放送内容

第1409回
2018.01.21
駿河湾 の科学 場所・建物 食べ物 水中の動物

 放送開始30年目を前に、目がテンは、様々な大自然の撮影にチャレンジ!今回、その舞台となったのは…日本一深い湾、「駿河湾」!」深海が広がり、日本にいる魚類のおよそ3割の種が生息している豊かな駿河湾。そんな深海に目がテンのカメラが!
 今回の目がテン!は、謎多き深海が広がる日本一深い湾、「駿河湾の科学」です!

深海で検証!“驚きの水圧”とは?

 深海と言えば、「光が届かない」暗い世界。その謎を探るため佐藤真知子アナがやって来たのは、沼津港深海水族館。案内してくれたのは、館長の石垣幸二さん。石垣館長は、捕獲した深海魚を水族館に届ける「サプライヤー」でもあり、世界の水族館から注文がくる深海のスペシャリスト。
 捕獲だけでなく繁殖も手がけています。ここには、駿河湾や世界の海に住む数多くの深海生物が!生きた深海生物が見られる、とても珍しい水族館なんです。中でも一番の人気者は…ぷにょぷにょとした「メンダコ」。海底に同化して天敵に見つからないよう、体全体がスライムのように柔らかいんです。泳ぐ姿がかわいいですが、普段はほとんど動かないそう。しかも!タコと違い、墨袋を持っていないという特徴も。さらに、赤い色にも、深海生物ならではのヒミツが!
 例えば、食卓でもお馴染み、真っ赤な金目鯛も実は深海魚。カニやエビなど、確かに、赤い色が多い深海生物。なぜなんでしょう?深海で赤い魚がどうなるのか、見ていきましょう。浅くて明るい海では真っ赤に見えるエビスダイ。海が深くなり、光の量が減ると…だんだん赤が見えにくくなっていきます。水深30mを超えると…赤い色は見えなくなってしまいました。

 赤い光は、海の中に入ると減衰し、深くなるほど見えなくなっていきます。つまり深海では、意外にも目立たない色だったんです。他にも、暗闇では必要のない「視力」を持たない生物や、僅かな光を最大限にとらえるために、大きな目を持つ魚など、暗い深海の過酷な環境に適応したバラエティ豊かな生き物が、深海には暮らしているんです。
 続いて深海のもう一つの特徴、「水圧」を調べるため、駿河湾へ!東海大学の坂本泉准教授に協力いただき、駿河湾で深海の地形を調査している東海大学の研究チームの船に乗せてもらうことに。向かったのは、水深約2000mの深海!ここで研究チームが行っているのは…容器を海底に落とし、底で引きずって海底の砂や岩を採取する作業。その意味は、その石がどんなものかわかれば、できた時代や、海底の山がどうやってできたのか知ることができるというんです。
 では、研究チームの協力で水圧についてこんな実験!深海に、金属バットを沈めてみよう!深海に沈めるフレームに、金属バットとカメラを装着。硬い金属バットは、高い水圧の深海でどうなるのか?どんどん装置を沈めていく中、徐々に光が届かなくなり、約3分後。水深200mの深海に突入。そして、8分後。水深500mにさしかかった直後…なんと金属バットが音を立てて一気に潰れました!その後、水深約2000mの海底まで沈めましたが、以後は見た目に変化はありませんでした。上がってきたバットは…ペシャンコ!金属が破れて、向こう側が見えます。恐るべし!深海の水圧!

ポイント1

深海は、真っ暗で強力な水圧がかかり、それに適応した生物だけが生息できる特殊な世界だったのだ!

深海に沈めた食材はおいしくなった!?

 深海に野菜や肉を沈めたら一体どうなるのでしょうか?そこで、深海の水圧を使って、おいしい深海定食作りに挑戦!再び東海大学阪本先生のチームの船に乗って実験です。目指すは、水深1000mのポイント。まずは、深海定食の食材を装置にセット。目がテンが深海に行った証を残すため、所さん人形も一緒に沈めます。1000メートルの海底目指し、沈めていきます!沈み始めて1分過ぎ。水深約40mの地点で異変が…!所さん人形が、みるみる縮んで小さくなっています!水圧に潰されてしまっているようです。そこはもう暗闇の世界。人形も、水圧でかなり小さくなっています。一方、肝心の食材は…生卵も含めて全て無事のようです!真っ暗な海を沈んでいく深海定食の食材の姿。約1年前に成層圏へ飛ばした「成層圏和定食」と同じく、おそらく世界初ではないかと思われる試みです。

 沈みはじめて15分後…水深890mに着底。海底についたとき、所さん人形は、元の大きさの5分の1以下になっていました。

 実はこの人形、発泡スチロールでできており、水圧で中の空気が潰れたためにちっちゃくなってしまったんです。海底カメラの映像を見ていると…駿河湾に数多く生息しているユメザメを発見!他にも、数種類のアナゴなど、たくさんの深海生物が、所さん人形の周りをうろうろ。ニオイを嗅ぎつけたのか、食材の周りにも、深海魚たちが!幸い、食べられることはありませんでした。
 海底について約40分後。実験装置を引き揚げます。水深が浅くなるに従い、今度は、所さん人形がもとの大きさに戻っていきます!そして…無事生還!一度ギュッと縮んだせいで、しわくちゃになっちゃいました。
 では、肝心の食材はどうなったのか!?なすは、見た目はさほど変わりませんが、深海に入れる前と比べると、海水を吸って10gも増えていました。

 大根は…少し黄色みがかっています。切ってみると、周りに海水が染み込んだ形跡が。生卵はヒビ一つ入らず戻ってきました。中身は…特に変わった様子はありません。それでは、「駿河湾深海定食」、いただきます!まずはナスをいただくと…ちょっと塩味が足りません。続いて大根は…特にいたって普通でした…。なすも大根も、海水を吸っていましたが、野菜の水分が抜け切れていないからか、塩味を感じられませんでした。

 続いて、生卵は、たまごかけごはんに。醤油などの調味料は入れずに戴きます!すると…ほんのり塩気を感じました!では本当に塩分が入ったのか、普通の卵と深海に入れた卵で、黄身と白身、それぞれの塩分濃度を計測してみたところ…黄身は数値に違いはありませんでしたが、白身は、深海に入れたほうが、塩分濃度が上がっていたんです!

 調味料いらずの塩味卵になりました!そして豚肉。深海に入れていない豚肉と比べても、見た目は特に変化はないようです。これを同時に焼いて、先生たちと一緒に試食です!皆さんには、どちらが深海に入れた豚肉かは伏せてあります。
 すると…全員が、深海に沈めた肉のほうが美味しいと答えました。柔らかく、ジューシーになったという人も!本当に柔らかくなったのでしょうか?ものの硬度を測る装置を使って、噛んだ時の固さを計測します。すると…普通の豚肉に比べ、深海に入れた豚肉のほうが硬さの数値が低く、本当に柔らかくなっていたんです!

ポイント2

深海に豚肉を沈めたら、柔らかくジューシーに美味しくなったのだ!

駿河湾で“超レアな深海生物”を発見!?

 今回、目がテンでは、深海生物の捕獲に挑戦!午前4時30分。水族館の館長でもある深海魚のスペシャリスト、石垣幸二さんと共に、漁船に乗って沼津港を出港です!夜明けと同時に、深海魚漁スタート!海底に網を投げ入れ、一網打尽にする「底引き網漁」で、水深230m付近を狙います。いよいよ網を引き上げます!一体どんな深海生物がかかっているのか!?すると…大きなあんこうを捕獲!さらに…高級食材で知られるタカアシガニ!駿河湾ではおなじみの深海生物たちが次々と上がってきます。さらに…深海のアイドル、メンダコ!キレイな形で捕まえるのが難しい、メンダコのメスをほぼ無傷で捕まえ、石垣さんのテンションは急上昇!そして攻撃されると水を吸ってパンパンに膨らむミドリフサアンコウも。赤ちゃんのミドリフサアンコウも一人前にパンパンになって威嚇してます!
 そんな中…石垣さんが何かを発見!それは「コウモリダコ」。

 英語では、「バンパイアスクイッド」、学名で“地獄の吸血鬼イカ”!イカとタコの共通の祖先とされている生物です。分類は、コウモリダコ目(もく)で、現存するのは、この一種のみ。近い仲間が生きていたのは、中生代ジュラ紀、白亜紀とも言われていてまさに生きている化石です!これまでカリフォリニアや小笠原で撮影された映像はあるものの、実物が捕獲された例は、めったになく、貴重だとのこと!駿河湾の深海には…数多くの珍しい生き物が暮していました!

ポイント3

駿河湾の深海には、珍しい深海生物がたくさん生息。陸からも近く、世界的にも大変貴重な海だったのだ!