フィリピン・パラワン
の科学
第1336回 2016年7月31日
目がテン!恒例夏休み海外特集・後編。アメリカの旅行サイトで世界一美しい島に選ばれたフィリピンのパラワン北部に広がる島々。そんなパラワンの神秘の魅力を科学します!
①パラワン島はなぜ世界で最も美しい?
首都マニラから国内便で1時間半。パラワン北部のブスアンガという島に到着。ここには世界で最も美しいと言われる景色があるといいます。船で進むこと40分。100を超える島が密集するパラワン北部に到着。リゾートの特徴は、1アイランド1リゾート。
1つの島に1つのリゾートが建てられていることが多いんです。だから観光客も少なく、とってもゆったり過ごせます。そして、パラワンの最大の魅力といえば何と言っても景色。特にブスアンガ周辺のコロン島やミニロック島は絶景の宝庫。ハワイの島々など並みいる人気リゾートを抑えて2年連続世界一に選ばれているんです。一体パラワンの美しさは他と何が違うのか?現地のガイドに聞いてみると「海は世界でもトップレベルにキレイ」とのこと。
そこで、パラワンの海がどれだけキレイなのか「透明度」を計測してみると、水深約20m!。一般に透明度が15mを超えると船の影が海の底に写り、宙に浮いているように見えるほどの透明度なんだそうです。でも、実はハワイや沖縄の海もその透明度はほとんど同じ。
パラワンの景色の最大の特徴は「ラグーン」と呼ばれるサンゴ礁や石灰岩に囲まれた海が数多くあること。しかも、このパラワンのラグーンは世界でも珍しい黒い石灰岩で形成されているんです。
でもそれが美しさにどう関係しているのでしょうか?色彩の専門家・女子美術大学・坂田教授に話を聞いてみると「セパレーション効果」という色彩効果が強く働いているとのこと。
パラワンの景色は海底まで見渡せるほど透明度の高い海と、明いスカイブルーの空によって構成された美しい景色。この明るい色で構成された景色の中に黒い石灰岩がはいることで空と海がセパレーションされている(区切られている)ので強いコントラストが生じます。これによって、空や海がより明るく鮮やかに見えるんです。
パラワンの島々が世界で最も美しい島である理由は黒い石灰岩によって、空や海がより鮮やかに見えるためだったんです!
②出会うと幸せになれる動物
パラワンの海に生息するという幻の生き物を探しに海に出ます。
案内してくれるのは、長年この海でガイドをしているダークさん。なんでも出会うと幸せになれる生き物なんだとか。
船に揺られること30分。ちょっと寄り道して海に入り、水の中を覗いてみると、そこにいたのは数えきれないほどの魚の群れ!「サライサライ」というフィリピンに生息するアジの仲間が、降り注ぐ陽の光で銀色に輝いてとってもキレイ!これだけじゃありません! 海底近くに目をやると、美しいサンゴに集まる色とりどりの魚たち。さらに優雅に泳ぐアオウミガメまで見ることができるんです!これだけでも十分幸せになれましたが、目指すのはあくまで幻の生き物!1時間後、ポイントに到着。ダークさんによれば、その生き物に出会える確率は40%ほど。ガイドたちが総出で探しても、なかなか現れる気配はありません。生き物に警戒されないよう静かに海を見渡します。すると、海面のすぐ下で何やら生き物が動く影が!ついにその姿を発見!ドローンを飛ばして上空から確認してみると…その正体はジュゴン。海の哺乳類であるジュゴンは、呼吸をするために海面まで上がってくるんです。警戒心の強いジュゴンの方へ音を立てないようにそーっと泳いでいくと…およそ30mまで接近することができました。ここパラワンの海には、およそ30頭ほどのジュゴンが生息。これは世界的に見ても珍しいことなんだそうです。
でも、なぜジュゴンに出会うと幸せになれるといわれているのでしょうか?その秘密はジュゴンの顔にあったんです。よくみると口元が大きく笑っているようにみえます。「ジュゴンに出会うと、その笑顔の愛らしさから幸せな気持ちになれる」ということから、出会うと幸せになれるといわれているそうです。
実はジュゴンが笑っているような口元をしているのは、生きるのに必要な"ある理由"のためなんです。ジュゴンの主な食事は、ウミヒルモという海底に生える植物。このウミヒルモは、ワカメなどの藻類とは異なり、陸上の植物と同じように、根と茎、葉がしっかりとわかれています。パラワンの海には、このウミヒルモが多く生息するためジュゴンが集まってくるんです。
ジュゴンは海底に根付いたウミヒルモを食べやすいよう口が顔の下についているので笑っているように見えるのだ!
③世にも奇妙なバラクーダ湖の秘密
パラワンの北部に位置するコロン島には、世にも不思議な湖があるといいます。その名も「バラクーダ湖」。
バラクーダ湖には、その不思議な魅力を体験するために、たくさんのダイバーたちが集まっていました。不思議な魅力とは何なのか?ダイバーたちに聞いてみると、「熱さと冷たさを同時に感じられる」とのこと…一体どういうことなんでしょうか?そこで、水面の水をすくって触ってみると、いたって普通の温度。そこで、ダイバーにお願いして湖の深い場所の水を取ってきてもらうと…なんとお風呂と変わらないくらいのお湯! バラクーダ湖の不思議な魅力とは水面は冷たいのに、深い部分はお風呂のように熱いということだったんです。
そこで、どのように温度が変わっていくのか?実際に計測してみることに!水の深さと温度を同時に計測できる水質計をバラクーダ湖に沈めて温度の変化を計測します。
実は、バラクーダ湖の温度を正確に計測するのは、世界で初めての試み!計測を開始すると…水深1mの時点では温度は31度。南国のフィリピンでは普通の水温です。計測器をどんどん沈めていくと、水深10mを超えたあたりから水温に急激な変化が!
12m付近では37度に上がりました。その後も、深くなるとともに水温がどんどん上昇していき、水深19mを超えたあたりで40度近くまで上昇。その後、湖の底まで計測した結果、バラクーダ湖は水深10mまでが31度、しかし、そこから下は35度〜40度と熱くなり、湖の中で大きく2層の温度帯に分かれていることがわかりました。
計測中の水中カメラの映像でもダイバーが計測器を底に向かって沈めていく途中…突然、姿がぼやけました。これは、温度差の激しい水が混ざったときに見られる現象。この水の層を「サーモクライン」と呼ばれています。サーモクラインを境にして湖の温度が2層に分かれているんです。
そしてバラクーダ湖最大の謎は、「高い温度の水が、ずっと下にとどまったまま」ということ。本来なら高い温度の水は上に、低い温度の水は下に行くはずなのに、バラクーダ湖はその逆なんです。 一体どうして、こんなことが起きているのでしょうか?実は、この謎はこれまで科学的に解明されていなかったのですが、今回は目がテン!が世界で初めて計測したデータを弘前大学の村岡洋文教授に分析してもらいました!
教授の仮説によると…今回の調査でバラクーダ湖の水の塩分濃度も一緒に計測していたのですが、ちょうど温度が高くなり始める深さから、塩分濃度も高くなっていたのです。つまり、上は普通の湖と同じように淡水。下は海水になっているんです!この下が海水であるというのがこの湖のポイント。
上の淡水は雨が降って湖の上にたまったもの。では下の海水はというと…コロン島は石灰岩でできた島なので湖の下には、鍾乳洞のような空間があり、その中は地熱によって温められた海水で満たされていると推測できるそうです。それが、何かのきっかけで上に湧き出しているのではないか、ということなんです。海水は淡水よりも重いので下に沈み、本来は、上に行くはずの熱い水が淡水よりも重い海水なのでずっと下にとどまっているということなんです。
奇妙なバラクーダ湖の謎を番組が明らかにしたのだ!
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