放送内容

第1400回
2017.11.12
柔軟 の科学 人間科学

 最近、街の書店でストレッチなどの、体を柔らかくする方法が書かれた本をよく目にします!皆さんやっぱり、カラダは軟らかければ軟らかい方が良いと思っていますよね。しかし…実は必要以上に軟らかくても意味がないんです!日常生活で簡単に実践できる科学的な筋トレとストレッチのエクササイズとは!?
 今回の目がテン!は柔軟の新常識です!

柔軟の新常識!“前後の柔軟性”が重要だった!?

 横一直線に足が開いて、ぺたっと、上半身が地面についちゃう軟らかい身体!憧れますよねえ。そこで、中学高校時代ミュージカル部に所属するも、体が硬いというのが悩みだったという佐藤真知子アナウンサーが柔軟の科学について調査!伺ったのは、国際武道大学。ヒトの体の構造や動きを研究するバイオメカニクスの専門家、荒川裕志准教授が今回柔軟に関して教えてくれます。なんと東大で学びつつ、プロの格闘家だった「闘う科学者」なんだとか!
 荒川先生によると、そもそも体が硬いというのは…関節の動く幅が狭いということ。筋肉が骨と骨の間に筋肉が付着していてその筋肉が伸びなくなると関節の動きが制限される状態。ヒトは筋肉を収縮させることで関節を動かしています。しかしその時、縮む筋肉に合わせて反対側の筋肉がちゃんと伸びないと関節が曲がりにくくなってしまいます。つまり関節を動かす筋肉の伸び縮みが悪いのが、体が硬いということ。

 実は、ストレッチは、関節自体を軟らかくするのではなく、筋肉を伸びやすくするためのものだったんです。今、ハウツー本が出るなど、注目の180度開脚。そのメリットについて荒川先生は、「ストレッチをして体を軟らかくしていこうという試み自体は良いと思う」と解説。確かに、スポーツをやっている人にとっては、180度開脚できる柔軟性がプラスになることもあるそうです。
 しかし、一般人は開脚できてもメリットが少ないというんです!?普通の生活で大事なのは、横の柔軟性ではなく、前後の柔軟性!そこでポイントになるのが、足を前後に動かすための股関節の筋肉!そこで、普段からトレーニングをしている20代の女性と、運動していない50代の女性の股関節の柔らかさを比較してみました。まずはできるだけ足を前後に広げてもらい…撮影した画像を専用のソフトで解析します。股関節の柔らかさは体の中心軸に対して、後ろ足がどれだけ開いているかで見ていきます。20代の女性は38度でした。一方、運動していない50代の女性は…13.5度と、9.5度。20代と比べてみると50代の方が、体が前に傾いていて、中心軸より後ろに足が行っていません。

 これは股関節が硬くなっているから。普段あまり意識しない、股関節の固さ。日常の動きにどんな影響を与えているのでしょうか?体の主要な箇所にマーカーをつけモーションキャプチャーで分析してみました。荒川先生は、「歩く」というごく基本的な動作にも大きな影響があるといいます。20代と50代の女性を比較してみた結果…20代の場合、歩く時、上体がまっすぐになっており、股関節も軟らかいので足を後ろにしっかり蹴って大きく振るように歩いています。蹴りきった後ろ足と、体の中心軸が作る角度は21度でした。一方、50代の方は、歩くとき前かがみになっていて、さらに、後ろ足と体の中心軸の角度が11度と小さく、足をしっかり蹴れていないことが分かりました。

 この違いについて荒川先生は「若い人の足を振るような歩き方は、エネルギーを使わないため疲れにくい。一方、年齢を重ねた方の、前の方で振るような歩き方はエネルギーを使ってしまうので疲れやすい。長い距離を歩くときつくなってくる」と解説。では…衰えてしまった股関節の柔軟性と筋力を取り戻すためには、一体どうすれば良いのでしょうか?

健康寿命UP!ながらトレーニングに挑戦!

 股関節の筋肉が衰えていた先ほどの50代の女性たち。いったいどうすれば改善するのでしょうか?そこでまず、先生が教えてくれたのが、背もたれのあるイス1つでできる効果的なストレッチ!まずは、足を後ろに振っている側の股関節の前側を伸ばすようにします。この時に伸びているのが腸腰筋。

 この筋肉が伸びないと後ろ足が伸びず、ちょこちょことした歩き方になってしまうそうです。1回30秒程度、左右それぞれ行うといいそうです。続いては、スネを椅子に乗せて、後ろ足を引き、前足に体重をかけます。この時、胸はしっかり張ります。伸びているのは、お尻の筋肉、大殿筋。

 この筋肉が伸びると足が前に出やすくなるそうです。こちらも左右両方、それぞれ30秒程度行ってください。さらに荒川先生は、ストレッチ効果のあるオススメの筋トレ「ランジ」も紹介してくれました!
 ランジとは、大きく前に一歩、踏み出して、その姿勢のまま、腰をまっすぐ下におろすという、筋力トレーニング。腰を落とした時に、前足の膝がつま先より前に出ないようにするのがポイントです。

 体勢がきつく、ふらふらしてしまう人は、ムリせず、腰の下げ方を浅くして下さい。目安は左右10回、合計20回。このランジは、腸腰筋や大殿筋、太ももの筋肉に至るまでまんべんなく鍛えることができます。荒川先生は「ストレッチや筋トレは習慣にするのが大事。例えばランジであれば、朝、洗面台への往復を歩きながらのランジで移動したりするのも良い」と言います。
 他にも、コーヒーを飲みながら、テレビを見ながらなど「ながらストレッチ」もおすすめだそうです。そこで、歩きが衰えていた50代の女性2人に2週間、暮らしの中でできる筋トレとストレッチをやってもらいました。そして、2週間後。股関節の柔軟性に変化は出たのか?二人とも、改善した実感はあるようなのです。では実際に、データで比較するとどうなのか?実際に歩く動作を測定したところ・・・2週間前よりも、後ろ足が後方に振られる角度がアップしていました。

 疲れにくく、つつまずきにくい歩き方に改善されていたんです。暮らしの中でできる“ながらストレッチ”と“ながら筋トレ”が、効果があったようです!

所さんの新曲に合わせて“目がテン体操”!

 やってきたのは東京大学!その目的は…楽しく柔軟性と筋力を鍛える“目がテン体操”を作るため!目指す、目がテン体操は…音楽に乗ることでつらさを感じず、動きも楽しく、柔軟性と筋力を同時に鍛えられ、毎日できるもの!
 その先生とは…総合文化研究科・三浦哲都助教。三浦先生は学生時代からダンスに没頭、リズムが人間に及ぼす影響を研究しているダンサー科学者です!なんと荒川先生の後輩だそうで。体操は、このリズムの専門家三浦先生に作ってもらいます。合わせる曲は…所さんが書き下ろした新曲、「目がテン」の新エンディングテーマ、「未来」です。
 事前に三浦先生に聞いていただき、リズム体操に使えるか検討してもらいました。三浦先生によると、「この曲は1分間に120拍位で作られており、行進曲調なので誰でもリズムに乗りやすく自然に動ける曲。ポイントは背骨と股関節を動かそうという体操。股関節の骨盤と背骨は連動しているのでそこが連動して動くのがナチュラルな動き。そこを意識して制作した」と解説。目がテン体操のポイントは5つの動き。この5つの動きを覚えれば、誰でもできるものだといいます!その体操とは!?

★目がテン体操 動き①「胸と肩甲骨を交互に寄せる」
 両手と胸を大きく開閉しながら、背中を曲げ伸ばしします。
 肩甲骨が動くのを意識してください。

★目がテン体操 動き②「肩を大きく回して肩甲骨を開く」
 両肩を大きく回してから両肘を寄せて肩甲骨を開きます。

★目がテン体操 動き③「体側を伸ばす・股関節を回す」
 体側を伸ばしてから股関節を回します。

★目がテン体操 動き④「足上げ・股関節の曲げ伸ばし」
 リズムよく膝を上げ下げし、股関節をトレーニング。

★目がテン体操 動き⑤「股関節回りに効くランジ」
 ランジは体力に合わせて無理のない高さで行ってください。