放送内容

第1613回
2022.02.20
かがくの里 の科学 場所・建物 自然・電波・鉱物・エネルギー 地上の動物

 始まりは今から8年前。放置され、人の手が入らず荒れ果てた土地を、多くの科学者たちの知恵と地元の方の力で耕し整備すると、今や田畑は豊かに実り様々な生き物たちが姿を現す、緑豊かな場所へ!
 8年目にして初の試み!専門家を招いて、望遠鏡を使った冬の天体観測!さらに、去年からフクロウの巣箱を頻繁に訪れているムササビが滑空する、貴重な姿の撮影に成功!
 今回のかがくの里は、冬の天体観測とムササビスペシャルです!

かがくの里初!冬の天体観測

 1月初旬。里に来てくれたのは、茨城大学の百瀬先生と研究員を務める田辺さん。百瀬先生は、電波望遠鏡という巨大な望遠鏡で、星からの電波を観測。星や惑星がどのように誕生するのかという謎に迫ってきた天文学のスペシャリストです。百瀬先生に、かがくの里は天体観測の場としてどうなのか聞いてみると、周辺には民家などの光が無く、畑の方が開けていて空が広く、天体観測にはうってつけとのこと。

 ということで、まずは天体望遠鏡をセッティング。今回は写真を撮るための望遠鏡と、肉眼で観察するためのもの、2種類を用意しました!
 夜9時、かがくの里初めての冬の天体観測スタートです。冬は明るい星が多い時期。早速、ベテルギウス・シリウス・プロキオン、結ぶと冬の大三角になる星を見ることができました。

 でもなぜ、星によって色が違うのでしょうか?非常に明るく赤く見えるベテルギウスは温度が低く、およそ3300℃。それに対して、リゲルはおよそ1万2000℃。実は、自ら輝く恒星の温度が違うことで色の違いとして識別できるんです。太陽のように、自ら輝く星を恒星といいます。恒星は、宇宙のガスやチリが集まって生まれ、長い時間をかけて膨らみ、やがて死んでいきます。ベテルギウスが赤いのは、年老いて膨らみ、表面温度がさがっているから。いずれ消えてしまう星なんだそうです。
 さらにオリオン座の方向には、まさに星が生まれている場所があるといいます!その部分を天体望遠鏡に繋げたカメラで撮影。すると、オリオン大星雲と呼ばれるガスで覆われ輝いた雲のように見える天体が。このガスが重力で圧縮されることで次第に温度が上がり、核融合反応が起こることで星が新たに誕生するそうです。

 続いて月を観察します。すると、光が当たっていない暗い側も完全には暗くなっていません。

 これは、地球照という現象のせい。地球照とは、太陽の光が地球で反射、その光が月まで届き、太陽が当たらない暗い部分に当たります。その結果、直接太陽が当たっていない暗い部分もうっすら見ることができるんです。百瀬先生によると、空気が乾燥して澄んでいる冬であれば、肉眼でも観察できるそうです。

 続いては、木星。

 木星は、直径で地球の11倍、太陽系最大の惑星です。太陽の周りを回る8つの惑星の中で、木星は太陽から5番目の惑星。地球とは、6億から9億km離れています。木星は、10時間に一回というスピードで回転している影響で、数千kmにも及ぶ、ぶ厚いガスの層が高速で流れているため、縞模様に見えるんです。
 また、木星には、地球で言う月のような「衛星」が50個以上確認されていて、中でもカリスト・イオ・エウロパ・ガニメデは市販の天体望遠鏡でも見ることが出来ます。実はこの4つの衛星を発見したのはあの17世紀の天文学者ガリレオ・ガリレイ。ガリレオは人類で初めて本格的な天体観測を行い、自作した天体望遠鏡で木星の4つの衛星を発見しました。現在、この4つは「ガリレオ衛星」とも呼ばれています。

 続いては太陽系を越え、さらに銀河系の先の観察を行っていきます!地球がある太陽系は、天の川銀河と呼ばれる星の集団に属しています。そして宇宙には、様々な種類の銀河が数千億個以上あるとされているのですが、そのひとつを観察することが出来ました。
 それが、アンドロメダ銀河。

 アンドロメダ銀河は、太陽のような自ら光を放つ「恒星」が渦を巻くように1000億個以上集まったもの。アンドロメダ銀河は一番近くの銀河のひとつなんですが、地球からの距離は、光で230万年かかります。そのため230万年前に出発した光が、今この瞬間に届いているんです。
 冬のかがくの里でのはじめての天体観測、たくさんの発見がありました!

ムササビの貴重な姿を撮影成功

 最近フクロウの巣箱によく現れているムササビ。実は、夕方5時頃になると、背の高い杉の木から、屋根付きの小屋を横切り、奥の樫の木へと滑空する姿が度々目撃されていたのですが、なんとその撮影に成功したんです。

 そこで、哺乳類の専門家後藤先生に話を聞いてみることに!後藤先生は茨城県の哺乳類の行動を調査していて、タヌキやアライグマ、ムササビの生態などに詳しい哺乳類の専門家!そこで、4月からフクロウの巣箱にちょくちょく現れているムササビの行動について、映像から分析してもらいました。
 まずは、2021年の4月27日の映像。好奇心を持っていろいろ探りながら行動している様子が見えるといいます。実は、ムササビの巣は一つだけではないそうで他に快適な巣があれば使いたいと、探しに来たのではないかといいます。

 続いては2021年9月8日の映像。巣箱の中に入った後、突然でんぐり返しをして寝転んだムササビ。先生によると、この行動はエサを食べた後、休憩をするためにこの巣箱に立ち寄ったのではないかと推測。

 さらに後藤先生は、映像に一瞬映ったあることを見逃しませんでした!なんと、お腹の辺りに乳首らしきものが見えたかもしれないとのこと。だとすればメスの可能性が。

 ともあれこのムササビは、かなりフクロウの巣箱が気に入った様子です!
 続いて、2021年12月の映像。この映像には、2匹のムササビの姿が。実は、ムササビの繁殖期は6月頃と12月頃の年2回。この2匹はカップルの可能性があるんですが、そこにはムササビ特有の生態が。実はムササビのメス、繁殖期の中で発情するのはたった1日で、その1日に、複数のオスと交尾を行うそう。オスはその1日を逃さないために、他のオスと戦いながらメスに密着するといいます。
 そして、片方のムササビが小さくも見えるので、子育て中の親子の可能性もあるといいます。オスは子育てを行わないため母親と子供かもしれないとのこと。

 さらに、滑空の映像から、ある事実が判明!なんとムササビが飛び出した大きな杉の木に、巣穴が間違いなくあるといいます。生態が規則正しいというムササビ、同じような時間に同じ木から何度も飛び立っていることから、この木に巣穴があると考えられるそうです。
 先生によると、かがくの里の裏山は、ムササビにとっても暮らしやすい環境だと言います。これからも色々、面白い生態が撮れそうです!