第1387回 2017.08.06 |
グリーンランドの科学・グルメ編 | 夏休み特集 場所・建物 食べ物 |
日本から遥か遠い北極圏に位置する世界最大の島、グリーンランドの科学・グルメ編!
グリーンランドの海ってどんなところ?
港には、大小さまざまな船が泊まっています。現地を訪れた感覚だと自動車よりも船の数の方が多い印象でした。それもそのはず、グリーンランドの漁業はなんと貿易輸出額の75%を占めており、加工品を合わせると、なんと90%以上!
そこで、まずはグリーンランドの海ではどのような魚が獲れるのか?漁師のクラウスさんの船で漁へ出発!出港から15分程で仕掛けのポイントに到着。300の針がついた延縄の仕掛けを引き上げます。すると、タイセイヨウタラ、カラスガレイなどの魚がわんさか!クラウスさんによると、カラスガレイは「日本にいくよ!」とのこと。
水揚げされたカレイは工場で切り身に加工されて、ヨーロッパや日本へと出荷されていきます。特に日本人が好きなのが、ヒレと体の際の部分。皆さんご存知、エンガワです!さらに寿司ネタの定番、甘エビもグリーンランド産のモノが多く出回っています。たくさん取れるから安く、味も絶品なグリーンランドの海産物。他にも、ズワイガニや鯖や赤魚など、実はグリーンランドの海産物は日本で多く食べられているんです。
しかし、ここで疑問が…生き物が生きづらそうな氷の海。なぜそんな場所で魚がいっぱい獲れるんでしょうか?海の温度を測ってみると、真夏なのに海水の温度はマイナス1.4℃!この冷たさに秘密がありました。試しに、海水をこしとってみると無数の小さな生き物をすくうことができました。海の生態系を研究する北海道大学の山村先生によると「これはカイアシ類という植物プランクトンを食べる動物プランクトン」とのこと。世界中の海で、タラ、サケ、イワシ、サンマなどの餌になっている魚の主食みたいなものなのだそう。ではグリーンランドに多くいる理由とは?
山村先生「冬に非常に冷やされるので、氷層で冷却された水というのは、冷たいと比重が高くなるので沈み込むんですね。結果として、上から水が落ち込んでいって、低層とよく混ざる。それによって、海底付近の栄養源が巻き上げられやすい。結果的に栄養源が豊富な、大増殖を起こしやすい様な海水というのが作られるわけです。」一方温かい海はと言うと「よく、青い海と言われる。ブルーオーシャンですね。青い海だと思うんですけども。あれは、溶け込んでいる栄養源が少ないから、青く見えるっていうこともありまして、先ほどの話の逆でして、表層が温かいと、なかなか下と混ざることがないんですね。下方からの栄養源の供給というのがなかなかなくて、いつまでたっても植物プランクトンが増えることができない。どちらかというと、生産という意味では貧しい海ということになってしまいますね。」
グリーンランドの海はとても豊かな海だったのだ!
グリーンランドの食材で調理科学!
まず、グリーンランドの人々の普段の食生活を調べます。取材させて頂くのは、ロケ中ホームステイでお世話になったハンシーネさんのお宅。部屋の雰囲気は日本と大きく違うところはないように思えましたが、壁にはアザラシの毛皮と、昔狩りに使っていたモリが飾られていました!そして、この日の夕食が「ズキンアザラシ」の肉。興奮すると頭頂部を膨らませるズキンアザラシ。私たちにとっては「珍獣」に分類されそうですが、グリーンランドではお馴染みの食糧。
さて、伝統的なグリーンランドの料理はいたってシンプル。水の中に米と塩と胡椒を入れ、そこに少しのジャガイモと玉ねぎを入れ、最後にお肉と血と骨を入れて煮込むだけ。寒く野菜がとれないグリーンランドでは、昔から動物の血液からビタミンなど必要な栄養を接種してきました。これでグリーンランド料理「アザラシリゾット」スワサの完成です!味も絶品らしいです。
露久保先生「未知の食材に触れて、科学者魂に火が着いたようです。」ということで、調理科学を使って、アザラシの肉を食べやすく、よりおいしくするチャレンジです!新鮮なとれたて食材が手に入る町の市場でお目当てのズキンアザラシの肉を購入!
それでは調理開始。一品目は…まず、アザラシ肉の表面をサラダオイルで焼きます。すると肉から余計な脂が抜け、ゼラチン質のプルプルとした弾力に。それをネギやショウガ、醤油、酒、みりんなどを混ぜた調味液と合わせます。これでシンプルな塩味よりも旨味がパワーアップ。そして、グリーンランドの家庭ではあまり使われない圧力鍋で加熱。高温・高圧で加熱することで、肉が、より柔らかな食感になるんです。卵とあわせて味をしみこませたらアザラシの角煮の完成です!箸でも切れるほど柔らかく仕上がりました。
2品目は…アザラシのお肉をミンチにして、そのアザラシの挽肉にタマネギ、卵、香辛料などを加えてアザラシメンチカツを作ります。固く筋っぽい物もあるアザラシの肉。これをひき肉にすることで食べやすくしようという試み。におい消しと味付けの為に日本からもってきた味噌を加えます。こねたひき肉にチーズをインして…あとはパン粉をつけて揚げるだけアザラシのメンチカツの完成です!さあ、グリーンランドの人たちはどう感じるのか?今回のロケでお世話になった方々に食べてもらいます。
グリーンランドではあまりしない調理法でしたが、地元の皆さん気に入ったようでパクパク食べていたのだ!
グリーンランドで白夜干し!
白夜…それは1日中太陽が出続ける自然現象。太陽が真北にきても、地平線に沈みきらないまま、また上り始めますこれを見て、実験プレゼンターの酒井君はひらめきました!24時間、太陽光に魚を当て続ければすごい干物ができるはず!名付けて「白夜干し」!
ということで、まずは市場で食材探しオオカミウオを調達。オオカミウオは日本の水族館でも姿を見ることができます。狼の様に大きな顎と歯がその名前の由来。硬いカニや貝、ウニをバリバリと食べてしまいます。北の寒い海が主な生息地で、脂分の多い白身はホッケに近い味がします。これは干物に向いている可能性があります。そこで、オオカミウオの切り身を4%の塩水に1時間ほど浸して、準備完了!食材を秘密の装置に固定して白夜干し装置の完成です!
この装置、時計の長針が12時の位置にくる度に回転台が15度ずつ回り、干物を太陽の方向に向けてくれるというものです。この装置に対する露久保先生の見解は「24時間、湿度の低い環境下で、日光に当たることで、乾燥度が高く、保存性が高い干物ができると考えられます。また食感としては、引き締まったものになり、味としては水分が飛んでいる分、味の濃い干物ができるんではないかなと考えられます。」とのこと。
この日…気温8度、湿度は24%と日本の冬のように乾燥していました。干物作りに打ってつけです!装置をセットするのは屋根の上。ここなら何かの影に邪魔される心配もありません。定点カメラも設置して…いざ、実験スタートです。青く澄んだイルリサット空、なんとこの時、夜10時!太陽の動きに合わせ装置もちゃんと回転しています。時計の秒針とともに魚を張り付けた台も回転!ところが、0時を迎えると…止まりました。故障です。それでも切り身は太陽の光をいっぱい浴びています!こうして24時間後、きあがった干物を見てみると…見た目はいい感じに。炭火で炙って見た目は味も完璧!実は、装置が途中で止まったことで、結果的に身と皮、両面に太陽があたり乾燥度が高まったようです。怪我の功名です!
白夜干しは大成功だけど、回転させる必要は無かったのだ!