放送内容

第1362回
2017.02.12
かがくの里[インドネシア] 場所・建物 水中の動物

 自然がテーマの科学者たちが未来に繋がる楽しい田舎暮らしを目指す長期実験企画「目がテンかがくの里」INインドネシア!

かがくの里2017年始動

 1月中旬、地元の人たちが集まって里は朝から大賑わい。テーブルに並ぶのは、地元の食材を使ったお漬物に具だくさんのけんちん汁。そしてこの日の主役がかがくの里で育てたもち米。去年10月に収穫したものをこの日のためにとっておきました。これを使って地元の人たちと餅つき大会!

 お餅の味付けは、定番のきな粉やあんこ。そして調理科学の専門家、露久保先生のおすすめが「くるみダレ」。東北地方の岩手県でもよく食べられる方法で、くるみをすりつぶして、砂糖と塩と醤油で味付け。とろみを出すためにお水を加えて、丁度いい硬さにして食べます。さらに、まず茨城名物、納豆と切り干し大根を混ぜた地元の味も!地元の子どもたちと美味しくいただきました。

 それから1週間。お餅の残りはこのままだとすぐに、カビが生えてしまいますが、実は1年程度、保存できる科学的な調理法があるんです。まず四角い形にして保存しておいたお餅を、薄く切っていきます。これを冬の乾燥した時期に、干しカゴに並べ風通しの良い場所で、3、4日干すだけ。完全に水分を飛ばすことで、カビが生えないんです!これを食べる直前に、揚げたり焼いたりして「おかき」にして頂きます。
 もう一つ、去年の収穫祭で所さんも採ったサツマイモ、シルクスイートという甘味たっぷりの品種。コレにも、科学に裏打ちされた伝統の保存法が。干し芋です。サツマイモを2時間しっかり蒸かし皮を剥きます。ピアノ線のついた卵カッターで薄切りにして、干しカゴで1週間程度。水分が飛んで糖分が濃縮し甘くなるんです。

ポイント1

この方法で冷蔵庫で保管すれば餅も芋も1年間位は保存できるそうなのだ!

養殖新プロジェクト

 かがくの里のため池で今年取り組むのはエビの養殖!
 養殖の専門家千葉先生は、インドネシアと共同研究でエビの新しい養殖法を確立しようとしているとのこと。そこで、日本からおよそ4800km!世界第三位の生産量を誇るエビ養殖大国インドネシアへ!千葉先生と阿部さんが降り立ったのは、首都ジャカルタに次ぐインドネシア第2の都市スラバヤ。この国最大の港町でエビについて調査開始!まずは現地の人が行きかう市場へ。インドネシアの漁獲量は日本のおよそ4倍、1年で2000万トン。市場を進むとエビを発見。大きなエビは、日本など海外に輸出。インドネシアの食卓には主に小さなエビが並ぶそうです。もちろんインドネシアの人たちもエビが大好き!

市場近くのレストランで現地の食べ方を調査すると、茹でたり、揚げたり、炒めたり、色んな食べ方をしていますが、エビを知り尽くすインドネシアならではのものがサンバルトラシという調味料。トラシとは小エビを発酵させペーストにしたもの。ここに大量の唐辛子などを混ぜてできる超激辛ソース!適量なら、エビのコクを楽しめる伝統的な美味しい調味料です!
 かがくの里でもできるエビ養殖を求めて二人が訪れたのは、魚やエビ養殖のプロを育てる水産専門学校。現在、インドネシアで行われている養殖について話を伺うと、インドネシアで行われているエビ養殖は、古くからの伝統的な養殖と1980年代に始まった集約的な養殖の2種類があるとのこと。
 近年広まった集約養殖と伝統的な養殖。集約養殖の池は伝統的なものと比べ10倍のエビが収穫できるのですが、この養殖法は病気が出てきてしまう問題点も。いけすで育てられているエビは13万5000匹!それだけの数のエビを大きくするために大量のエサがまかれます。しかし、エサの食べ残しが池の底に溜まり水質が悪くなるとエビが病気にかかりやすくなるそうなんです。ひとたび病気が出るとすべてのエビを処分しなくてはなりません。

 元々の伝統的な養殖はどんなもの?車とバイクを乗り継ぎ、到着した伝統的な養殖を行う池は、川の水と海の水が混ざり合う汽水域と呼ばれるところ。汽水域の水は陸地の栄養をたっぷり含んでいるため魚のえさとなるプランクトンが多いんです。伝統的なエビ養殖は、もともと、プランクトンを食べに集まる魚を獲ろうと水を引き込み、池を作ったところ、そこにエビの赤ちゃんも入り込み勝手に育ったのが始まりなんです。
 そのため、今でこそ、エビの赤ちゃんは計画的に池に放流して育てていますがエサは自然に発生するプランクトンだけ。つまり伝統的な養殖は、自然を上手に利用した養殖法だったんです。この池で養殖しているのは、日本でもおなじみのブラックタイガー。

ポイント2

伝統的な養殖法は、自然に近い状態で育つため収穫量は低いものの、エビが病気になるリスクも低いことがわかったのだ!

伝統の養殖法をベースにエビの収穫量を上げる最先端の養殖!

 最先端の養殖を見るため、スラバヤから飛行機に乗って2時間。インドネシア・スマトラ島の東、パレンバンへ。養殖の池の中に木が植えられている不思議な場所が。現地でエビの養殖事業をされている阿久根さんに話を伺うと、エビの養殖というよりも実はマングローブの植林を行っているとのこと。

池の中に点々と植えられているマングローブ。これが4年でこんなに立派に成長。そもそもマングローブとは、海水と淡水が入り混じった汽水域に生える植物の総称です。実は阿久根さんたち、かつて集約養殖がおこなわれ水質が悪くなり放棄された土地にマングローブを植えていたんです。マングローブは海水から集約養殖によって増えすぎた栄養を吸い上げ成長。土地を健康な状態に戻してくれるという浄化作用があるんです!さらに、この養殖では、植林したマングローブを囲い込むような形で水路が作られています。マングローブの落ち葉が水路に入り、それを分解する微生物が集まって、プランクトンが増えます。つまり人がエサを与えなくても、自然の循環の中でエビが育つシステム。人の手で自然循環を生み出すこの方法で伝統養殖の2倍の収穫が期待できるそうです!ここで育ったエビは、エサをあげていないのに立派で元気!まさにマングローブの恵みです。
 エビが元気に育つインドネシアの最先端養殖。

ポイント3

千葉先生は、かがくの里で、マングローブの役割を水田に置き換える計画なのだ!

 かがくの里企画スタートから、農業の専門家としてかがくの里を支えて下さった松村先生が昨年をもってかがくの里をご勇退されました。体調を崩され、治療に専念されるそうです。
 かがくの里を荒地から開墾した最大の功労者、松村先生、本当にありがとうございました。