放送内容

第1492回
2019.09.15
かがくの里・田舎暮らし の科学 場所・建物 自然・電波・鉱物・エネルギー

 荒れ果てた土地を切り開きかがくの力で豊かな里山をよみがえらせる長期実験企画それが、目がテンかがくの里。今年、里山の整備で出る間伐材を使って新たに取り組んでいるのが、炭焼きプロジェクト!その目標は、お肉や魚がとってもおいしく焼けるといわれる備長炭のような硬い炭!でも、その道のりは成功には程遠く、失敗の連続。果たして備長炭のような炭はできたんでしょうか?
 今回は、真夏に取り組んだ本格炭づくり熱いチャレンジを全てお見せします!

本格的な炭作りに挑戦

 そもそも、炭とは木の主成分である炭素、酸素、水素から炭素だけを残したもの。6月中旬。その原理は知っていても実際に炭を作ったことはない木材利用の専門家、村田先生と共にまずは試しに、近所に落ちていた枯れた竹を炭にしてみることに!
 その方法は、まず煙突を取り付けたオイル缶に竹をぎっちり詰め、土に埋めてから、その上で火を燃やします。
 ある程度火がついたら、空気口を開けたフタを閉め、ウチワで仰ぎます。すると、火の熱がオイル缶に回り、その熱で竹の中の酸素と水素が結び付いて、水蒸気となって蒸発。炭素だけが残るという仕組み。でも難しいのは、フタの空気口から入る空気がすくなすぎると熱源の火が消えてしまうし空気が入り過ぎると、火が中の竹まで届き燃え尽きて灰になってしまいます。炭を作るにはこの空気の微妙なさじ加減が大事。ここでいきなり大問題が!
 本来、蓋を閉めてうちわで仰ぎ、オイル缶に熱が回れば煙突が自然と空気の吸い込みをはじめるはずなんですが、四苦八苦。その時!地元の大工さんから煙突が短すぎるというアドバイスが。そして、アドバイス通り、煙突を長くしてみるとうまく吸気を始めたんです!煙突を長くすることで多くの空気が移動するので引き込む力が強くなったというわけ。その結果、竹炭作り実験は大成功!

 いよいよ里の間伐材を使っての炭づくり!でも村田先生が意気込む、硬い炭ってなんなの?話をきくため、阿部さんは村田先生が勤める京都大学へ!用意してあったのは、炭の中で最も硬いと言われる備長炭。備長炭は鉄鋼とほぼ同じ固さ。その特徴はなんといっても肉や魚をおいしく焼けること。硬い炭は炭素以外の不純物がほとんどなく、火が入っても炎は上がらず、熱を伝える遠赤外線が長時間出ます。遠赤外線は直火とは違い、お肉や魚の表面を焦がすことなく水分を飛ばして硬くすることができます。すると、中の肉汁などうま味をしっかり閉じ込めることができるというワケ。

 里では、ウナギを養殖しているし、どうせ作るなら、備長炭のような硬い炭。
こうした硬い炭を作るには2つ大事なことが!一つは炭にする木材。備長炭には、主にウバメガシというかたい木が使われますが、これは里にはないため、同じくらい硬いシラカシで代用。もう一つが、窯の温度。BBQなどでよく使われている炭は窯の温度が300℃~700℃の間で作られます。けれど、備長炭などの硬い炭を作るときは、窯の温度は1000℃近くに達するんです。高温にすると、不純物がなくなり炭素が整然と並ぶため硬く仕上げることができるんです。つまり、高温にできる窯さえあれば里でも備長炭に近い炭ができるはず。
 そこで、高温にできる窯を求め、村田先生と阿部さんが訪れたのは、京都市内にある工房「共創テクノ集団」。工房にしてはちょっと変わった名前ですが、実は遊園地などのアトラクションを作っているすごい会社。社長の上野さんは、村田先生のお友達ということで、先生は、高温窯の製作を依頼していたんです。
 その材料は、ドラム缶やペール缶、そして煙突です。ドラム缶を本体にして、竹炭の時よりも大きく、たくさんの炭が作れ、しかもより高温になる窯ができる予定。果たして、かたい本格炭作りうまくいくんでしょうか?

里の間伐材で本格的な炭は作れるのか!?

 いよいよ迎えた本格炭作り初日!実は、村田先生はもう一つ、窯を高温にする仕掛けを考えていました。まず合板を土に埋めて囲いを作りそこにドラム缶窯を入れます。
 ここで登場したのが、断熱材。

 これは、かがくの里ではおなじみ、ロケットストーブの内部にも入っているもので、熱を逃がさない優れものなんです。実は、村田先生、里でロケットストーブを見てこのように断熱材でドラム缶窯を囲えば、より熱が逃げない窯になるのではないかと思いついたそうです。
 そして、西野さんが持ってきたこちらが、里の間伐材シラカシ。炭として利用しやすい30cm程度にカットして準備完了。

 シラカシを窯の中に入れていきます。ドラム缶の底には木材から出る水分がたまるようにまた熱の通り口になるようにと、鉄製の網を置きます。その上になるべく隙間なくシラカシを敷き詰めてフタを閉めます。上からも熱が逃げないよう、土を被せれば、あとは火を入れるだけ。
 火を入れてすぐ、今回はあおいでいないのに、煙突が吸い込みを始めました。想定では窯の温度が徐々に上がり1時間ほどで300℃程度に達するはず。そこで次の工程へ進みます。
 しかし火をつけてわずか10分。窯の中の温度がいきなり300℃まで一気に上昇したんです。

 実は窯内の温度が350℃くらいになると木が炭になり始めます。けれどこの時、空気を送り込みすぎ、発火してしまうと炭にならず灰になってしまうんです。だから、空気口を狭めて量を制限し徐々に温度を高くしていくのが重要なんですが、村田先生、温度計を見るだけで何もしません。あまりに急に温度が上がったので、温度計が壊れたんじゃないかと疑っていたようなんです。
 迷っているうちに30分ほどが過ぎ、見る見るうちに窯内の温度は650℃越え。そこでようやく空気口を狭めました。次は白い煙が青くなったら、炭化が終わりに近づいたサイン。それを待ちます。先生の予想では6時間くらい。しかしここでも予想外の展開に。わずか2時間後、予想より4時間も早く青色に!!

 前回、竹で行った実験ではここで空気口を閉じ、火を止めましたが、先生は逆に、空気口を開けちゃいました。
 実はコレ、備長炭などの硬い炭を作るときに行われる“ねらし”という方法。高温になった炭をあえて空気に触れさせて周りだけを燃やしさらに温度を上げることで、中心の炭は硬くなるんです。空気を入れたことで温度は上がっていき、なんと860℃越え。最終的に891℃まで温度を上げたところで、炭が灰になってしまっては元も子もないとここでストップ。これで、窯の温度が冷める翌朝まで待機です。

 そして翌日、いよいよ窯出し。しかし、出てくるのはボロボロの炭ばかり。全て取り出してみましたが、硬い備長炭のような炭は一つもありませんでした。

 今回、火をつけた直後先生の予想以上に煙突効果と断熱効果が発揮され急激に温度が上がり、ボロボロの炭になってしまいました。プロジェクトはいきなり失敗。 

炭の出来栄えはいかに?

 失敗は成功の母!炭づくり2回戦!!空気の通りをあえて悪くするため、ドラム缶の底の鉄網をなくし、1回目よりもシラカシをギチギチに詰め煙突を縮めて、吸い込みも弱めました。これで、温度は急激に上がらないはず。10分ほどすると、1回目よりも温度上昇が抑えられています。そして30分後、今度は想定通り。ところが今度は、なかなか煙が青くなりません。一瞬、青くなるけど、すぐ白い煙に戻る、安定しない感じ。これは中の熱の周りが悪すぎるのか?そこで煙突を長くして空気の引き込みを強化。空気口も少し開け、ねらし工程へ。すると窯の中は800℃超え。前回は900℃近くまで待ちましたが、先生、失敗を怖がり、ここで窯を閉じました。あとは翌朝まで待機。
 運命の瞬間、本格炭焼き2回戦。今度は成功!?と思ったら、下の方にいくほど炭になっていないものが目立つように。 

 場所によって温度に差があったため、煙が安定しなかったようです。でも、少しずつですが着実に進んでいる本格炭づくり。それに、備長炭ほど硬い炭ではないものの1回目も2回目も使えない炭ではありません。

 なんと西野さん、できた炭を試すためにとイノシシ肉を持ってきてくれました。さらに、ヤマメまで。実はこれ、近所で養殖場を経営している西野さんの友人からこの日に頂いたもの。まず着火に使うのは1回目の炭。焼きすぎで、スカスカなのですぐに燃え尽きてしまいますが逆に火が入りやすいという利点が。着火したら2回目の炭を投入。すると、煙がでてきました。しばらくすると、炭なのに炎が出ちゃってます。これは不純物が多く、完全な炭になっていない証拠。でも、不完全な炭を外せばいい色に。所さんの大好物、イノシシ肉に、ヤマメ。じっくり火を通すと、しっかり焼きあがりました!!
 村田先生、収穫祭までに完璧な炭を作ると宣言!楽しみです!