知識の宝庫!目がテン!ライブラリー


宇宙風船 の科学 [前編]
第1349回 2016年11月06日


 今回の目がテン!は、2016年秋に放送28年目に突入した記念企画「おそらく世界初・成層圏でクッキング!?宇宙風船大実験・前編」。

①成層圏の微生物採取を取材!

 成層圏とは、地上11kmから50kmの間にある宇宙の入り口。実は長年の研究により、その成層圏には微生物が存在していることがわかっているんです。それは地球上のものなのか、宇宙から来たものなのか、まだわかっていません。その謎に迫っているのが千葉工業大学の「惑星探査研究センター」。こちらで行われている最先端の研究が「パンスペルミア説の実証」。これは宇宙に生命の起源があるという説。NASAも注目し、現在研究が進められているといいます。2016年6月に成層圏で微生物を採取する実験を行いニュースにもなりました。その時にいくつか成層圏で取れた可能性の高い微生物も見つかりました。
 そして現在、千葉工業大学では再び成層圏に装置を打ち上げるプロジェクトを進めていました。チームの代表、秋山先生と研究員の前田さんと奥平さんに話を聞くと、その実験方法はヘリウムガスを入れた気球を使います。パラシュートと実験装置をつなげて飛ばし、1時間半ほど掛けて地上30km付近に到達。気圧が下がって膨らんだ気球は最終的に破裂。落下するとパラシュートが開き、ゆっくりと装置が地上に戻ってくるという仕組みです。

所さんのポイント
ポイント1
"パンスペルミア説の実証"という生命誕生の謎を解くため、研究者は日々さまざまな角度からアプローチを続けていたのだ!


②目がテン成層圏実験に向けて始動

 成層圏に気球を飛ばそうとしている秋山先生チームに、同じ気球をもう一つ作って、目がテンも成層圏で実験をやらせてもらえないか?と図々しくお願いしたところ、割合簡単に快諾を頂きました!
 まずは、成層圏ではどんなことが起こるのか伺うと、気温がマイナス50度、気圧が200分の1。気圧が低いところでは、水分が蒸発し乾燥しやすいとのこと。ならば・・・生の魚が干物になるのでは!?先生たちに伺っても、やってみないと分からないそう。そこで、成層圏に食べ物を打上げたらどうなるか、他の専門家に予測してもらいました。
 東海大学の岡田先生によると「低温だと氷ができて、気圧が低いと氷が気体になりやすい。固体が気体になる現象を"昇華"と言い、食品は乾燥しフリーズドライのようになる。豆腐が高野豆腐になるのでは?」とのこと。通常、1週間ほど凍結乾燥させて作る高野豆腐。-50℃の成層圏ならあっという間に高野豆腐になるかも!
 続いて、調理科学に詳しい東洋大学の露久保美香先生聞くと「根菜類は、一度冷凍させると繊維が壊れて柔らかくなり、食感が変わる。乾燥するという環境ならば生の大根がたくあんになるかも」とのこと。
 他にも先生たちの意見をヒントに、成層圏でおいしくなって帰ってきそうな食材を選抜。ちなみに、今回気球を打ち上げる場所は「モンゴル」。モンゴルの大平原でいろいろな食材を成層圏へ打上げます!
■生魚の開き → 干物になる?
■豆腐 → 高野豆腐になる?
■大根 → 半月切り…たくあんになる?千切り…切り干し大根になる?
■殻ごとの生卵 → 冷凍卵になる?
■ビール → フローズンビールになる?

名づけて「成層圏DE和定食!」

所さんのポイント
ポイント2
成層圏に食材上げるためにモンゴルまで行くのだ!


③千葉工業大学気球の宇宙風船大実験に密着

 成田空港から直行便で、およそ5時間半でモンゴルの首都ウランバートルに到着。全人口およそ300万人のうち3分の1以上が、ウランバートルで暮らしています。街の中心、国会議事堂には、初代皇帝チンギス・ハーン像が鎮座!
 実験当日の朝6時半、千葉工業大学チームが準備を始め、あいにくの雨の中、車をスタート。都会を離れ到着したのはウランバートルから1時間半ほど東のテレルジ。今回共同で実験を行うモンゴル工業技術大学の皆さんも合流。今後実験回数を重ねるため、学生たちに打上げ方法を覚えてもらいながら準備を進めます。打ち上げるのは成層圏を漂う粒子などを収集する装置。
 バキューム式で外の空気を吸い込むと、中のフィルターが入ってきたものをとらえる仕組み。成層圏でのみ自動的に作動し、地上の粒子の混入を防ぎます。
 気球の位置を発信する通信機器もロープで縦につなぎ、気球にヘリウムガスを注入。10分ほど掛けて、直径3メートルくらいの大きさまで膨らませ、打上げ!無事に飛んでいきました。
 ここからすぐさま回収準備に。今回のプロジェクトの代表、秋山先生と、共同研究チーム、モンゴル工業技術大学のTuguさんを中心に気球を追跡開始。実は打ち上げよりも回収が大変なんです。打上げの前日、天候や風速の情報を元に、着地予測地点を割り出していたんです。緻密な計算で割り出した着地点は放球場所から直線距離でおよそ70km。ほとんどが舗装どころか、地図にも乗っていない道なき道を進みます。途中、気球からの信号が途絶えがちに…。その頃、気球は地上からおよそ10kmのあたりを浮遊。そこは対流圏の上空、成層圏の境に吹く強い風、「ジェット気流」のあるエリア。事前に予測しても、気球の上がるスピードが遅いと、あっという間に遠くに流されるなど、状況が大きく変わるのです。追跡すること3時間以上、既に気球はどこかに着地している模様。車数台で大草原をローラー作戦。放球からおよそ4時間後、予測地点から、およそ34km離れた場所で発見!しかし、着地の衝撃で大事な実験装置を紛失!

幸い近くに転がっていた装置を発見し、実験は無事成功しました!
次はいよいよ、目がテン和定食が成層圏に浮かぶ番。後編へ続く!!

所さんのポイント
ポイント3
宇宙研究は回数を重ねることが大事。低予算で成功した今回の実験は、大きな第一歩なのだ!




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