着けるか実験したところ・・・30℃を超えたその時、生チョコがゆっくり動き始めました!一方、普通のチョコも溶け始めましたが生チョコはどんどん溶けて、その差を広げていきます。ところが!38℃を過ぎたとき、普通のチョコが急に溶けて、一気に加速しそのままゴ〜ル!一方、抜かれた生チョコはその後もマイペースに溶けて40℃でゴール!口溶けの良い生チョコは先に溶け始めたのに、最後、一気に溶けた普通のチョコに抜かれてしまったんです。これは一体どういうことなのか?食品科学の専門家に伺うと・・・「溶ける温度が普通のチョコレートの場合は短い、生チョコレートの場合は長くゆっくり溶けていく」という。
普通のチョコに含まれる植物油は30℃〜32℃と狭い範囲で一気に溶けますが、生チョコの生クリームに含まれる乳脂肪は10℃〜40℃まで少しずつ溶けていく性質があるんです。では、それが“とろける口溶け”にどう関係しているのでしょうか? 専門家によると「生チョコの方が口に入れてより早く溶け始める。これが口溶け感につながっている」。
普通のチョコは、口に入れてからある程度温まらないと溶け始めませんが、生チョコは、口に入れた瞬間から少しずつ溶け始めるため口溶け感がいいと感じるのです。生チョコなどの生スイーツが要冷蔵なのも、10℃以下で保存しないと溶け始めてしまうため。
生クリームを入れると「口溶け感」が良くなるのは、乳脂肪が低い温度から徐々に溶けるからなのだ!
④生クリームを入れると“とろみ”が増す?
生クリームを入れることで美味しくなるもう一つのポイントは「とろみ」。では、生クリームを入れることでどれだけ“とろみ”が出るのか実験!流しそうめん機を二つ用意し、Aには「水だけ」、Bには「生クリームと水を1対1で割ったもの」をAと同じ量投入。アヒルの人形が、30秒間で何周するか比較したところ・・・結果、Aのアヒルは6周したのに対し、Bのアヒルはたったの2周。確かに、生クリームを入れると、とろみが増すことは明らか。
では、とろみが増すだけで味に変化はあるのか実験!砂糖の量を同じにした甘さがまったく同じ二つのお汁粉。Bの方だけに、片栗粉を足してとろみをつけ、街で10人に飲み比べてもらったところ、なんと8人が、砂糖の量は一緒なのに「Bの方がとろみがある」と答えたんです!ではなぜ、とろみをつけた方を甘く感じたのでしょうか? 専門家によると「とろみがある方が口の中に長く残って甘さをより長く感じたことで、おいしく感じる」という。つまり、とろみがあることで、舌の上により長く留まるため、甘さをより強く感じていたんです。
生スイーツは、生クリームを入れることで“とろみ”が生まれ、より甘さが際立つため、より「おいしい」と感じるのだ!
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