第1626回 2022.05.22 |
いかちゃんの残したい〜トコロ!伊豆わさび編 | 場所・建物 自然・電波・鉱物・エネルギー |
日本各地に存在する、里地里山、そして伝統的な農業、林業、漁業を今もなお、守り続ける地域。そんな後世に残すべき日本の文化や風景を再発見!「いかちゃんの残したい〜トコロ!」
今回訪れた場所は、静岡県。静岡県にある、水わさびの伝統栽培をする地域は、世界農業遺産に認定されているんです。そんなわさび田でいかちゃんが農業体験!さらに!わさび田が周辺の自然環境を保全していた!?
今回の目がテンは、いかちゃんの残したい〜トコロ!静岡県 わさび栽培地域編です!
わさび田で農業体験
国連の食糧農業機関により認定された世界農業遺産、静岡県のわさび栽培地域。わさびは日本原産のアブラナ科の植物。わさび栽培の歴史は、現在の静岡市の有東木地区で、およそ400年前から始まりました。その後、江戸中期に伊豆地域へと伝わり、明治中期に新しい栽培方法が考案され、静岡県内、そして、全国へと広がっていったのです。
ということで!実家が、魚料理のお店で、わさびに縁があるいかちゃんが、その新しい栽培方法が生まれた伊豆で、わさびの伝統栽培を体験!
お会いしたのは、伊豆で、代々わさびを栽培している浅田利哉さん。わさびは栽培方法によって、「畑わさび」、「水わさび」と分けられ、畑で栽培する畑わさびは、主に葉や茎をおひたしや加工品にして食べます。一方、水わさびは、湧き水を利用した栽培で、主に根茎をすりおろして食べます。ここ静岡では、棚田状のわさび田で、豊富な湧き水を使い、水わさびを栽培。その生産量は、なんと日本一なんです。
わさびを作るのに最初に行うのは、1本1本、手作業で苗を植えていくこと。苗は、畑で種から育てたものと、収穫したわさびから株分けしたものがあります。
でもなぜ静岡で、水わさびの栽培が発展したのでしょうか。実は、わさびの生育適温は、9〜16℃。こちらのわさび田の湧水の温度は12~13℃で、1年間安定しているので、1年中収穫できるんです。さらに、田んぼ自体にも大きな秘密があるんです。もともと沢だった場所を開墾し、わさび田をつくり、その後棚田状にした上の段から下の段へ水を流すという畳石式という方式になっています。畳石式は、下から大、中、小の石を積み上げて、一番上に細かい砂を置き、その表層にわさびを栽培する構造なんです。
この石の積み方をすることにより、他のわさび田にもいい影響があります。わさび田で使われる湧き水は、表面を流れるとともに内部の下の層まで浸透していきます。積み上げた石によって、不純物が取り除かれるため、さらに下のわさび田に、キレイな水のまま供給できるのです。
そして、収穫も体験!砂の中に埋まっているわさびを、根ごとあげたら、水で砂利を洗い流します。
わさびは環境に優しい作物。農薬も肥料もほとんど使いません。そのため、水をキレイに維持するための農家さんたちが努力をしています。
環境に優しいわさび田を守るため、代々受け継がれてきた伝統栽培だったんです。
わさび田と生物多様性
山からの豊富な湧き水で育つ、静岡のわさび。肥料や農薬をほとんど使わず環境負荷が低いためわさび田周辺には、自然豊かな環境が残っています。さらに、生物多様性の保全にも関係しているんです。
では、わさび田周辺には、一体どんな生き物がいるのでしょうか?お会いしたのは、環境省に登録されている環境カウンセラーとして、わさび田周辺の生き物調査を行っている塩谷和広さん。訪れたのは、わさび田の下流にある川。川底にある石を広い、その石にくっついている水生昆虫を探します。
早速見つけたのは、小さな水生昆虫「エルモンヒラタカゲロウ」。
カゲロウの仲間の幼虫で、キレイな水と、酸素の多いところしか棲めない昆虫です。これは、自分でエラを動かすことができないため、水に体をぶつけて、水の中の酸素を吸っているんです。
そして、この昆虫はきれいな水の指標生物だといます。指標生物とは、その生物の種類や数を調べ、河川の汚れ程度を判定するための生き物。水質の評価は4段階に分かれており数が大きくなるにつれて、水質が汚れていきます。
「エルモンヒラタカゲロウ」は、きれいな水とされる水質階級1の水に棲む水生生物なんです。
続いて見つけたのは、「ヘビトンボ」の幼虫。
こちらも、水質階級1の指標生物。首がグネグネと動き、肉食で、大あごで噛み付く習性があることからヘビトンボと言われています。
さらに、こんな変わった生き物も。小さな石の粒の中にいる「ヤマトビケラ属」の幼虫。
自分の体を守ることと、自分が流されないため石にくっついているんです。そして、このヤマトビケラ属も、きれいな水の指標生物です。
このように生物多様性が保たれているのは、人の営みであるわさび田が、豊かな自然と共生し持続可能な栽培が行われているから。
さらに、わさび田の下流地域では、わさび田を抜けたキレイな水をそのまま使い、アマゴを育てています。また、水田などの農業用水としても利用。この水の流れが、わさび田、そして周辺の豊かな自然環境を育んでいたんです。
いかちゃんのわさび料理
わさび田で収穫を体験した、いかちゃん。わさび農家の浅田さんに、わさびの料理について聞いてみると、お刺身や蕎麦などばかりで、新しいものを作って食べたりはしないといいます。
そこで、実家が魚料理のお店で調理師免許を持ついかちゃんが、新たな名物になるオリジナル料理に挑戦!
いかちゃん、まずは、静岡県のわさび料理をリサーチ。まずは、静岡県の名物、わさび丼。さらに、わさびを練り込んだわさびソフトクリーム。名物料理を考案するため、いかちゃん、熱心に研究します。
自宅に帰ってからは、料理を試作。エビチリにわさびを追加したエビチリならぬ、「エビわさ」、「わさびの生春巻き」「わさび鶏肉巻き」「ポテトサラダ」など、わさびを使った様々な試作品を作っていきます。
そしてついに、世界農業遺産のわさびを使ったいかちゃんオリジナル料理が完成!完成した料理とは「わさびわらび餅」。
わらび餅にわさびを練り込み、上にきなこをかけて、練乳とわさびを合わせた練乳わさびソースがかかっています。
この「わさびわらび餅」、伊豆市農林水産課わさび担当の宮内さんに試食してもらうと、高い評価をもらえました!さらに、わさび農家の浅田さんにも食べてもらったところ、「おいしいです。わさび料理として認定したい」とわさび農家さんお墨付きをもらいました!いかちゃんのわさびわらび餅、新たな名物になるかもしれません!