放送内容

第1455回
2018.12.16
移住体験・石川県七尾市 の科学 場所・建物

 今回の目がテンは「移住シリーズ」第4弾!舞台は、日本列島のほぼ中央、南北に伸びる「石川県・能登半島」。能登の里海里山が世界農業遺産に認定され、近年では、北陸新幹線の開業も相まって、石川県への移住者は大きく伸びているんです。中でも注目は、能登半島の中央部に位置する「七尾市」。市町村別のランキングで、「シニア世代が住みたい田舎 北陸1位」。そして「子育て世代が住みたい田舎 北陸5位」と、いま、幅広い世代に人気の街です。
 今回も街の魅力を探るべく、俳優の金丸慎太郎さんが移住体験プレゼンターとして1週間の移住体験。七尾市が移住先として人気な理由に迫ります!

人に合わせた移住案内!

 東京から新幹線で金沢まで2時間半、特急に乗り継ぎさらに1時間と、3時間半で到着したのは、七尾駅。能登半島の真ん中に位置する七尾市は、人口およそ5万3千人。まず家探しに向かったのは、街づくりセンター。ここでは、移住に関するさまざまな相談に乗ってくれます。迎えてくれたのは、「移住コンシェルジュ」をやっている太田さん。移住コンシェルジュとは、七尾市に来てどんなことをしたいか、どんなことを夢みてくるか、を明確にしながらそれに合う人を紹介してくれる人です。実は太田さんも移住者の一人。移住した経験があるからこそ、人付き合いの話や暮らし方など様々な相談に乗れるといいます。
 これまで移住体験では、不動産屋が物件を登録する「空き屋バンク」を利用してきましたが、七尾市では移住者が希望する地域に空き家バンクがあれば不動産屋を利用し、なければ家を探してくれます。
 七尾市移住のいいねポイント1つめは、「ヒトに合わせた移住案内」。

 金丸さんの希望地域は、能登半島の中にある能登島。ということで、早速太田さんの車で能登島へ。七尾湾に浮かぶ「能登島」は、人口およそ3000人。年間10人ほどの移住者が島へやって来ます。まずは、地域の情報が集まるコミュニティーセンターで、能登島に詳しい人を紹介してもらいます。
 紹介してもらったのは、大阪出身で能登島に移住してきた小山さん。ボランティアで精力的に移住希望者のサポートをしています。以前は環境保護の仕事をしていたそうですが、能登島の田舎暮らし体験に家族で参加したことがきっかけで興味を持ち、2015年に地域おこし協力隊として移住。任期を終えたあと、能登島に定住し、現在は地域を盛り上げるための仕事をしています。
 太田さんとはここでお別れし、能登島に詳しい小山さんおすすめの物件に案内してもらいます。訪れたのは、向田(こうだ)という集落。ここは毎年7月、日本三大火まつりのひとつ「向田の火祭り」が行われる場所です。
 おすすめの物件は、まるで銭湯のような広々とした家。

 実はこちらのお宅、以前、小山さんが借り、家族で住んでいたんです。1階には7部屋と、広々としたキッチンがあり、2階にも和室が2部屋ある9Kのお宅。床面積150平米超え、築50年の古民家ですが、家賃は月3.5万円!しかも本格的に移住した場合、1万5千円まで市から補助が出るため、2万円にまで下がります。ただ、ボイラーが無くてお湯が出ない、というデメリットも。しかし、そこは朝からやっている温泉が島にあるというころでカバー。

 古民家ゆえの不便さもありますが、集落の近くには、警察の駐在所や診療所があり、この島唯一のガソリンスタンドとコンビニも自転車で5分くらいの場所にあります。ということで、移住体験をする家はここに決定!お部屋を掃除したところで、1週間の移住体験がスタート。

 まずは、移住生活で特に大事な「ご近所へのあいさつ」から。小山さんに紹介してもらい、恒例の今治タオルを持って隣近所へのあいさつを行います。続いて、小山さんに島の案内をしてもらうことに。のどかな島を自転車でしばらく走っていると、畑仕事中のおばあちゃんに出会い、青々としたほうれん草を頂けることに。さらに、漁港に寄ると漁から帰ってきたタコ漁師の平山さんを紹介してもらいます。平山さんはタコ漁師のかたわら、観光協会青年部の活動も行う、小山さんの仲間です。ここでは、獲れたてのタコを頂きました。こうして、島巡りを終え、子どもを迎えに行く小山さんに同行させてもらい、保育園へ。能登島には保育園が一つしかなく、集落の子供たちが皆ここに集まります。お子さんの両親がみんな顔見知りなのも良いところです。

 ここで小山さんとはお別れして、移住初日は、頂いたタコを使って自宅で晩ごはん。タコを1匹まるまる茹で、完成したのは…タコ飯。さらに、おばあちゃんから頂いたほうれん草で作ったおひたしと茹でダコも。味付けも完璧だったようで、島の恵みを満喫した一日目が終了しました。

採れた作物を分け合う地域性!

 2日目の朝、起きてすぐ、金丸さんが向かったのが、昨日ご挨拶したご近所の桂さん。お風呂を貸してもらい、心も体も温まります。
 朝風呂を堪能した金丸さんは、能登島で農家を営む先輩移住者を訪ねました。かぶの収穫をしていたのは、福岡で建築関係の営業をしていたのから一転、20年前、能登島に移住して一から農業を始めた高さん夫婦。農業経験がない状態で始めたため、最初は失敗だらけだったといいます。出来損ないの野菜や小さい野菜は、市場に出荷できず、8割方捨てざるを得なかったそうです。しかし、七尾市の食育イベントで知り合ったシェフが救いとなりました。畑にやってきたシェフが、市場にないサイズの野菜を探していたということで、高さんの野菜に目をつけました。そして、シェフの要望に応えていくうちに、年間300種類を超える野菜を作るように。
 この高さんの野菜づくりを支えているのが、赤土と言われる粘土質の土。およそ12万年前、海底から隆起した能登島は火山灰などに埋もれることなく、ゆっくりと土壌ができ、表面を粘土質の土が覆います。その土は、水分や養分を保持しやすい性質があるため、野菜が美味しく育つのです。さらに、周囲に高い山がなく大雪が降ることも少ないため、年間を通して作物を収穫することが可能なんです。

 多くの料理人が訪ねてくる高農園(たかのうえん)にこの日もある料理人が訪れていました。ハウスの中の雑草を熱心に物色するのは、先輩移住者のイタリアン料理人・平田さん。2年前、東京から移住し、七尾市でお店を開きました。そして実はこの方…今年開かれたパスタ・ワールドカップに日本代表として出場した、日本イタリア料理界の若きエースなんです。大会では、能登の食材を使った独創的な一皿で注目を集めました。せっかくなので、平田さんのお店にお邪魔することに。お店に着くなり、調理を始める平田さん。出来上がったのは・・・能登の旬、ズワイガニの卵と能登島の野菜を使ったパスタ。

 漁から帰ってきてすぐに食材が使えるとあり、素材の味を存分に生かした一皿です。
 平田さんが魅せられた七尾の海。こちらの漁港には、同じく七尾の海に憧れ、移住してきた方がいました。今年の9月に七尾へとやってきた、先輩移住者の西沢さん。この時期、注目されるのが、定置網によるブリ漁。脂がのって、旨味あふれる大人気の冬の味覚です。ブリと言えば富山の氷見ブリが有名ですが、実は七尾は氷見の隣。同じ海域でブリの漁を行なっているのです。
 残りの作業を終え、明るくなってきたところで、西沢さんのご自宅に案内してもらいます。5人家族の西沢さんご一家。長野の上田で介護の仕事をしていましたが、漁師を夢見て、海のない長野から能登半島へと移住。近所のおばあちゃんが色々と気にかけてくれるそうで、一緒に越してきたお子さんたちを見守ってくれるので安心です。
 七尾市移住の良いねポイント2つめは、ご近所のおばあちゃんが見守ってくれるところ。

 さらに、採れた作物を分け合う地域性もこの土地の良さです。西沢さんのお宅には、大家さんにいただいたお米や町会長がくれたお米が30キロもありました。引っ越してきてから一度もお米を買ってないそう。子育て世代に人気の理由が分かりました。

シニアが楽しく暮らせる環境!

 一方こちらには、シニア層の移住者が。麻布産まれ渋谷育ちだという大和賢さん。不動産など様々な仕事を経て、2年前、七尾に移住してきました。お話し聞くと、大和さんだけが七尾に移住して、奥さんは東京にいると言います。とはいえ、大和さんのお宅は決して夫婦仲が悪いわけではなく、それぞれで好きなように暮らしているからこその"ハッピー別居"なのだそう。アクティブに田舎暮らしを楽しむ大和さん。地元の稲刈りやお祭りに参加するのはもちろん、憧れだったヨットに乗るために67歳で小型船舶の免許をとったのだそう。
 七尾市移住のいいねポイント3つめは、シニアが好きなことを実現できる環境です。

 移住生活3日目を終え、ここからは恒例の自撮り生活へ。部屋でくつろいでいると、初日に島を案内してくれた先輩移住者の小山さんから自宅での鍋パーティーのお誘いが。お邪魔してみると、移住仲間のみなさんも集まっています。ご馳走になったのは、能登島の地魚と野菜をふんだんに使った、この時期にはぴったりの特製鍋。食卓には、先輩移住者が育てた野菜も並びます。奥様方から家の心配もされつつ…金丸さん、子供たちともすっかり仲良くなっていました。

 別の日には、牡蠣の養殖場に訪れました。ここでは、殻剥きの作業を見せてもらいました。金丸さんも殻剥きの手伝いをさせてもらっていると…蒸し牡蠣をご馳走してもらうことに。熱々の蒸し牡蠣は、一番おいしい食べ方だと言います。大ぶりで熱々の蒸し牡蠣は、格別な味でした。

 そしてまた別の日、小山さんたちが柿をとっているところに遭遇。小山さん主催の、能登島に住むおばあちゃんが持つ知恵を子どもたちに伝える集まりで、干し柿を作るのだそう。干し柿を作る際には、柿をしっかりと揉んでおかないと、出来が良くならないと、おばあちゃんがアドバイス。金丸さんも干し柿と甘柿を頂いていました。
 こうして1週間の移住生活を終え、スタッフが合流。すると、移住生活で出会った皆さんが別れのあいさつに。小山さんからは能登のお酒を、子供たちからは子供たちから寄せ書きの色紙を頂きました。

 夏にまた遊びに来る約束をして、移住体験は終了。金丸さんは、人と人がちゃんとかかわりあって生活している、暖かい人付き合いのある場所だった、と感想を語っていました。