放送内容

第1562回
2021.02.14
瞬間ハンター・四万十川 の科学[前編] 場所・建物 自然・電波・鉱物・エネルギー

 様々な条件が重なった時にのみ起こる美しい自然現象や、人が作り出す珍しい現象。そんなレアな現象の瞬間を撮影する“瞬間ハンター”。
 これまで冬にしか見られない屈斜路湖の貴重な瞬間や標高2000メートルの雪山の中にある氷の滝壺をハントしてきた金丸慎太郎さん。
 今回、訪れる場所は、広大な汽水域を持ち、多種多様な生き物を育む、高知県・四万十川。ここで、生き物に関するこの時期だけの貴重な瞬間を狙います!さらに、冬にしか見られない、たった数秒間の貴重な夕日の撮影にも挑戦!
 今回の目がテンは、12日間に及ぶ長期滞在で貴重な瞬間を狙いました!瞬間ハンター、四万十川、前編です!

四万十川で磁石につく石探し

 今回、金丸さんがハントするのは冬の四万十川で見られる様々な瞬間。早速、四万十川の下流域へ。訪れたのは、佐田沈下橋。沈下橋とは、増水時に川に沈むよう設計された欄干のない橋のこと。欄干がないことで、水の抵抗を受けにくい構造となり、流木なども引っかからないので、さらなる川の氾濫を防ぐことができるんです。さらに、自然に溶け込む沈下橋の風景は、人気の観光スポットにもなっているんです。
 そして、四万十川の魅力は、なんといってもきれいな水。

 実際に川に近づいて見てみると、確かに、透明度の高さがわかります。さらに、四万十川には、およそ200種類の魚と水生生物が生息していてこれは、全国トップレベルの種類を誇ります。
 四万十川の水がキレイな理由の一つとして考えられるのが、源流から下流の河口まで、大きなダムがなく川が分断されず、つながっていること。

 それを裏付ける、とある不思議な石がこの下流域にあるというんです。
 その石は、磁石にくっつく特性を持っているので、金丸さん、磁石を片手にその石を探します。探すこと20分。金丸さん、磁石にくっつく石を発見!
 この不思議な石の正体は、蛇紋岩。

 「人類はこう作った」で、石田剛太さんが、丸木舟を作ったときに使われていた石斧と同じ石。
 この蛇紋岩には、鉄分が多く含まれているため、磁石にくっつくのです。この蛇紋岩は、四万十川上流に多く堆積した石で、川が分断されていないため、石が下流まで流され、河原で簡単に拾うことができるのです。
 蛇紋岩が下流で拾えるのは、四万十川の上流と下流がつながっている証拠!この生き物が豊富なキレイな四万十川で、金丸さん、一体、どんな瞬間をハントできるのでしょうか。

四万十川の伝統漁「火振り漁」

 四万十川には様々な生き物が生息しており、それに合わせて、いくつもの伝統漁法が残っています。例えば、コロバシという筒の中に餌を入れ、川底に仕掛け、ウナギをとる「コロバシ漁」や、木の枝を束ね、それを川底に仕掛けて数日置き、それに集まるエビやカニなどを獲る「柴漬け漁」などあります。
 今回、金丸さんが行うのは、「火振り漁」という伝統漁。そのやり方を教えてくれる火振り漁師の岡村実さんを訪ねました。
 この火振り漁は、昭和初期から行われている四万十川の伝統漁。使う道具は、網と、長さ1mほどのたいまつ。川に網をしかけ、その網の中にいる鮎を、火の光と音で脅かし追い込んでいく漁法です。

 火振り漁は、夏と冬に行われ、冬は、落ち鮎という産卵期の鮎を狙います。この落ち鮎は、四万十川の冬の名物で、地元の人に愛されています。

 どうやってたいまつを振るのか、まずは、お手本を見せてもらいます。網に近づくと、重さ5キロのたいまつを大きく八の字に振ります。火が消えるまでの10分以上振り続ける体力が必要な伝統漁!
 しかも、たいまつを振る場所というのが船のへ先。実際の漁では揺れる船の上で行わなければなりません。果たして、無事、火振り漁を行い、鮎を獲ることはできるのでしょうか?
 午後6時、日は落ち、いよいよ漁が始まります。まずは、網を設置。たいまつに火をつけ、漁師さんのお手本をみます。大きく振ることで光が広範囲に届き、鮎を網に追い込んでいけるのです。

 そして、いよいよ金丸さんの出番です。まずは、たいまつを揺らし、網へ向かっていきます。そして、網に近づいたら、大きく八の字!何度もたいまつを振り、鮎を網に追い込んでいきます。

 漁を始めて、20分、果たして鮎はかかっているのか?
 網を引き上げると、ちゃんと鮎がかかっていました。金丸さん、落ち鮎をゲット!そして、金丸さんがとった落ち鮎と岡村さんが前の漁でとったものを調理。塩だけで煮る、塩煮という四万十市ならではの調理方法。

 この時期にしか食べることができない四万十市の郷土料理です。名物の塩煮も食べ、大満足の金丸さんでした!

冬にしか見られない「だるま夕日」をハント!

 この日、金丸さんは、四万十川から少し離れ、ある瞬間を狙うことに。訪れたのは、宿毛湾。この日、金丸さんが狙うのは、「だるま夕日」。
 宿毛市のガイドブックの表紙にもなり、さらに、日本の夕陽百選にも選ばれるなど、有名な絶景。だるま夕日とは、いわゆる蜃気楼の一つでだるまのような形に太陽が見える現象。
 海面上に冷たい空気と暖かい空気の層がある時、太陽の光に屈折が生じます。
 その際、人は、光が来た方にものがあると思い込んでしまうので、太陽が歪んで、だるまのような形に見えるのです。発生条件は、よく晴れた、冷え込みの厳しい冬の日。すべての条件が揃わないと見ることができないとてもレアな現象なんです!

 この日、気温は9度、空には雲がかかり、少し条件が良くありません。淡い期待を胸に抱き、太陽が沈むのを待ちます。
 時刻は午後4時50分、日の入りは、5時5分です。だるま夕日になるのは、10秒にも満たない短い時間。果たして、見られるのか!
 すると、 雲が少しかかってしまっていますが、水平線から太陽がせり上がり、だるまのような形になっています!
 金丸さん、見事、だるま夕日の瞬間ハントに成功です!