第1467回 2019.03.17 |
かがくの里・田舎暮らし の科学 | 場所・建物 自然・電波・鉱物・エネルギー |
荒れ果てた土地を切り開き、科学の力で豊かな里山を蘇らせる、長期実験企画「目がテンかがくの里」!地元森林組合の協力で間伐を行い、見晴らしのいい里山になってきましたが、まだまだ荒れたままの部分も多いんです。そこで、阿部さんが、里のスーパーマン、西野さんに弟子入り!
今回は、阿部さんの木の伐採修行をお届けします!
超豪快なプロの技「つるし切り」!
去年から始まった里山再生プロジェクト。中心になって取り組んできた阿部さんですが、実際は阿部さんが切り倒せるレベルの木が少なく、作業のほとんどは森林組合の方々がやっている状態。阿部さんは以前、チェーンソー講習を受けており、林業従事者としての資格は持っているのですが、経験が圧倒的に足りないのです。そこで、今年はもっと阿部さんにレベルを上げてもらうため、何でも出来る里のスーパーマンでもあり、地元で随一の腕を誇る林業家でもある西野さんに弟子入りをすることに。
1月下旬、阿部さんが訪れたのはかがくの里近くにある大きな一軒家。西野さんのこの日の仕事は、民家に生えた、およそ20mのケヤキの伐採です。
このケヤキは樹齢100年を超す老木。下にはお墓があり、台風などで枝が折れ、お墓を壊してしまうかもしれないので、伐ることになったのです。しかし、伐るといっても両脇は家に挟まれ、奥にはお墓があるので、山で行うように切り倒すことができません。そこで西野さん、「つるし切り」という方法で伐採することに。つるし切りとは、ケヤキの木にワイヤーを括り付け、クレーンで吊りながら伐る方法。
このような伐採は、特殊伐採というそうです。今回のように家の庭や、電線の隣などにあって、切り倒すことができない木を特殊な技術を使って伐採する「特殊伐採」。実は、西野さんはその特殊伐採のスペシャリストなんです!里の山での間伐よりも、危険で技術と経験がモノを言う特殊伐採の仕事。
阿部さんが見守る中、西野さんが高所作業車へ。隣で上り下りを操作するのは、西野さんの息子、正彦さんです。正彦さんの操作でケヤキの真ん中あたりに移動し、ワイヤーを巻き付けています。実はつるし切りでは、ワイヤーのかけ方がとっても大事なんだとか。伐ってつるした後、ワイヤーの位置が悪く木のバランスが崩れてひっくり返ると、大事故になってしまうんです。西野さんは長年の勘と経験を駆使して、近くでケヤキの枝ぶりを確かめ、遠くから全体のバランスを確認しながら、ワイヤーをつける位置を見極めていたんです。大事なワイヤーの巻き付けが終わり、ワイヤーの先端を、巨大クレーンにかけたら、準備完了!いよいよ、伐っていくようです。直径およそ50cmもあるケヤキを少しずつ慎重に伐ってます。そして、伐り終えた瞬間、宙ぶらりんに吊られた木が西野さんたちの方へ!間一髪でなんとか避けたように見えましたが、それも想定内。伐り終えた木がひっくり返らないように重さを計算してワイヤーをかけていたため、宙づりで揺れた木の動きは、すべて予想通りだったんです。伐ったケヤキはそのままクレーンで吊りながら移動し、地上に降ろします。樹齢100年のケヤキは、さすがの太さ!
一仕事終えて、お茶の時間。西野さんからも「失敗したら命を落とすこともある」という話を聞き、林業という厳しい仕事の現実を知りました。
休憩の後、残るもう一本をつるし切りして、作業は終わりかと思ったら、西野さんがなにかを作り始めました。木工用ボンドと殺菌剤を混ぜて、最後に墨汁を入れています。木の伐り口は、雨にさらされると、腐朽菌という菌が入り、腐ってしまうんです。だから、殺菌剤と防腐効果のある墨汁を塗り、木を守るのだそうです。100年以上、この地にあったケヤキ。これでまた、枯れることなくこの地で生きていくことができるんです。
阿部さんの挑戦!修行の成果を見せる!
弟子入り2つ目の現場は、山道での作業。今日は、落石防止ネットをかける作業を行うのだそう。
その準備のため、斜面傾斜がほぼ80度という崖の上で、およそ80本のヒノキを6日かけて切り倒します。師匠西野さんの仕事を間近で見るため崖を登りますが・・・阿部さん、登るだけでも一苦労。すると西野さん、木にロープをまき始めました。あまりに傾斜が急なため、倒れた勢いで木が飛んで行ってしまうので、倒れた木が下のガードレールにあたって、壊れないように、ロープを後ろの木に巻き付けておくのです。木が倒れる瞬間、息子さんがロープを全力で引っ張り、飛んでいかないようにするというのですが、大丈夫でしょうか。
急斜面をものともせず、熟練のチェーンソー捌きで木を伐り終えます。そして軽く押すと、木は一気に倒れ、結んでいたロープを息子さんが引っ張って調整します。すると、ガードレールにぎりぎり当たることなく、飛び出しを抑えることができました!
特に、葉っぱが沢山ついている木は飛んでいきやすいらしく、ロープで引っ張らないと大事故が起きてしまうのだそう。その後も西野さん親子は、抜群のコンビネーションで次々に急斜面のヒノキを伐っていきます。10本程度伐ったところで、崖の上での作業はいったん終了。でも、下での作業が待っています。阿部さんもチェーンソーを使い、倒した木を撤去するため、細かく切っていきます。こうした作業を繰り返すことで、チェーンソーの扱いに慣れていくのだそう。細かく伐った木は、重機と手作業で片付けます。最後にブロアーで道をキレイして、1日目が終了。
同じ作業の繰り返しに見えますが、木によって太さも違えば生え方も違い、倒す場所も最適な所を見極め、伐っているのです。伐った木がどう動くのか?何本も、その動きを間近で見て体感することが何よりの勉強になるそうです。こうして、西野さんの現場に密着して修行を重ねていきます。
いよいよ、工事の最終日を迎えました。阿部さん、急な崖にも慣れ、現場作業も、かなり手伝えるようになってきたみたいです。すると、西野さんの計らいで、なんと木を伐らせてもらえることに!師匠の指示を聞く阿部さんは真剣そのもの。その姿はもはや芸人ではなく、林業の男です。危険な崖での伐倒。この経験はかがくの里山でも活きてくるはず。修行の成果を見せる時が来ました!切り倒す方向に受け口を入れ、続いてその裏から追い口を入れます。そして倒すと・・・ガードレールに当たることもなく、見事に伐倒成功!阿部さんすごい!
そして、6日間に及んだ工事の全工程が終了。これからも西野さんに阿部さんを鍛えてもらいましょう!
樹齢100年の巨木を伐採!
弟子入り最後の現場は、泉福寺というお寺。お寺の境内に生えた、樹齢およそ100年、高さ40m以上、直径は太いもので1mにも達する巨大なスギの伐倒です。この巨大なスギの影になり、境内にあるこのシダレザクラに日光が十分に当たっていません。そこでスギを伐って日の光を十分にあて、シダレザクラにより美しい花を咲かせたいというお寺からの依頼だったんです。
しかし、高さ40mを超える巨木の伐倒。当然、危険度は増します。まず木にワイヤーを巻き付け、それを、重機で引っ張り絶対に境内の方へ倒れないようにしてから西野さんが伐倒します!かつてない迫力に絶句する阿部さん…。しかし、修行を積みほとんど林業の男となっている阿部さんは、枝打ちと呼ばれる後処理を動じるこよなく自然と行っています。
そんな阿部さんに対し、西野さんが巨木の伐倒を任せてくれました!これは林業の男として、とても大きな財産となるはず!ここに伐採修行の全てをぶつけます!!しかし、今までに経験がないほどに太い幹。木が倒れる方向に入れる受け口に何度も何度もチェーンソーを入れ、細かく修正。最後は師匠の西野さんに見てもらい、続いて追い口を入れます。苦戦しますが、最後は阿部さんの手で巨木の伐倒完了!良い経験をさせて頂きました。
その後は西野さんが伐り続け、15本伐る予定の巨木は残り2本に。しかし、実は残る2本は道路の内側にあり、倒れて舗装道路を割る可能性があるため、つるし切りをしないといけないんです。高所作業車に乗り、ワイヤーをかけに行くのは、西野さんの息子、正彦さん。見学のため阿部さんも同乗します。
この高所作業車のアームは、最大で27mまでしか伸びません。しかし、ワイヤーはもっと高い場所にかけないと、伐り終えて宙ぶらりんになった時、木のバランスが崩れてしまう恐れがあります。するといきなり、正彦さんが衝撃の行動に!!なんと高所作業車から木に飛び移り、木登りを始めたんです!登っているのは高さ30mの木の上。
2本の命綱を交互に木にひっかけながらスピーディーに上っていきます。そして、目的の場所に到達。地上40m、体を支えるのは2本のロープのみという状況で、ワイヤーをかけ終わりました。行き着く暇もなく、高所作業車に戻ると、今度はそこから伐採。そして、巨大スギのつるし切り見事大成功!!とんでもないもの見せていただきました!!