放送内容

第1450回
2018.11.11
北極生活の謎 の科学 場所・建物 水中の動物 自然・電波・鉱物・エネルギー

 先日、目がテンは1年間、北極圏グリーンランドに設置した定点カメラを回収することに成功!カメラを設置したのは、地球上で最も北にある自然集落、カナック。極限の地で、移住体験プレゼンターの金丸慎太郎さんが見たのは…私たちには、すべてが謎!?北極生活の不思議だったんです!
 1日中、太陽が沈まない白夜の時期、子ども達はどう過ごしてるいるの?北極の小学校で見たありえない光景とは?北極といえば、犬ぞりを引く犬!食欲旺盛な犬たちのエサとなるアザラシの肉に驚きの秘密が!!さらに北極の海には、世界中どこの水族館でも見ることができない幻のクジラ、イッカクが!今回、地元ハンターのイッカク狩りに同行!そして、ついに…!?
 今回の目がテン!は、「北極プロジェクト特別編 北極生活の謎」です!

北極の子供たちと犬の謎

 グリーンランドの北、北極圏にある人類最果ての町、カナック。人口600人ほどの小さな集落です。1年前、カナックの町にしかけた定点カメラには24時間太陽が沈まない白夜から、24時間太陽が出ない極夜へと切り替わる様子がしっかりと映っていました。
 こんな極端な環境で、人々はどんな暮らしをしているのか?とりあえず、自撮りスタイルでカナックを歩いてみることに。すると、この集落にも役場があり、グリーンランド全土にあるスーパーマーケットのチェーン店も1軒あることがわかりました。店内には生活必需品が一通りそろっており、不自由はなさそうです。
 散歩していると、やってきたのは、とっても人懐っこい少年。後をついていくと、町に一つだけある小学校。こちらが小学校の校庭。日本でも見慣れた風景に見えますが、実はこの時、なんと夜の10時過ぎ。

 この時期、北極は太陽が沈まない白夜。夜も、昼と変わらない明るさで、学校が夏休みなのもあって、子供たちは眠くなるまで外で遊んでいました。小さな町なので、住民はみんな知り合い。夜遅くても子供は安全だそうです。
 そして次にであったのは犬。カナックの町のいたるところに犬が。夏の間はリラックスして休みを満喫している犬たちですが、寒くなれば本領発揮!荷物や人を運ぶ犬ぞりです!凍り付いた大地や海の上を自由に走ることができる犬ぞりは、今でも冬の主要な交通手段だそうです。
 そりを引く犬たちのパワーの源は?その秘密をガイドのマイクさんが見せてくれました。親せきのおじさんと落ち合って向かったのは海沿い。目的はこちらの木箱。海岸に放置された木箱の中には、ぶつ切りにしたアザラシの肉!おじさん自らハンティングしたもので、この肉を小分けにして、飼い犬たちに与えるそうです。
 実は、こちらの肉、3か月間箱の中に放置したものですが、カナックの人は火を通さず生のまま、バクバク食べます。さらに、通りすがりの人にもおすそ分け。カナックの人たちは、なぜ3か月放置した生肉を食べられるんでしょうか?
 腐敗に詳しい専門家によると、北極は気温が非常に低いので微生物による腐敗よりも、酵素による自己消化、いわゆる熟成が進んだと考えられるそうです。

 例えばイカの塩辛も自己消化による熟成。獲れたてのイカと比べ、うまみ成分のアミノ酸が10倍もあるといいます。

 ぶつ切りにしたアザラシの熟成肉を手押し車に乗せて街の外れへ。おじさんの姿を見るやいなや、犬たちは大興奮!お腹が減っているようです。おじさんはコントロールよく肉を犬に向かって投げます。犬たちはそれを口でダイレクトキャッチ!骨があろうがそのまま、かみ砕いて飲み込みます。夏の間はエサやりが2、3日に1度になるため、お腹を空かせているんです。わずか数分で、肉が詰まっていたバケツが空っぽに!
 イヌイットにとって犬はペットではなく、厳しい自然の中を移動するパートナー。

 犬ぞりの旅は、時としてブリザードの中で雪まみれになりながら耐える強さが求められます。犬たちが野性的な強さを失わないようこのような飼い方をしているんです。

ホッキョクグマの毛皮の謎

 続いて訪れたのは、カナックの中心にあるこちらの建物。中には何が?実はここ、カナックの女性が集まる作業所。獲物の皮をなめしたりしているそうです。この日は通称シロクマ、ホッキョクグマの毛皮。触り心地は硬く、まるでお湯につける前の春雨。
 さらに!アザラシの皮で出来たイヌイットの伝統的な衣装を着せてもらいました。
 ホッキョクグマの毛皮は実はズボン。今でも冬場、この服で狩りに出る人もいるそうです。色々な形で野生動物を利用してきたこの町では、狩る数や期間などを決めて、伝統と動物保護の両立を図っているそうです。
 なんとか全部着て外に出てみると、温かいだけでなく、こう見えて意外と動きやすいんですよ。実は、北極で暮らすホッキョクグマの毛皮は科学的に見ても寒さに強いものだったんです。

 北海道・円山動物園で採集されたホッキョクグマの抜け毛の顕微鏡写真を見てみると…中が空洞になっています。一方、こちらは森で生活するクマの毛。中に空洞はありません。ホッキョクグマの毛の空洞に入っている空気が暖かさの秘密。空気は断熱効果が高く、それだけ暖かいということなのです。

北極の珍獣イッカクの謎

 過酷な自然と共に生きる北極の人々。多くが狩りなどをなりわいとして、暮らしています。鳥を網でとらえたり…セイウチを撃って仕留めたり。中でも幻と言われる生き物が…真っすぐに伸びた3メートルもの長い角!この角の持ち主こそ、イッカク!
 長い角がまっすぐ突き出た、他にはない姿のクジラです。角をのぞいても、体長は4m以上にもなります!
 北極周辺の海だけで見られ、幻ともいわれたイッカク。角を見た西洋人は空想上の生き物、ユニコーン。一角獣の角だと考えたそうです。名前の由来となった角は、実は角ではなく、歯の一本が長~く伸びた、いわばキバ。オスにしかなく、なぜ長いのか、確かなことはわかっていません。
 イッカクを見てみたい。マイクさんの知り合いのハンター、パウルスさんがイッカク猟に行くと聞き、会いに行きました。
 猟を待つこと2日、ついにイッカク猟に出発です。ボートを走らせること5分ほど、町はずれの海岸にある小さな小屋に立ち寄ります。ここに狩りで使う道具をピックアップ。
 イッカク猟で使うのはカヤック。こちらのカヤックはパウルスさんの手作り。

 これで静かにイッカクに近づき、同じく手作りのモリをイッカクに打ち込みます。その後、弱るまで根気よく追跡するそうです。モリに繋がっているのがウキ。逃げてもこれが目印になります。よく見ると手が!アザラシの中身を抜いてそのままウキにしたんです。荷物を積み込んだらスピードを上げます!イッカクが出没する場所へ。カヤックやモリはボートに括り付け、すぐに猟に出られる態勢です。沖に出ること30分。鏡のような海には、アザラシや、アッパリアスという海鳥がいました。

 幻のイッカクは見つかるのか?すると、幻のクジラ、イッカクが!

 遠くて特徴の角をカメラでとらえることはできませんでしたが、確かにイッカクだそうです。
 パウルスさん、カヤックを音もなく操り、イッカクに近づきます。大きなボートで近づいたり、銃を使わないのは伝統的な漁しか認めない、グリーンランドのイヌイット自身が決めた法律のため。チームワークでイッカクを追い詰めます。伝統的な漁のやり方を次世代に伝え、イッカクの数も減らさない。イヌイットの知恵です。
 イッカクの動きを予測して先回り、オールを止めて気配を消します。

 静かな戦いを繰り広げること40分…残念ながら捕まえることはできませんでした。
 その後、時間の許す限りイッカクを探しましたがこの日はもう姿を現すことはありませんでした。残念ながらイッカクを狩ることはできませんでしたが、ホテルでおどろきの出会いが…。なんと、ご飯の時間にイッカクの皮が…。

 イッカクの皮の塩ゆで。その味は…うっすら肉の味がするガム。
 あまりイッカクは美味しくなかったと正直にガイドのマイクさんに伝えたところ、イッカク料理をふるまってくれることに。イッカクの肉に小麦粉をまぶして、バターたっぷりのフライパンに入れ、焼き上げます。マイク自慢のイッカクのバターソテー。

 一度はがっかりしたイッカクの味。こんどはどうでしょう?その味は…臭みが全然せずママック(おいしい)!幻のクジラ、イッカクをおいしく頂くことができました。