放送内容

第1658回
2023.01.15
ココア の科学 食べ物 植物

 甘くて、温かくて、飲むとホッとする冬に人気の「ココア」。ココアはチョコレートの原料と同じカカオ豆からできています。でもカカオってどんな植物?カカオの不思議な生態を国内の農園で調査!そして、カカオの実からココア作りに挑戦!実はココアを作るのはとてつもなく大変だった!?さらに!ココアにはまだまだ可能性が!なんと麻婆豆腐にココア!?
 今回は、甘くてほっこり、ココアを科学します!

ココアの原料カカオとは?

 今回向かったのは沖縄。なんと日本でも栽培しているということで、沖縄の農園にお邪魔します。出迎えてくれたのは、OKINAWA CACAO代表の川合径さん。沖縄の名産品とかけ合わせたチョコレートを販売しているこちら、販売とは別に、国産のカカオ栽培にも挑戦中なんです!
 実は、カカオには非常に厳しい生育条件があり、真冬でも16度以下にならず年間の雨量が1500mm以上と高温多湿地帯であることが最低条件。その条件がそろうのが、カカオベルトと呼ばれる北緯20度~南緯20度の範囲。しかし、沖縄は北緯26度程度で、その生育地域には入っていないんです。

 栽培適地ではない沖縄でカカオを育てるため、川合さんは農業用ハウスを利用することで冬でも温度が下がらないように工夫を重ねているんです。
 ハウスの一つを見学させてもらいます。すると、握りこぶしよりちょっと大きいカカオの実が。この実の中に入っている種子が、あのカカオ豆なんです。カカオは幹生花と呼ばれる、幹に直接花を咲かせ、実がなる植物。植物全体をみてもとても珍しい生態なんです。

 カカオの実がなるのは植えてから4年目からといわれ、こちらの農園では2016年から栽培を開始、5年目の2020年に初めて実をつけました。
 計8棟あるハウスで50本ほどのカカオが順調に育っており、取材を行った11月は12月からの収穫時期に向けて実が熟し始めているところ。
 さらに沖縄で採れた種子から苗も育てていました。この地に適応するカカオの木を増やし、収穫量を上げるためにも苗づくりから試行錯誤して取り組んでいます。
 さまざまな壁を乗り越えて、挑戦し続ける沖縄でのカカオ栽培。努力が実を結ぶといいですね。

カカオ豆からココア作り!

 ココアはどの様に作られるのか?お招きしたのは、カカオやチョコレートに詳しい広島大学名誉教授の佐藤清隆先生。今回は、沖縄の農園から採れたてのカカオを特別に送ってもらいました。

 まずは、かたい皮に包丁で一周5mmほど切れ込みを入れ中身を引っ張り出します。すると、実の中には白い果肉に包まれたカカオ豆が!一つの実におよそ20~50個入っています。

 ほのかに甘い香りがします。さらに果肉部分が食べられるということで、人生で初めて、カカオの実を試食。そのお味は、ライチやマンゴーのようなフルーティーな味。
 多くのカカオ農園では、収穫後、カカオ豆の発酵・乾燥を行い、その後出荷します。発酵は、果肉ごとバナナの葉に包んだり、木箱に入れたりして、およそ1週間かけて行われます。発酵することで、苦味や渋みを抑え、香りのもととなる成分が生まれるんです。
 先ほど食べた果肉の甘さが大事で、その糖分で育つ微生物によって発酵が進みます。微生物自体は人の手や実を割るナイフ、木箱やバナナの葉に生息しているもの。発酵し乾燥させたカカオ豆は、水分が8%以下になった状態で出荷され、ご家庭でも購入できるようになります。

 今回は、ベトナムの農園産の 発酵と乾燥を済ませたカカオ豆を用意してココアパウダーづくりに挑戦します!
 まず、水洗いしたカカオ豆をフライパンに入れロースト。豆の温度を130℃前後にして20分間行います。ローストの次は皮むき。こうして胚乳の部分だけを残したものをカカオニブと呼びます。次は、ひたすらすりつぶしていきます!今回はミキサーとすり鉢で作業を行います。ここで重要なのは、40度程度に温めたすり鉢を使うこと。あとはひたすら力を込めてすりつぶします。もくもくと作業を続けていくと、なんと水分を加えていないのにどろどろし始めました。

 なぜこのように変化したのか?その理由はカカオに含まれる脂肪分にあります。カカオ豆の脂肪分はココアバターと呼ばれ、およそ33度で溶ける性質があります。温かいすり鉢を使ったため、脂肪分が溶け、ドロッとした状態に変化したんです。
 カカオニブをすりつぶしてできた液体は、カカオリカーと呼ばれます。これに砂糖や粉乳を加えて固めると、チョコレートに。カカオリカーから脂を分離したものがココアになるのです。

 カカオリカーから脂肪分を抜くには、高い圧力をかけ、目の細かいフィルターでひたすらこす必要があります。現代では、搾油機で圧力を加えて搾りだしますが、ココアパウダーが開発された当時は16人がかりで圧力をかける装置を使い絞っていたんです。
 今回は専用の搾油機で分離しました。圧力をかけるとココアバターが絞り出され残ったものが塊で出てきました。ちなみにココアバターに砂糖と粉乳を混ぜればあのホワイトチョコレートになるんです。一方、強い圧力によって押し固められたのが、ココアの塊。
 ここからココアパウダーにするためにハンマーで砕いていきます!ある程度砕いたらおろし金でさらに細かくします。最後はふるいにかけて、カカオ豆の状態から5時間、さらさらのココアパウダーがついに完成!このココアパウダーで砂糖と牛乳を加えてミルクココアを作りました。

ココアの可能性を広げるココアアレンジ料理!

 カカオポリフェノール、食物繊維が豊富、カフェインレスなどさまざまな効果が期待されるココア。今回そんなココアを飲料・スイーツ以外にも活用すべく、アレンジレシピを開発します!
 ご協力していただくのは、かがくの里でもおなじみ調理科学の専門家 露久保先生。使用するのは、砂糖や乳成品などが含まれていない市販のピュアココア。単体だと苦いココア、どんな料理にあうのでしょうか?露久保先生によると、スパイスなど味の強いものと合わせると、味に深みを出してくれる期待ができるといいます。
 ということで、今回挑戦したのがスパイスたっぷり、ココア麻婆豆腐!果たして、甜麺醤に豆板醤、花椒などが入る、本格四川麻婆豆腐とココアは合うのか?

 まず豆腐・ネギの下準備をおこないます。ココアはスパイス類と一緒に事前に混ぜておくのがポイント。次に、炒めたひき肉にココア入りスパイスを加えます。比較のため、ココアパウダーをいれないものを露久保先生に作っていただきます。残りの材料を加え炒め、最後に花椒を振ったら、ココア麻婆豆腐の完成です!

 さらに、自由な発想のもとどんどん試作。続いては、なんと白みそにココアを投入!?「ココアふろふき大根」が完成!

 スタジオでは、露久保先生と一緒に開発した「ココア麻婆豆腐」と「ココアふろふき大根」が登場。所さんも試食したところ、ココア麻婆豆腐は「おいしい」と高評価、ココアふろふき大根は「なしではない」という感想でした!