放送内容

第1557回
2021.01.10
最先端重機 の科学 物・その他

 街づくりに欠かせない、私たちの暮らしを支える、縁の下の力持ち。それが、重工業に使われる大型機械、いわゆる「重機」!
 今日注目するのは、最先端重機。今、とてつもない進化を遂げているんです!
 2本の腕を持つ重機は、驚くほど器用?その実力を見るため、2本の腕で、カップラーメン作りにチャレンジ!さらに、雪深い山間の工事現場では、なんと自動運転の重機が!重機たちが、無人で工事を進める、すごい現場とは!?
 今回の目がテン!は、知られざる進化がいっぱい!「最先端重機」の科学です!

双腕重機「アスタコ」

 今回現場に向かったのは、かがくの里の畑を土壌改良するため、重機を運転する講習を受けていた阿部さん。訪ねたのは、茨城県ひたちなか市にある、日立建機の施設。
 現れたのは、腕が2本ある重機!双腕重機「アスタコ」!スペイン語で「ザリガニ」という意味です。

 確かにザリガニっぽいですが、左右の腕には別々のアタッチメントが付いていて、2つのことを同時にできるのが特徴。この2本の腕、どれほど器用に動かせるのか?実験してみましょう!
 片方でバットを持ち、もう片方で投げたボールを打てるのか?上からボールを落として打つ作戦!2度失敗しましたが、3度目で成功しました!
 続いては、なんとカップラーメン作り!ラーメンの容器は板に固定した状態で、フタを開けるところからチャレンジ!
 まずは、フタ開けるのに成功!そして、やかんを取り、お湯も入りました!

 最後にフタをのせれば、ミッションコンプリート!お見事!お湯も完璧な量!

 繊細な力加減のできる油圧の技術に加え、重機の腕と連動するレバーを開発したことで、これまでにない器用な動きを実現したアスタコ。その結果、片方でものをつかみながら、もう片方で切ったり、邪魔なものを持ち上げて、下にあるものを取るなどの動きができるように。手先のアタッチメントを変えれば様々な動きができ、その能力は、思わぬところで役立つことになりました。
 それは、東日本大震災。被災地のがれき処理の現場でした。絡まって大きな固まりになったがれきを片方で切って、もう片方で取り除くなど、アスタコならではの能力を発揮。その後、消防庁にも納入され、被災地などで活躍しています。

 さらに2018年、その進化型が登場!

 悪路が得意な足、クローラーが、おむすび型になっており、4つくっついています。4本足の動物のように、それぞれの足の高さを自由に変えることができます。
 例えば、目の前に障害物が!でも、この重機なら足が伸び、高さ90センチの障害物をなんなくクリア。さらに、傾斜に合わせて、後ろ足を伸ばし、車体を水平に保つ技。これで、傾斜や足場の悪い場所でも作業できます。

日本が生み出したインパクト大!の重機

 コマツが開発した、世界最大級のダンプトラック「930E」。全長15.6m、幅約9m、高さ約10m。3階建ての建物が動いているようなもので、タイヤも直径4m!街でよく見かける小型トラックは、重さ2トンほどですが、こちらは、その250倍の500トン。

 大きすぎて日本では活躍の場がなく、北米やブラジル、オーストラリアの鉱山などで働いているそうです。
 続いては、ビルの解体機「コベルコ建機 SK3500D」!作業できる高さは最大65m。アームの先端につけたカメラで、その高さを見てみると、足がすくむ高さ!ビルの21階ほどもある、世界一背の高い解体機として、ギネスに認定されたことも!
 普通、ある程度の高さの建物は、重機を屋上に上げて解体しますが、こちらは、アームを伸ばし、地上から直接解体できるため、安全性も向上。

 ちなみに、お値段は10億円。こちらの解体機は、現在は、狭い都市部でも作業ができるよう様々なサイズが作られて、日本各地で活躍中とのことです。

自動運転システム「クワッドアクセル」

 秋田県東成瀬村。こちらでは、高さ114.5メートル、東北地方有数の巨大ダムを建設中。ここで、世界で初めて、とある最新鋭の重機が、現場で稼働しているというんです。
 ところが、前日の大雪で、重機が動かせない状況に。現場の方々が力を尽くしてくれましたが、自然の力には勝てず、この日は残念ながら、重機が動くことはありませんでした。
 せめて近くでと、現場で重機を見学させてもらうことに。見た目は普通の重機ですが、実は、これらはすべて、無人で動く自動運転の重機!

 開発者責任者の三浦さんに詳しく教えてもらいました。
 三浦さんによると、これは遠隔操作ではなく、仕事の内容を与えるだけで、自分で自律的に作業を進める仕組みになっているそう。
 これは、鹿島建設が開発した、重機の自律・自動運転を活用した「クワッドアクセル」というシステム。管制室から、その日にどういう作業をするのかという施工計画データを重機に送信するだけで、それぞれの重機が連携しながら、決められた場所で順番通りに自動で作業を進めていきます。
 例えば、ダンプトラックが材料を運び、おろします。下ろされた材料の山を、ブルドーザーが均一にならしていきます。ならし終わった場所から、振動ローラがやってきて、固めていきます。この連携の繰り返しで、人がいちいち操作しなくても自動で工事が進んでいくのです。
 さらに全ての重機にGPSなどのセンサーがついていて、互いの位置や速度を把握。ダンプトラックが材料をおろして退出した、という動きを感知してからブルドーザーが動き出す、というように、現場の状況に合わせて重機同士が連携し、ぶつからないようにしています。
 遠隔操作は1台1台オペレーターが必要ですが、ここではオペレーター(ITパイロット)が見守って、ピーク時は23台の重機を5人で動かすことができるそう。人手不足が問題になっている今、少ない人数でも効率的に作業ができるこのシステムに、世界中が注目しているそうです。

 三浦さんによると、管制室はどこに置いてもいいので、日本から地球の裏側の工事もできる、逆に世界から日本の工事もできる。24時間ずっと工事ができる。それが最終的なゴールだといいます。
 さらに、この「クワッドアクセル」、すごいところで活躍しそうなんです。それは月!現在、JAXAと共同で計画されているのは、月面探査基地の建設。月面の有人探査には、人間が滞在するベースが必要。その拠点の建設工事を、地球にいたまま月面の重機に指示して無人で行えるということなんです。