第1446回 2018.10.14 |
ガラパゴス諸島 の科学② | 場所・建物 地上の動物 水中の動物 |
この秋、放送30年目を迎えた『所さんの目がテン!』。それを記念して、世界遺産の第1号のひとつで、貴重な生物が数多く生息する「生き物たちの楽園」ガラパゴス諸島を徹底調査します!生き物大好き!桝太一アナウンサーが、憧れのガラパゴス諸島に初上陸!
今回は、ガラパゴスで独自の進化を遂げた生き物たちの秘密に迫ります!
運よく流れ着いた!?ゾウガメの進化の秘密!
プエルト・アヨラの街から車で30分。緑の生い茂る場所にいる「巨大な生き物」をダーウィン研究所の研究員、アイノアさんと探していると・・・いました、“ガラパゴスゾウガメ”!地球上でガラパゴス諸島にしかいない固有種です。
近づこうとすると、「シュー」という音が。実はこの音、危険を感じて甲羅の中に隠れるときに出す音。彼らはすばやく逃げることができないので、甲羅の中に隠れながら威嚇をしているのです。そこで、刺激しないようゆっくりと近づくことに。ガラパゴスゾウガメは、陸に住む泳げないリクガメの中で世界最大。大きいものでは体長1m50cm、体重300kgに達するものもいます。動きはとてもゆっくりで、エネルギーの消費が少ないため飲まず食わずでも最長1年、生きられるそうです。アイノアさんは、ダーウィン研究所の中でもゾウガメ研究のスペシャリスト。見つけたゾウガメの年齢を聞くと、おそらく80歳以上だと言います。でも、彼らの寿命は100歳を超えるので、80歳でもまだまだ若いのだとか。およそ2万頭ものゾウガメが暮らしているガラパゴス諸島。スペイン語でゾウガメはガラパゴ。つまり、ガラパゴスとはゾウガメの島という意味なのです。
これほどの数の野生のゾウガメを見られるのは、世界でもほとんどありません。集団で水につかって体温調節をしているところや車が通る道路をわがもの顔で歩く姿なども見られます。さらに、ゾウガメの糞も発見。糞を調べるのも研究の一環です。ゾウガメの糞は、食べてから排泄されるまで2~3週間かかると言われていて、草木や植物の種があまり消化されずに出てきます。
さらに、スタジオでは桝アナが「なぜガラパゴス諸島でゾウガメがこんなに繁栄しているのか?」を解説。1つ目は海洋島であること。ガラパゴス諸島は、もともと海底火山が噴火してできた「海洋島」という島で、一度も大陸と陸続きになったことがありません。つまり、最初は生き物が全くいない島だったのです。そこに運良くたどり着いた生き物だけが繁栄できるのですが、泳げないゾウガメは、おそらく流木などに乗って流れ着いたのではないか、と考えられています。カメなどの爬虫類は、哺乳類と違い、飲まず食わずでもある程度生きることが可能で、卵の状態ならもっと長い期間耐えることもできます。大陸から流木などに乗ったカメやその卵が海流に乗り、ガラパゴス諸島にたどり着いたと考えられているのです。そうして流れ着いた島には、天敵となる肉食動物や食べ物の草を奪い合う牛や馬などのライバルもいないので、繁栄することができた、というわけなのです。しかも、ガラパゴス諸島には東西南北4つの方向から海流が集まってきており、そのために多様な生き物が流れ着いたと言われています。
勘違いされがちな?進化論を徹底解説!
次なる進化の鍵は、ガラパゴスの空港に到着したとき、すぐに見ることができたダーウィンフィンチ。しかし、ダーウィンフィンチと言っても、色々な種類がいるのです。訪れたのは、サンタ・クルス島の中心にあるロスへメロス。スペイン語で双子という意味の場所です。そこにあったのは、直径200m以上もある巨大な穴。
穴は2つあるため、ロスへメロス、双子という地名がついたそうです。かつてこの場所は、火山の活動が活発でしたが、その後、マグマがなくなって地下に空洞が生まれ、地面が陥没してこのような大きな穴ができたと考えられています。
さらに、ガラパゴスで独自の進化を遂げた植物があります。ダーウィンフィンチが好んで生活をする木の一つである、スカレシアという、キク科の植物です。最大15mにもなるスカレシアですが、元々は、日本のキクのように小さかったそう。なぜそんなにも大きくなったかというと・・・スカレシアがここに初めて生えたとき、まわりに大きな植物がなかったから。海洋島で、植物があまり生えていなかったガラパゴス諸島に、スカレシアの種が鳥の体などに付着していち早くたどり着きました。すると、ライバルとなる植物がいないため、どんどん大きく進化したと考えられています。
森に入って10分、ダーウィンフィンチを発見しました。桝アナは、佐藤アナに「ダーウィンフィンチは、くちばしを見ろ!」と言います。くちばしの形を見てみると、とても細く尖っていて、空港で見たものとは全く違います。このダーウィンフィンチは、虫を食べているから細く尖っているのだそう。最初に空港で見たのは、地上フィンチと言い、とても幅広く大きなくちばしを持っています。
彼らの主食は大きくて硬い木の実なので、くるみ割り器のようにくちばしで砕いて食べるのです。同じダーウィンフィンチでも、食べる餌によってくちばしの形が進化します。1種類から実に、13種類に分かれたとされているのです。
そして、さらに貴重な鳥"ガラパゴスマネシツグミ"を発見しました。実はこのマネシツグミこそが、ダーウィンが進化論の発想を得たきっかけの鳥と言われています。ダーウィンフィンチを見て、進化論を思いついたと勘違いしている人もいるようですが、それは間違い。
スタジオでは、桝アナが誤解されがちな「進化論」について解説。19世紀半ばまでは、生き物の種は全て神様によって作られ、姿形は変わらないと考えられていました。それに異を唱えたのが、ダーウィンの進化論です。ガラパゴスマネシツグミは、住む島によって同じ種類なのに、くちばしの長さが違います。
これを見てダーウィンは、このような小さな違いが積み重なっていき、生き物の種が分かれると考えたほうが、神様が全ての種を作ったと考えるよりも合理的だと思ったのです。ここからが、進化論が勘違いされやすいところ。マネシツグミは、「くちばしを長くしたい!」と思って、その形を変えたのではありません。まずは、人間が人によって少しずつ違うように、くちばしが長いものから短いものまでいろいろな鳥が偶然産まれます。そして、この島が何らかの理由でくちばしが長いほうが有利になった場合、くちばしが長い鳥しか生き残れません。すると、くちばしが長い鳥だけが増えて子孫を残し、くちばしの短い鳥は淘汰されていきます。最終的には、くちばしの長い鳥だけが生き残り、結果として形が変わっていった、というのが、ダーウィンの提唱する「進化」なのです。
自らの意志や努力で成長することは「進歩」であり、生物学でいう「進化」とは別のものなのです。ガラパゴス諸島の進化の秘密は、「島ごとに環境が違う」から。これが、ガラパゴス諸島の生き物の様々な変化をうんだのです。
ガラパゴスでしか見られない、イグアナの進化!
最近ペットとしても人気のイグアナ。トカゲと同じく、陸上で暮らす爬虫類で、大きいものでは2m近くになるものも。ガラパゴス諸島にはどんなイグアナがいるのでしょうか?上陸したのは、サンタ・クルス島の東にある無人島、サウスプラザ島。ウチワサボテンとセスビュームと呼ばれる赤い植物が生えている島です。大きなサボテンの下にいたのは、ガラパゴス諸島にしかいない、“ガラパゴスリクイグアナ”。
彼らは、水分を多く含む実が落ちてくるのを、サボテンの下でずーっと待っているのです。いわば「棚ぼた」待ち。落ちてきた実を奪い合い、争う場面も見られました。強いものだけが、食べ物にありつける、とても厳しい世界に、ガラパゴスリクイグアナは生きているのです。
厳しい環境で暮らすリクイグアナだけでなく、驚きの進化を遂げた全く別のイグアナもいます。そのイグアナを求めてやってきたのは、サンタ・クルス島にあるトルトゥーガ・ベイ。およそ1kmに渡って広がる真っ白な砂浜です。ここにいるのが、鋭い爪に、いかつい顔をした"ガラパゴスウミイグアナ"。
彼らが遂げた、驚きの進化とは・・・「世界中のイグアナで唯一、海に潜って餌をとる」こと。ウミイグアナは、しっぽを上手に使って海を泳ぐことができます。相当波が荒くても平気。息を止めて水中にいられるのは10分ほどで、その間に岩にしがみついて海藻を食べるのです。
ウミイグアナは、進化して海で海藻を食べられるようになったイグアナなのです。
もう一つ、ウミイグアナの面白い生態が見られました。ウミイグアナは日中、じっと動かずに日向ぼっこをしていることがよくあります。その理由は、体温調節。ウミイグアナは、外の温度で体温が変わる変温動物なので、長い間、日向ぼっこして体温をあげてから冷たい海に入るのです。海に進出するというとんでもない進化をしたウミイグアナにとって、じっと日向ぼっこをして体温を上げるのは大事なことだったのです。
また、ウミイグアナは、リクイグアナにはない特徴を持っています。リクイグアナは、サボテンの下で実が落ちるのをじっと待っていましたが、彼らは木登りができません。一方のウミイグアナは、水の中で流されないよう、岩をガッチリ掴むために鋭い爪を持っています。なので、垂直な壁でも自由自在に登ったり降りたりすることができるのです。
さらにウミイグアナは、鼻の近くにある専用の器官から、餌を食べるときなどに一緒に飲み込んでしまった余分な塩分を吐き出すこともできます。海に対応するために特別な器官が発達した、というわけなのです。
では、なぜガラパゴスだけで、海に適応したイグアナが誕生したのでしょうか?次なる進化の秘密は・・・「環境の激変」。生き物の進化に詳しい、東京大学名誉教授の樋口広芳(ひぐちひろよし)さんによると、ガラパゴス諸島は、生き物にとって暮らしやすい環境と暮らしにくい環境が数年おきに交互に訪れる、世界的にも珍しい、環境が激変する場所なのだとか。そのような場所では、陸に住むイグアナから海に適応する種が生まれるという、極端な進化も起こりやすくなるのです。ガラパゴスでは、陸が豊かで植物が増え、海が厳しく海藻が減ってしまう時期と、逆に陸が厳しく植物が減り、海が豊かで海藻が増える時期が交互にやってきます。海が豊かになると、海藻の多い海で生活をはじめるイグアナが出てきます。すると、そのうちにまた環境がかわり、海藻が減ってしまうので、海に進出したイグアナは次々と死んでいきます。しかし、全滅する前に、また海藻が増える時期がくるので、厳しい時期を生き残ることができた、より海に適応した遺伝子を持ったイグアナが増えていくのです。こういったことがどんどん繰り返されることで極端な進化がうまれるのです。