第1558回 2021.01.17 |
人類はこう作った!丸木舟 の科学[Part1] | 物・その他 |
科学技術が発達し、便利な生活を送っている現代。しかし、そんな生活ができるのは、先人たちが様々な発見を積み重ねたからこそ!目がテン!が発明の原点に立ち返るこのシリーズ!人類はこう作った!
立ち上がったのは、劇団・ヨーロッパ企画の石田剛太さん!今回挑戦するのは舟!資料によると、人類が作った最も原始的な船の一つが、木をくり抜いて作る丸木舟。実際、日本では、7500年前の縄文時代に作られた丸木舟が出土しており、現在これが日本で見つかっている最古の船。
番組では、当時の船を再現するため、縄文人がつかっていた道具、石斧を使って丸木船を作ります!しかし、それはロケ日数18日という当初の予定を遥かに超える大掛かりなプロジェクトに発展。舟を完成させることはできるのか!?今回の目がテンは、人類はこう作った!第2弾!「縄文時代の舟を再現」です!
縄文時代の石斧体験
石田さんがやってきたのは山梨県甲州市。すると、不思議な格好の方を発見!冬なのに裸足。毛皮をまとっている雨宮さん。一体何をしている方なのか?
実は、雨宮さんは「縄文大工」。元々は伝統建築の宮大工をしていたのですが、昔の人が使っていた工具の素晴らしさに魅了され、さらに古い工具を手作りしているうちに、縄文人の生活の虜になってしまったという驚きの人物。
いろいろと質問したい心を抑え雨宮さんのご自宅へ。雨宮さんが住んでいるのは、4年前に建てた縄文風の小屋。気になる家は広さ3畳で、たき火ができるようになっています。丸太の寝床と小さな机があり、縄文人に近い環境で生活することができます。
そんな雨宮さん、丸木舟造りの経験があるそう。そこで、使う道具を見せてもらいました。今回の舟造りで最も活躍するのが石斧。
雨宮さんが使っているのは新潟県・糸魚川の河口付近で自分で拾ってきた蛇紋岩。銅と同じくらいの硬さがあり、縄文時代にも石斧に使われていました。これを、石と叩き合せて大まかな形を作ります。そして、砂岩に水を垂らして、石をこすりつけます。10分程度こすっていると、ガタガタだった石に、刃がつきました。これに枝をつけると石斧の完成です。
雨宮さんの使う石斧は、縄文時代に出土した石器を参考に作ったもの。20種類もの石斧を、シチュエーションごとに使い分け丸木舟を作ります。
縄文の生活を体験
縄文の道具を使いこなすには縄文の心を知る必要がある!ということで縄文生活を体験します。そこで、一緒に晩ご飯の準備を。すると雨宮さん、道で何かを拾い始めました。実はコレは縄文人も食べていたクルミ。
縄文時代は本格的な農耕は行なわれておらず、狩猟採集の生活をしていました。雨宮さんも、できるだけ穀物などをとらず木の実などを拾って主食にしているそう。縄文人も食べていたと考えられるヤマドリとクルミが今日の夕食です。
雨宮さんがヤマドリをさばいていきます。このときに使っているのも実は石。黒曜石という縄文時代にナイフとして使われた火成岩です。この縄文時代に使われていた石のナイフ。実はここには縄文人と舟との関わりが隠されていたのです。
そこで、考古学者の山田先生にお話を聞いてみました。山田先生によると黒曜石の産地の1つは伊豆諸島の神津島で様々な縄文遺跡から神津島産の黒曜石が出土しています。つまり縄文人は、丸木舟を使って黒曜石を取りに行くということをやっていたんです。神津島は伊豆半島から海を50kmほど隔てているので、縄文人は黒曜石を持ち帰るために舟を使っていたということになるんです。
そうこうしているうちに夕食の準備ができました。メニューはヤマドリの焼き鳥と、縄文土器で作った、クルミとヤマドリの鍋です。石田さん、自然と共生する縄文の心を学びました。
明日から、いよいよ船の制作に取り掛かります。
縄文の石斧で巨木を伐採!
翌朝。連れていかれたのは、同じ山梨県の都留市にある山。森の中で林業家の方と待ち合わせです。すると、抱えることができないほどの太さの杉が。計ってみると周囲224cm!直径およそ70cm。これが今回の丸木舟の材料になります。
しかし、縄文時代も舟に杉の木を使っていたのでしょうか?山田先生によると、1mくらいの太さの木であれば、それを舟に仕上げていたというのが縄文人の特徴。木の種類よりも、いい太さであることが大事だったといいます。倒木では丸木舟に適さないので縄文人も石斧で切り倒して加工していたと考えられます。
さあ作業を始める前に、感謝と安全祈願の祈りを捧げます。そして、安全を配慮して伐採の為の下準備を東林業の方達にお願いしました。斧を振るうのに大切な、安定した足場を組み、ワイヤーをかけます。こうすることで、木の倒れる方向を限定し事故を予防できるのです。さらに、木が倒れる際に縦に割れて人を傷つけないようバンドで補強。そして、ヘルメットをつけたら準備完了。
今回はまず谷側に大きく切り込みを入れ、その後、山側から切り込みを増やしていき、最終的には谷側へ倒す作戦です。
それでは石斧で伐採開始です。木が倒れるまでに何回打撃を加えたかを計測していきます。
5分ほど叩いたところで、100回。そして、始まって10分も経っていないのに、音を上げた石田さん。そこで作業を交代。力強く打ち付ける雨宮さんですが、石斧は壊れないのでしょうか?
実は、石は鉄と違い薄い刃をつくると欠けてしまいます。そのため、刃を厚くしなくてはいけません。さらに、ただ分厚いだけでなく、丸みを持っているのも特徴。丸く作っていると、その丸みで木の中をうまく摩擦を少なくして歯が入っていき、効率的に切り口が広がっていく。縄文人はそれをわかっていて歯を丸みをもって作っていたといいます。
そんなこんなやっているうちに、1000回。スタッフも手伝いながら、斧を振るうこと1日。次第に木が削れてきました。いつしか石田さんも上手にスイングできるように。ここで、日が暮れてきたので初日の作業は終了。
伐採2日目。力なく見えますが、早送りで見てみると、着実に進んでいることがわかります。そして、お昼を迎えた頃、ついに、木の中心まで切れ込みを入れることができました。
初日は5141回。2日目と足して9617回の打撃で、木の半分まで到達。
果たして木を切り倒すことができるのか?