放送内容

第1382回
2017.07.02
ミステリージャーニー・福井 の科学 場所・建物 人間科学

 全国の話題の土地を科学の視点で解き明かしてきたシリーズ企画。
 その名もミステリージャーニー!第6弾の舞台は…初の北陸!「福井県」。
 実は福井は、研究機関が発表した「都道府県幸福度ランキング」で、2回連続、総合1位に輝いたんです!そこで、福井県民の“幸せの謎”を解き明かすべく…科学者たちが福井に降り立ちました!

お惣菜と食卓に“幸せの秘訣”があった!?

 福井の人たちはいま、“幸せ”と感じているのか?街で50人に聞いてみると…なんと42人もの人が幸せと答えました。では、福井ならではの幸せの秘密が何かあるのでしょうか?
 そこで現れたのは、心の動きを科学的に研究する、社会心理学のスペシャリスト、神奈川大学人間科学部・杉山崇教授。杉山先生によると、福井県民の幸せの秘密が、スーパーマーケットにあるというので向かいます。
 着いたのは、一見、ごく普通のスーパーマーケットですが…目についたのはお総菜コーナー。その数なんと600品!揚げ物だけでも…100種類!サラダも70種類以上もあるんです。このお惣菜のほとんどはお店で手作り。中でも人気なのが…揚げたてのコロッケ。お昼に並べられたコロッケが…夕方には完売してしまうんです!杉山先生によると、この“惣菜”こそが、福井の人たちが幸せを感じるミステリーの鍵だと言うんです。
 実は福井は、歴史的に農業で生計をたてる家が多い土地。しかし冬は雪深く、農作業をすることができませんでした。そこで、明治30年代後半から農業の副業として手作業で出来る産業が増え、共働きをしながら冬を乗り越えてきました。そんな歴史から、今でも共働きが多く、働く女性の割合が全国1位。

 さらに杉山先生は、お惣菜を食卓に出す所に幸せの秘密があると言うんです。そこで、福井県のとあるご家庭にお邪魔して、お惣菜の出し方を探ってみます!ご協力頂いたのは、共働きで子ども4人を育てている吉川さん一家。自然な夕食風景を見るため、無人カメラを設置し、僕と先生は別室でモニタリング。さっそく夕食の準備が始まりました。
 スーパーで買ってきたサラダや…ソースカツなどお惣菜をパックから取り出し、大皿に盛りつけていきます。さすが福井のご家庭。本日のメニューは肉じゃが以外は全てスーパーのお惣菜。さっそく夕食スタート。
 すると…杉山先生が「大皿が真ん中に置かれていてみんな取り分けて食べてます。これを共食効果と言うんです」と解説。共食効果とは、1人で食べるより、大勢で食卓を囲んだ方が家族の信頼関係が強まり、安心感が出るという心理的効果。さらに杉山先生曰く、ピザやお鍋のように1つのものを取り分けて食べるとより親密度が上がり、会話も増えると言うんです。
 確かに、大皿からお惣菜を取り分けることで、自然と会話が増え、楽しい雰囲気が生まれます。そして、楽しい夕食を終えたところで、杉山先生が福井の人たちの“幸せの最大のポイント”を指摘!

 それは夕食後、ご主人が後片付けを率先して行う姿。杉山先生によると、「福井の歴史を読み解くと、女性が家事をするものだという思い込みというか習慣のようなものがとても希薄になっている」と解説。奥さんに言われなくても、率先して片付けを手伝うご主人。家事の役割を決めているような様子はなさそうですが…杉山先生は「社会心理学的に言うと、ご主人がお皿洗いと言う風に担当を決めたとします。洗い忘れていた物があったりすると、奥さんとしては、ご主人の担当のものがちゃんとできていないということで不満を溜め込んでしまいやすい。そういう意味では役割分担の弊害それが排除されている」と解説。役割分担をはっきりさせてしまうと、完璧にできない時、ストレスになってしまうことも。
 福井の他のご家庭ものぞいてみると、ある共働きご夫婦は…仕事終わり、夕飯の準備をご主人も一緒にお手伝い。買って来たお惣菜の手羽先を並べたり食器を運んだりと、自然と手伝うのが普通だと言います。さらに、別の共働きご夫婦は…仕事から帰宅後、ご主人が洗濯。そしてお風呂掃除まで行っていました。

ポイント1

福井の人は、役割を決めず、できる事を率先して行うことで、幸せを感じていたのだ!

福井ローカル線の“女性アテンダント”に幸せの秘密が!

 やってきたのは「松岡駅」。こちらは、福井のローカル線えちぜん鉄道。
 人気観光スポット「東尋坊」をはじめ、「恐竜博物館」への交通手段としても利用されるなど単線列車にも関わらず、年間の乗客数が延べ350万人を突破する人気のローカル線なんです。電車を待っていると…現れたのは、観光による癒しを科学で解き明かす観光心理学のスペシャリスト!文教大学国際学部・山口一美教授。山口先生によると、このローカル線「えちぜん鉄道」に福井県の人々の幸せの理由があると言うんです。

 早速、山口先生とえちぜん鉄道に乗りこんでみると…何やらみなさん、和気あいあいと、車内の時間を満喫しているようです。すると…山口先生が注目したのが、車両の先頭にいる、制服姿の女性アテンダント。実はえちぜん鉄道では2003年に、サービスを充実させるため女性アテンダントが誕生。半分以上が無人駅のため、乗客に車内で切符を販売したり、高齢者の乗り降りをサポートしたりしているんです。でも、なぜ女性アテンダントがいることで、和気あいあいとした雰囲気になるのでしょうか?
 すると山口先生が!「このアテンダントさんが“笑顔で乗客に話しかける”という所がポイント」と解説!確かに…何やら乗客と楽しそうに話をしています。山口先生によると、「笑顔で話しかける事によって、アテンダントさんが乗客の方と話をしますよね。そうするとそれだけで、この車内の中では話をしてもいいんだという雰囲気になり、安心感がわく。そうすると、和気あいあいとした雰囲気づくりになる」と解説。さらに!女性アテンダントさんは観光案内も大事な仕事なんです。山口先生は、「そこに居合わせている福井の人達は、アテンダントさんと観光客とのやりとりを自然に耳にする。人間には誰しも人に認めてもらいたいという承認と自尊心の欲求というのがあり、自分の住んでるところはそんなにいい所だったんだ!と再認識する。そして、そこにいるだけで幸せな気分になる」と解説。地元の方は観光案内を耳にして、地元を褒められている気持ちになり、幸せを感じていると言うんです。

 では…自分の出身地のことを人に褒めてもらうと、どれくらい幸せな気分になれるのか?そこで、舞台を浅草に移し、実験です!実験に協力して頂いたのは、出身地が全員、宮城県の男女10人。それぞれAとBの2組に分かれ、10分間、人力車で浅草観光をしてもらい、Aチームは普通に観光をしますが、Bチームは途中、出身地の宮城県を車夫に褒められるようにします。最後に、人力車の値段を付けてもらうと、地元を褒めてもらうことで幸せな気持ちになり、付ける値段に差があらわれるのでしょうか?まずは普通に浅草観光を楽しんでもらうAチームの実験からスタートです。そして…10分間人力車を楽しんでもらい、浅草観光が終了。果たして、付けたお値段は…?1000円。
 では続いて、出身地の宮城県を褒められながら観光をするBチームの実験をスタート。Aチームと同じコースで浅草を案内していきますが、その途中…自然と「仙台出身だ」という事を聞き出し、会話の中で、仙台を褒めていきます。そして宮城県を褒められながら、実験が終了。では果たして、地元を褒められると値段に変化は表れるのでしょうか?すると…2500円の値段がつきました!こうして、10人全員の実験が終了。その結果…Aチームの平均金額が2500円だったのに対し、Bチームは3900円と、地元を褒めながら観光した方が1.5倍以上もの値段を付ける結果に!

ポイント2

福井県民が幸せと感じる理由は、えちぜん鉄道に乗るだけで感じられる“地元愛”にあったのだ!

実はかるた王国!かるたで幸せになる理由とは!?

 「かるた王国・福井」。そのイメージを全国に定着させたのが…百人一首を用いた「競技かるた」が題材の大人気マンガ「ちはやふる」。
 作中、主人公のちはやが福井を訪れるシーンも。そんな福井では、毎朝かるたを行う小学校も多いんです。福井県の子どもたちは、みんな楽しみながらかるたを学んでいるようです。でも…福井の“かるた文化”と“幸せ”は一体どういう関係があるのでしょうか?

 そこで今回お邪魔したのは、福井県かるた協会本部「渚会」。そこには、大人の方に混ざってかるたに興じる子供の姿も。そこに現れたのは…脳科学のスペシャリスト、青山学院大学理工学部・平田普三教授。かるたのどこに“幸せの秘密”が隠されているのでしょうか?まずは、競技かるた日本一の名人・川崎さんと、準名人の三好さんの試合を見せて頂きながらその謎を先生と解き明かします。競技かるたとは、百人一首の下の句が書かれた札を並べ、読まれた上の句を聞き、それに当てはまる下の句の札を、相手より先に取る競技です。

 さっそく試合開始。すると…とんでもないスピードで川崎名人が1枚札を獲得。平田先生は、「非常に早く音を聞いてすばやく動くということが要求され、なおかつどこに何の札があるかっていうのを覚えないといけないから、集中力と記憶力それから運動神経が鍛えられる競技」と解説。こうして激しい戦いが続き…接戦の末、三好準名人が勝利!するとここで…平田先生が「負けた方も何枚かは札をとる、その勝負の繰り返しこそがかるたが幸せになる秘密」と解説。負けた方も幸せになるとは、いったいどういうことなのか?
 そこで、競技かるたをする人の頭に「光トポグラフィー」という装置をつけ、脳の血流量に変化があるのか?を測定。脳の血流量が増えると赤く変化します。まずは、相手に札をとられた時の脳の血流量の変化を見てみると…血流量が増え、少しだけ赤く変化が見られました。
 続いて、札をとった時の脳の変化を見てみると…脳の血流量が増え、ほぼ真っ赤に!相手に札を取られた時よりも、札を取ったときの方が脳の血流量が増えたんです。これは一体どういうことなのか?平田先生は「脳の血流から判断できる脳の活動としては、(札を)取られたときよりも(札を)取った時の方が、脳の活動が髙い傾向が見られた。札を取ることによって、勝った人の脳の中ではドーパミンという幸福感を感じる物質が放出される。1つの試合に負けた人でも何度か札をとるたびに脳の中でドーパミンという物質が放出されて、幸せ感、達成感を味わうことになる」と解説。かるたをやると、たとえ負けても、札を取った時に幸福感を感じるといいます。

ポイント3

福井では、大人から子どもまで“かるた”で幸福感を感じていたのだ!