第1426回 2018.05.20 |
貝 の科学 | 水中の動物 食べ物 |
目からウロコの新常識!「いろんな貝をおいしく食べる」科学!
潮干狩りの勝者になるには?
木更津・江川海岸。広い干潟で人気の潮干狩りスポットです。助っ人に来てくれたのは貝研究のスペシャリスト鳥羽先生!この木更津の干潟を始め、東京湾の貝類や環境について長年研究。貝の生態を知り尽くす鳥羽先生には貝の潜む場所が簡単にわかるとか!貝を放流している潮干狩り場では、潜むも何も、貝はまんべんなくいそうですが、放流して何日かすると、アサリは好む場所に集まってくるため、効率よく獲るには貝の習性を知る必要があるんです。
潮干狩りのコツその①「潮溜まりを狙え!」
アサリは、波が強く当たらない谷になっている“潮溜まり”や山の斜面、特に波が来る方向とは逆の斜面に身を潜める習性があるといいます。
波にさらわれにくい場所としては、アマモなど藻の根っこ付近に潜むことも多いのだとか。
潮干狩りのコツその②「浅く掘れ!掘っていなければさっさと次の場所へ!」
アサリは、砂に潜って生活していますが、プランクトンを捕まえたり呼吸をするのに、水管という管を伸ばしているため、その長さより深く潜ることはないと言います。
コツを踏まえて、酒井さんと後藤アナが潮干狩り開始!すると、酒井さん開始10秒で次々アサリをゲット!一方の後藤さんはゼロ。いないところには全くいないので、さっさと場所を移動。山の斜面に当たる部分を掘り始めた後藤さんは開始2分でアサリをゲット!そこから後藤さんハマグリを立て続けに発見ラッシュ。シオフキ貝という干潟に生息しているバカガイの仲間やアカニシガイという干潟のサザエも発見!
潮干狩りで取った貝を家に持ち帰る時ですが、バケツに海水と一緒に入れておくと貝が自分の吐いた水を何度も循環するため、弱ってしまうそうです。3時間ほどなら水なしでも生きていけるので、網などにそのまま入れて持ち帰るのがいいそうです。
正しい知識のおかげで、2時間で大漁だったのだ!
砂抜きの時間で旨さ倍増
調理科学の専門家、露久保先生に教えてもらいながら、アサリの砂抜きをしていきます。海水と同じ3%くらいの塩水に貝同士が重ならないようバットなどに入れておくのが良いそう。貝ひとつあたりの酸素の量を充分確保できるよう、重ねないことがポイント。温度は常温。冷蔵庫だと寒すぎて休眠し、砂を吐かなくなるので要注意。そして住む環境に近づけるため、新聞紙などをかぶせて暗くします。スーパーで買ったものは、ほとんどが砂抜きされているので仕上げに1~2時間、潮干狩りで獲った貝は4時間ほどつけておきます。
そしてこの時間を利用して貝をおいしくする裏技があるんです!発見したのは瀬戸内海区水産研究所の研究員の内田さん。ブドウ糖を溶かし込んでおくことでアサリの成長速度が 約3割増加すると言います。貝はブドウ糖を吸収すると体内でエネルギーに変えます。その過程でブドウ糖をいろいろな成分に分解し、その1つが貝のおいしさに関わるコハク酸。ブドウ糖を加えたことで、その分増加したと考えられるそうです。
ブドウ糖をたくさん含んでいる、ハチミツでも同じ効果が得られるかもしれないということで実験!塩水1Lに対して、1gを目安にはちみつを添加します。ひと晩、8時間砂抜きして、貝の成分に詳しい品川教授に旨み成分の分析をしてもらいました。食べる状態と同じように蒸し焼きにし、火を通します。アサリの身だけを取り出し成分を分析したところ、塩水だけの砂抜きに比べて、コハク酸の量が3倍以上アップ!さらに、旨味に関わるグルタミン酸と甘みに関わるグリシンの量も大幅に増加していたんです!
ちなみに、おいしさだけでなく、疲労回復などでも知られる成分、「タウリン」も増えていたんです。この分析結果をブドウ糖でコハク酸が増えることを発見した研究員の内田さんに報告をしたところ驚かれていました。
砂抜きで「はちみつを」ちょこっと加えるだけで、おいしさがUPするという新常識を証明したのだ!
ハマグリの網焼きをおいしく食べる新常識
殻の中で汁と一緒にグツグツ煮える貝の網焼きですが、網焼き屋さんで皆さんの焼く様子を見てみるとパカっと貝が開いた時、殻の上に身が持っていかれる現象が続出。試しにまとめて焼いてみると8個中全て、身が殻の上になってしまったんです。
身が下に来るように焼くにはどうしたらいいのか?鳥羽先生と露久保先生に、この問題をぶつけてみると「貝は、貝殻に両方の力でくっついてるから、加熱することでたんぱく質が熱変性を起こして貝殻から離れる。下から熱しているとどうしても下からはなれ、上が剥がれないからみんな上にくっついちゃう」。なんと貝に裏表があるわけではなかったんです。でも、せっかくの美味しい汁がこぼれてしまうのはもったいない!しかし、両専門家によると「貝から最初に出てくる水は、ほとんどが海水。その後もう一回加熱した時にまた、グツグツとエキスが出てきて、そちらの方に貝の旨み成分がギッシリ詰まってる」とのころ。貝の旨味を凝縮したものを味わうためにも最初に出てきた海水は流してしまって問題ないのだそう。とは言われても、やはり勿体無い。そこで、最初に出る汁と最後に出る汁を比較してみると…最初の汁はほぼ海水。最後の汁は旨味たっぷりでした。
そこで、どのタイミングでひっくり返せば、旨味を逃さず焼けるのか、検証します!試行錯誤を重ねた結果、おいしい網焼きは下の貝が剥がれ始めた頃を見計らって海水をジャバッと捨てる。そしてひっくり返すと予熱で上の身は自然に剥がれてきます。完全に開いたときには貝の身が下に残り、旨味が濃縮した美味しい出汁がたっぷり残りました!
しかも、身が上下の殻から剥がれてキレイに食べられる状態だったのだ!
ホンビノス貝をおいしく食べる新常識
スーパーなどでも、最近は常連の顔となっている「ホンビノス貝」。漁が行われるのは主に千葉県船橋の海。漁の道具は、棒の先にカゴがついた鋤簾(じょれん)。こちらを海の中へ。水深2mほどの場所で、鋤簾の先を海底に刺してテコの原理でかき上げながら貝を集めていくのです。
手で海底の感覚を探りながら、鋤簾の柄を動かしていきます。ホンビノス貝はアメリカ原産で、1998年に日本で初めて確認。青潮などでアサリが減少したときでも、びくともしなかった生命力の強い貝で新たな水産資源となっています。年間通してたくさんとれるため、大きさの近いハマグリと比べ値段は4分の1程度!
では、どうやって食べるのがおいしいのか?調理科学の露久保先生にその特徴を教えてもらいます。まずは、ハマグリと味比べ!出汁を取って味を見てみます。ハマグリよりも、明らかに濃い出汁が出るとわかりました。
それでは「ホンビノスクッキング!」
まずは、しっかりとした出汁を生かした料理。調味料も一切加えず、水だけで茹でて貝が開いたら完成。ホンビノスのお吸い物!貝自身が持つ旨味と塩分の絶妙なお出汁。
また、しっかりした出汁を応用するとフライパンに貝、豆腐、日本酒、生姜スライスを入れて火にかけます。豆腐から出る水分だけで蒸しあがり、しょうゆで軽く香り付けしてネギを散らせば出来上がり。肉豆腐ならぬ、ホンビノス豆腐!
続いて、身の大きさを生かした料理。アサリと比べて火を通した時に縮みにくいのがホンビノス貝の特徴。茹でる前と比較すると、確かにホンビノスのほうが身がしっかり残っていました。まずはホンビノスを茹でて、身を取り出します。これに薄力粉とつなぎの卵とパン粉をつけて「ホンビノスフライ」。高価なハマグリでは躊躇してしまう、ホンビノスだからチャレンジできる一品!
ホンビノス貝は煮る、焼く、揚げる…何でもおいしく仕上がる、まさに万能選手なのだ!