放送内容

第1614回
2022.02.27
かがくの里 の科学 場所・建物 地上の動物 物・その他 食べ物

 はじまりは今から8年前。放置され、人の手が入らず荒れ果てた土地を、多くの科学者たちの知恵と地元の方の力で耕し整備すると、今や田畑は豊かに実り、様々な生き物たちが姿を現す、緑豊かな場所へ!8年目に突入したかがくの里は、今年も様々なチャレンジに大盛りあがり!
 里で育てた芋がらを使って昔ながらのけんちん汁作り!ニホンミツバチ養蜂プロジェクトで事件が!かがくの里、ハプニングスペシャル!

ニホンミツバチに異変が!?

 2019年から本格始動したニホンミツバチ養蜂プロジェクト。去年は阿部さんが冬のニホンミツバチに密着。すると、越冬するためのすごい技が見られました!多くの昆虫は土の中や木の隙間で寒さを避け越冬します。しかし、ニホンミツバチは集めたハチミツをエネルギーに体を発熱させる、“越冬蜂球”で冬を越すんです。ニホンミツバチだけが持つ、寒い冬を越すための技を目撃できました。さらに、この時ハチの巣は2群あったんですが、数の少ない勢力の弱い群れを、隣の群れが襲ったことも。盗む蜂と書いて“盗蜂”と言い、これも蜜の少ない冬を乗り切るニホンミツバチの術。
 そして、厳しい冬を乗り越えた二ホンミツバチの一群。春には、分蜂がおきます。「分蜂」とは、働きバチの数が増えて、巣がいっぱいになると起きる巣分かれのこと。元いた女王蜂が、新しい女王蜂に巣と働きバチ半分を譲るんですが、ハチの数が多いと、一度の分蜂だけでなく、2回起きることが稀にあるそうで、そのまさかの2度の分蜂がかがくの里でも発生。分蜂した群れは、西野さんの力を借り、空いている巣箱にうつすと見事、定着!かがくの里の群れは全部で3群になりました!

 そして3つに分かれたハチの群れの中で、最もすごかったのが長女の分蜂群。分蜂から1か月にもかかわらず、長女の女王バチの群れがものすごいペースで巣を拡大し、巨大化。ハチはおよそ2万匹に!結局、3回の増築をおこない、巣板の長さは85cmになったんです。

 そして9月、外敵のスズメバチが現れるシーズン。ニホンミツバチはまたしてもすごい術を見せたんです。それが、振身行動とよばれる撃退法。天敵であるスズメバチから巣を守るため腹部を震わせて追い払おうとするんです。そんな、数々の“生きる術”を見せてきたニホンミツバチ。収穫祭では巣の上の部分のハチミツを少しだけいただきました。ニホンミツバチは巣箱の下の方で子育てしているため最上部を切り取っても問題ないんです。
 取ったのは85cmの巣板の上、20cm分。

 小野先生も、残った巣とハチミツで十分冬は越せる、と話していたのですが…その後、予想もしない異変が。
 収穫祭から1月後、小野先生が異変に気付きました。ハチの出入りがなく、巣の入り口にミツバチの排泄物があるといいます。さらに、飛べないハチが歩いていると。
 たしかに巣の周りには、ヨタヨタと歩くハチが。一体何が起きているのか?中の写真を撮ってみると、わずか1ヶ月前は2万匹近くいたハチが激減!
 小野先生によると、天敵に寄生されてしまって、ハチの勢力が落ちてしまった可能性があるといます。さらに、2万匹近くいた働きバチが、わずかな期間にほとんどいなくなるのはちょっと考えづらく。スズメバチの飛来によるストレスのようなものが引き金になって、巣を捨ててハチが逃げてしまったとか、そういった可能性も捨てきれないそう。
 そして1週間後、悲しいことに巣は全滅。

 小野先生は、飼育してるといっても野生のミツバチ、100%管理するのは、なかなか難しい。そういった中で、ひとつだけではなくて、複数のハチの巣を管理することで、どれかひとつダメになってもどれかひとつ生き残って、来年またその巣から2群3群の分蜂が起こって、その年の春の花、夏の花を集めて巣がどんどん成長していく、そういうようなものも楽しみながらハチと付き合っていくことが自然とのこと。
 里には元気な群れも残っており、順調に成長中。この群れが様々な外敵に襲われることなく、無事、冬を越せるよう見守っていきます。

蜜ロウキャンドル作りに挑戦!

 今回、残念ながらミツバチがいなくなってしまった巣の巣板、そして収穫祭で蜜を絞った後の巣板を使って、ある素敵なものが作れるそう。
 そこで、登場したのは、阿部さんの事務所の後輩、お笑いコンビ“大吟嬢”の五島麻依子さん。五島さん、実は、農業大学で学び、酪農経験もあり、かがくの里での活躍を期待して、阿部さんと同じく、里の専任プレゼンターとして参加してもらうことに。
 そんな五島さんの里での初仕事は、ハチの巣からロウソクづくり。ハチミツを貯蔵したり、幼虫を育てたりする蜂の巣の巣板。そもそもその材料は、働きバチが腹部の分泌腺から出すロウ。働きバチが蓄えていたハチミツを食べると、その一部が体内で変化。蜜ろう、正式にはハチロウと呼ばれるロウになるんです。そのため、巣から、ロウソクを作ることができるんです。

 日本では1300年ほど前、奈良時代の頃にろうそくとして使っていた記録があります。現在では、市販されている蜜ロウの多くは、養蜂されたセイヨウミツバチのもの。巣の数が少ない、野生のニホンミツバチの蜜ロウは貴重。そんな蜜ロウのロウソク、挑戦してみましょう。
 まずは、サラシの布の袋に入れて煮ます。巣板にはたくさんの固形物のゴミが入っているため取り除く必要があります。ポイントは、ロウが解ける温度は65℃なので沸騰する必要がないこと。ロウはおよそ65℃になると、サラシの隙間から黄色い粒になって溶け出てきます。そして水で冷やすこと30分。厚さ2cmほどの蜜ろうの板ができました。

 これで純粋なロウだけが取れたので、後はこれを砕いて溶かしていき、型に溶けたロウを流し込みます。
 15分後。型を外すと、貴重なニホンミツバチの蜜ろうキャンドルの出来上がりました。

 蜜ロウは、甘い香りにリラックス効果があるとアロマキャンドルにも使われています。ハチミツを取った後、本来は捨ててしまう巣板からこんなにも素敵なキャンドルができました。さらに、ロウソクを作った時に出た残渣。これも、野菜の肥料になるんです。ニホンミツバチの巣は、ハチミツをとった後も、まさに捨てるところのない、役立つものだったんです!

芋がらのけんちん汁作り!

 調理科学の専門家、露久保先生と一緒に料理にチャレンジ。使うのは、里で育てたやつがしらの茎を干したもの。去年の収穫祭で、所さんにたくさん収穫してもらいました!あの時はお味噌汁に入れていただきましたが、実は、茎の部分も、手間をかければ美味しく食べることができるんです!
 昔から、野菜を乾燥させ保存しながら食べて生活していた日本人。保存がしやすく栄養価も高く“芋がら”などと呼ばれ特に重宝されたそうで、戦国時代、縄としても使えて、保存食にもなると重宝されたんだそう。

 かがくの里のある茨城県では“芋がら”は郷土料理にも使われています。
 収穫祭のあと、かがくの里でも、えぐみのもとである茎の皮を剥がし、1ヶ月ほど乾燥させていました。

 ということで、今回は、芋がらのけんちん汁作りスタート!
 けんちん汁は、お寺発祥という一説もある精進料理。そこで、全て植物由来のものを使って調理します。
 まずは、乾燥状態ではとても食べられそうもないので芋がらを水に漬けて、1時間ほどおいておきます。
 次にざく切りした他の野菜や、こんにゃくとともに水で戻した芋がらを炒め、火が通ったら、昆布だしを入れて煮込みます。最後に醤油で味を調節したら、かがくの里で育てた、里芋の芋がらがたっぷり入ったけんちん汁の完成です!

 五島さん、初めての芋がらは、周りシャキシャキで、中はジュワッとしみてて、めちゃくちゃ美味しいと大成功でした!芋がらのけんちん汁、里の新たな冬の恵みです。