田舎暮らし
の科学
第1270回 2015年4月5日
自然をテーマに研究してきた科学者たちが…田舎暮らしを実践!
そうすれば、みんながやってみたくなる田舎暮らしができるのではないかという長期実験企画です!
今年1月から本格始動、真冬の時期を作物を植える準備に当ててきましたが、いよいよこの地にも春が到来!今回は、1月から密着し撮りだめてきた田舎暮らしの進展を一挙公開!
①畑に生まれ変わった土地 マル秘栽培計画!
茨城県常陸太田市の3年間放置された土地で始まった目がテン流科学者たちの田舎暮らし。この長期企画に賛同してくれたのは、農業の実地研究をおよそ30年!あらゆる作物を栽培してきた農業の専門家、東京農工大学の松村先生。そして、水力、風力、太陽光などを活用し、発展途上国ケニアにも明かりを届ける自然エネルギーの専門家、足利工業大学の根本先生。二人の専門家が、科学で理想の田舎暮らしを実現できるのかという、壮大な実験!これまでの放送で松村先生が土地の調査を始めると、意外な果物も育つ、なかなか魅力ある土地だとわかりました!
しかし、問題も発覚!水はけが悪い原因、それは表面の土のすぐ下に、緻密で硬い層があり地下に雨水が染み込みづらいため。畑の作物は、根で呼吸をしています。水はけが悪いと、窒息し腐ってしまうのです。
そこで松村先生は、地元の土木業者さんの手を借り土地の改良に着手!まず、重機で緻密で硬い層を砕いて掘り返します。こうして水はけや通気性の良くなった土を片方に移します。土を高く盛った方が畑。これで水はけがよくなるはず。一方、反対側は田んぼにしました。こうして土地改良の工事が完了。そして・・・1月下旬。
この日、松村先生は根本先生に今後の計画を語り出しました。松村さんは、畑を4m毎に溝を掘って、6個の帯に区切ろうと考えていました。こうすることで、4mの幅の細長い畑が6個でき、(1区画で作る)作物を1年ずつずらしていくと言うんです。すると、冷静に話を聞いていた根本先生から「連作障害を防ぐということですね」という鋭い質問が。連作障害とは、作物を毎年同じ場所で作り続けると、土の養分が偏ったり病害虫が発生したりし作物が十分に育たたなくなる現象。松村先生は、6区画の畑で異なる作物を栽培し、1年ごとにローテーションして連作障害を防ごうと考えたのです。
そんな松村先生が語る栽培計画がコチラ!
A:里芋・ネギ
B:落花生・大豆→小麦・エンバク
C:小麦・エンバク→ササゲ・秋ソバ・大根・人参
D:ジャガイモ→ヒマワリ→白菜・ブロッコリー・菜類
E:さつまいも→ヘアリーベッチ
F:ヘアリーベッチ→カボチャ
確かに根本先生の希望通り、大豆が入っています。さらに!以前、根本先生が持ち込んだロケットストーブで作った、常陸太田の特産品「常陸秋ソバ」も作る予定になっています!栽培計画も組みあがった畑。あとは春の訪れを待つばかりです!
6区画の畑で異なる作物を栽培し、1年ごとにローテーションすることで、連作障害を防ぐことができるのだ!
②最初に植える作物はジャガイモ!
3月上旬。松村先生は田舎暮らしの土地に最初に植える、記念すべき作物の下準備に取り掛かっていました。その作物とは…じゃがいもです!最近人気の品種、キタアカリと定番の男爵イモそれぞれ15キロを用意!これらは普段目にするジャガイモとは違い種イモと呼ばれます。
種イモは、ホームセンターなどで購入が可能。スーパーで見るジャガイモとは違い様々な技術が駆使され病原菌を持たないように特別に生産されているのです。今回の種イモは、一つおよそ60g。30g程度あれば、十分育つため半分にします。ジャガイモを半分に切るだけのとっても単純な作業。でも、一つ注意点が。地中では本体と、へその緒のようにつながっているじゃがいも。へその緒につながっている方は芽が少なく、逆側は芽がたくさんあるのだそうです。例えて言えば、「頭」と「お尻」があるのです。芽の数が偏らないように切るのが大事なのです。
何気なく見ていたジャガイモにも、奥が深い知識が!芽の数がだいたい同じになるように半分に切っては、切った面を上にしてカゴに並べていきます。スタッフもお手伝いしながら黙々と作業を進める事およそ30分。全てのジャガイモを切り終えました!実は、休眠という状態になったじゃがいもは、そのままでは芽が出ません。
このように日光に当てることで、休眠のスイッチが解除され、芽が出るようになるんだそうです。このまま、およそ2週間ほど放っておき、休眠が解除されたらいよいよ、畑に植えます!
日光に当てることで、休眠のスイッチが解除され、芽が出るようになるのだ!
③堆肥に秘められた驚きの効果!
3月下旬。この日、田舎暮らしの土地にやってきたのは1台のトラック。その中身は…牛の糞尿やオガクズが入った堆肥です。ところが、これ肥料に使うだけではないと言います。
以前、基礎的な水はけ対策の工事は行いましたが、それだけですぐに作物を植えられるほど、排水性は十分ではありません。実はこの土地、土の粒子の間に、隙間が少ない粘土質。そのため土を改良し、水はけを良くする必要があったのです。でも、堆肥を入れると本当に水はけが良くなるのでしょうか?
そこで、実際の土を使って松村先生が実験です。まずは畑の土を掘り・・・。そして、堆肥をすくってきて…右側半分だけに投入。スコップでよく混ぜていきます。画面左が堆肥入り。右が堆肥なしの土です。これに水を入れていきます。まずは堆肥入り。続いて堆肥なし。
その結果、こちら堆肥なしの土は水が全くしみ込まないのに対し…ご覧ください!堆肥入りの方は、みるみる水が減っていきます。これはどうしてなんでしょうか?
松村さんは、「隙間を大きくするというのが堆肥の大きな役割なんです」と話します。今回使う堆肥には、おがくずや籾殻が入っておりこれらは形が崩れにくいため隙間がたくさんあります。隙間があれば、当然水の通りはよくなります。だから堆肥を混ぜ、隙間を作ってやることで、畑の土も水はけがよくなるのです。では、堆肥はどのくらい混ぜればいいんでしょうか?松村さんによると、「あまり沢山やり過ぎると養分が多くなり過ぎて作物にとっていいコトはない。栄養がありすぎると、細胞の壁の方、細胞壁が弱くなり、そういう所から病原菌なんか入りやすくなる」と言います。堆肥をまく量は、一般的に畑1平方メートル当たり、2〜3kgが良いとされているため、およそ1000平方メートルあるこの畑に対し、注文した堆肥はおよそ3トン!翌日…当然、一人で3トンの堆肥を蒔くのは大変なので・・松村先生は助っ人を呼んでいました。彼らは東京農工大学で農業を学ぶ現役大学生!スコップで堆肥をカゴに入れ…一輪車で運びます。もちろん、番組スタッフもお手伝い!広大な畑に、堆肥を蒔いては運び、蒔いては運び・・・・作業開始からおよそ4時間!3トンの堆肥をまき終りました!すると、松村先生は休むことなく耕運機を持って登場!
これで、堆肥と土を混ぜ込んでいきます!まだ土の水はけが悪く、ぬかるみがあるため水田用の車輪を取り付けての作業です。黙々と耕し続ける事、およそ3時間!全ての畑を耕し終わるといよいよジャガイモを植えます!ここは、水がびちゃびちゃになっているため、あまり深く植えません。普通だと、10cmとか深く植えるんですが、今回、浅く植えてそれで最終的には上に土をかけます。まずは、芽が出やすいよう切り口を下にしておきます。それぞれは30cm程度離します。
続いて堆肥をイモとイモの間に置きます。今回の堆肥は分解しきっていないため、イモに直接被せると、腐ってしまう危険があるのです。
そして最後に、土をイモと堆肥に被せます!栽培計画の区画Dの畑でまっすぐにイモが並ぶよう、張り巡らせた4列の糸。ここに学生たちが主体となり、スタッフも総出でイモを植えていきます!日も落ちかけてきた午後5時。全てのイモを植え終わりました!記念すべき初の作物じゃがいも!収穫は6月中旬予定です!
堆肥を混ぜ隙間を作ってやることで、畑の土も水はけがよくなるのだ!
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