放送内容

第1561回
2021.02.07
ご当地うどん の科学 食べ物

 家にいながらいろんなものが手に入る便利な時代。なかでも、近年お家で手軽に作れ、保存もきくことから、乾麺や冷凍うどんなど麺類の需要が高まっているんです!そんな麺類の中でも注目なのが、「ご当地うどん」。ご当地うどんといえば、讃岐うどんや、稲庭うどんなど調べてみるとその数60種類以上!
 異なる風土で生まれた形も食感も様々なクセの強いご当地うどんを徹底調査!
 するとうどんの持つ驚きのポテンシャルの正体が明らかに!
 今回の目がテン!は、シンプルだけど奥深い!ご当地うどんの科学です!

日本一硬いご当地うどん

 日本各地に存在する様々なご当地うどん。どうしてこんなに違いがあるでしょうか?そこで訪ねたのは、うどんをはじめ小麦製品の専門家山田昌治先生。
 先生によると、日本にいろんな種類のうどんがあるのは、各地の小麦の種類と風土の違いによるもの。うどんは、小麦の選び方、生地のこね方、麺の太さや茹で方を工夫することで、非常に多様な食感や形状になるんです。
 その土地の気候風土や文化に合わせて独自の発達を遂げたというご当地うどん。
 今回は中でも、大きな特徴を持つご当地うどんの秘密に迫ってみます。

 ご当地うどんファイル➀ 歯ごたえに圧倒される!?吉田のうどん
 最初に取り上げるのは、山梨県富士吉田市の通称「吉田のうどん」。

 元祖と言われる老舗「桜井」さんに、熱心に通っていたというコネオ・インターナショナルさん。実は富士吉田市出身のコネオさん。多い時は週5回通っていたそう。
 コネオさんによると、吉田うどんは固くて弾力のある、筋トレうどん!?その真相を確かめるべく、早速歯ごたえに特徴のある吉田のうどんをお取り寄せして作ってみます。
 ずっしりと重たい麺を茹で、追い鰹を加えた醤油ベースの冷たい出汁を入れ茹でた麺を加えます。これに茹でたキャベツとすりだねというピリ辛の薬味を添えて吉田のうどんの完成です。果たしてどのような味なのでしょうか。
 食べてみると、今まで食べたことのない固さ!
 そこで、こんな実験。コシに定評のある同じ重さの讃岐うどんと吉田のうどん、どのくらい噛む回数に違いがあるのか調べてみます。噛む毎にカウントされる測定器を装着してそれぞれ食べ終わるまでの噛む回数を計ります。
 結果は讃岐うどん49回に対し、吉田のうどん96回。吉田のうどんの回数が倍近くに達しました。

 そこで今度は、双方の麺の歯ごたえを計測してみると、讃岐うどんは87キロパスカル、一方、吉田のうどんは348キロパスカル。なんと4倍以上吉田のうどんが歯ごたえがあるという結果に!

 うどんの歯ごたえを比較したグラフを見ても、他のうどんよりも群を抜いて規格外の歯ごたえを持つ吉田のうどん。どうしてこんなうどんになるのでしょうか?
 この歯ごたえの元はグルテン。小麦粉には、だいたい10パーセントくらいのタンパク質が含まれているのですが、この小麦粉のタンパク質は、水を加えてこねると弾力と粘りを持ったグルテンになります。
 小麦粉は主にタンパク質の量によって、強力粉、中力粉、薄力粉の3つに分類されます。通常うどんには中力粉を使用しますが、吉田のうどんは、よりタンパク質を多く含む強力粉をブレンドします。
 実際に、吉田のうどんからグルテンを取り出してみると、同量の讃岐うどんと比べてみると、吉田のうどんは、1.3倍グルテンの量が多いことがわかりました。

 さらに吉田のうどんは、生地をこねる時に2トン圧のプレス機を使って強力な圧力をかけ生地を練っているんです。グルテン構造を写した写真を見ても、その違いは一目瞭然!

 実は、この硬さがうどんの旨さに関係すると山田先生は言います。
 吉田のうどんはしっかりよく噛まないと飲み込めません。そこで、よく噛むことによって舌の味蕾という“うまみ”を感じるセンサーが、表面積の増えたグルテンと接触することによってうまみを感じやすくなるというんです。
 吉田のうどんは日本一の歯ごたえを持つ噛むほどおいしいうどんだったんです。

やわらかくてモチモチのご当地うどん

 ご当地うどんファイル② やわらかくてモチモチ!?筑後うどん

 福岡県と言えば博多ラーメンのイメージが強いですが、実はうどん・そばの発祥の地とも言われ多様なうどん文化が根付く地域。そしてその特徴は、やわらか~い麺。福岡県民が愛して止まない‘やわめん’の魅力とは?
 そこで、歯ごたえのあるうどんをこよなく愛するコネオさんに、やわめんを体験して貰いました。
 出迎えてくれたのは、うどんライターの井上こんさん。全国津々浦々、様々なうどんを食べてきたそうですが、中でも、その美味しさを知らなきゃもったいないと言うのが“やわらかいうどん”。
 ここで井上さん一押しの筑後うどんをコネオさんが初体験。
 するとコネオさん、うまいっす!モチモチしてて、食感が心地いい!と、思わず笑みがこぼれてしまいます。

 今回のうどんは、九州産のチクゴイズミという小麦から作られたもの。どうして、柔らかいだけでなくモチモチの食感になったのか?
 山田先生に聞いてみると、九州産の小麦粉の特徴は、タンパク質の量は少ないがデンプンの性質がアミロペクチンが多いこと。そのため、モチモチ感を感じるような、食感になっているといいます。
 小麦粉は、主にタンパク質とデンプンからできています。タンパク質は、先ほど登場したグルテンによって麺の弾力を生み出します。
 一方デンプンは、モチモチとした食感に関係しています。デンプンはブドウ糖がつながってできていますが、つながり方の違いによって、アミロースとアミロペクチンの2つに分かれます。アミロペクチンは枝分かれの多い構造。水とともに加熱すると枝と枝の間に水分子が入り込み、強い粘り気を発生します。
 ちなみに、お餅がよく伸びるのはこの性質によるもの。もち米のデンプンは100%アミロペクチン。
 チクゴイズミを使ったうどんは、このアミロペクチンの比率が77%と高いので、柔らかさの奥にモチモチ感を感じることができたんです。
 実際に筑後うどんを破断試験機で計測。日本一歯ごたえのある吉田のうどんを比べると筑後うどんは麺を噛み切るまでにかかる力が、なだらかで一定にかかり続けていることが分かります。これがモチモチ感の証。

 柔らかさの奥にモチモチ感を秘めていた筑後うどん。 あらためてご当地うどんの奥深さを感じました。

とっても平たいご当地うどん

 ご当地うどんファイル③ 平たくてつるつる!?ひもかわうどん

 群馬県桐生市の名物ひもかわうどん。こちらは、うどんというよりまるで包帯のような形状の麺。山田先生によれば、この幅広の麺の形状が、うどんとしての美味しさにも影響しているといいます。
 薄くて平べったいことでつゆがよく絡み、麺をすするときに表面につゆの層があるのでつるっとした食感になるんです。
 そこで、一般的なうどんに比べてひもかわうどんは、どのくらいつゆのからみ方に違いがあるのか検証してみます。
 同じ180gのひもかわうどんとさぬきうどんを用意。つゆの分量も、どちらも200mlに統一します。
 参加する人には、何も伝えず、ひもかわうどんと讃岐うどんをそれぞれ完食してもらいます。今回は3人に参加してもらい食後、残ったつゆから、麺に絡んだつゆの量を導きます。
 すると3人ともひもかわうどんの方が絡んだつゆの量が多いという結果に。

 やはり、ひもかわうどんは、つゆがより多く絡むうどんだったんです。

 同じ1gのひも状の麺と、平たい麺の表面積を見ると、薄く平たい方がたくさんのつゆと接することがわかります。
 つゆとの相性からごまだれにつける食べ方や、カレー南蛮ひもかわも人気です。
 麺の幅を変えることで、様々なつゆで楽しめるご当地うどんだったんです。