放送内容

第1678回
2023.06.04
かがくの里 の科学 場所・建物 地上の動物

 長期実験企画かがくの里で続けてきたのがフクロウプロジェクト。去年、里で2羽のフクロウのヒナが巣立ったことは確認できたものの卵自体も、ビナが育つ過程も、撮影出来ませんでした。
 しかし、今年の春ついに!里の巣箱に、フクロウの卵が?!
 今回の目がテンは、「かがくの里でフクロウが卵を産んだぞ」スペシャルです!

フクロウプロジェクト3年半の軌跡

 フクロウプロジェクトが始まったのは3年半前。2019年12月のこと。
 里山に住む生き物を研究している守山先生に裏山を見てもらうと、里山再生の一環として裏山で間伐を進めたことで木と木の間が広がり、フクロウが飛びやすい環境になっているとのこと。
 実は、フクロウがいることは里山の生態系に良い影響があるそう。フクロウは生態系の上位種。生態系の頂点をアンブレラ種といい、フクロウが減ってしまうとフクロウのエサであるネズミなどが増えてしまい、ネズミなどが食べる植物の種子などが減ってしまう危険性が。
 そんなフクロウですが、フクロウの入る大きさの樹洞があれば、自分で探して、そこを巣に使うといいます。樹洞とは、木の内部が朽ちて空洞になった穴のこと。

 フクロウは、巣を持たず木の上で生活をしていますが、例外的な期間が。それは4月~6月の繁殖期。この時フクロウは、産卵と子育てのため樹洞を巣として使います。つまり、里の裏山に樹洞があれば定住する可能性があるんですが、この森はまだ若く樹洞はありません。
 そこで、林業家の西野さんの手を借り、樹洞代わりの巣箱を5つ取り付けました。すると7月、里から一番離れた巣箱にフクロウが子育てを行った痕跡があったんです。

 そこで、2年目となる2021年1月。子育てをする姿をとらえるために、24時間撮影できる赤外線カメラを設置しました。2月。巣箱から200m離れたスタッフルームにあるモニターで映像をチェック。すると!巣箱に向けた定点カメラにフクロウの姿が!さらに!繁殖期前の2月、つがいと思われるフクロウを観察2年目にして初めてカメラが捉えました。

 その後、繁殖期をむかえたフクロウは、この巣箱にちょくちょく顔を出し、5月には、早朝、餌取りを終えて巣の様子を見に来たつがいの撮影に成功。しかし、2年目は、卵を産みませんでした。
 そしてプロジェクト3年目となる2022年4月。フクロウの知られざる生態を捉えるため畑や裏山に、新たに野生動物を撮影する専用カメラを増設。すると6月、畑に設置した止まり木のカメラに、すでに巣立ちを終えた2羽のヒナが映っていたんです。
 いったいどこでこのヒナは育ったのか?里の巣箱をくまなくチェックしてみると、たまたまカメラを仕掛けていなかった巣箱でフクロウがヒナを育てた痕跡があったんです。

ついにかがくの里でフクロウ産卵!

 去年、里の裏山で最後にフクロウの姿を観察したのは、12月。これ以降、一度もカメラの前に現れることはなく、2か月が経過した今年2月半ば。
 朝5時46分。気温マイナス3度と、凍えるような寒さの中、さっそうとフクロウが現れました。現れたのは、これまでに幾度となくフクロウが訪れている内部に定点カメラが仕掛けてある巣箱。フクロウは縄張り意識が強いことから、今まで来ていたフクロウと同じ可能性が高いのですが、巣の中に入らずじっくりと観察。

 すぐに踵を返し、今度は外を見始めました。それから2分ほど、辺りを見回したのち森の中へ消えていきました。普段は昼夜問わず木の上で生活するフクロウ。巣箱を産卵や子育て以外で使うことはほとんでありません。まもなく訪れる繁殖期、もしかして産卵場所の候補として見に来たんでしょうか?
 3日後の朝3時30分頃。同じ巣箱に再びフクロウがやってきました。またまたじっくりと巣箱の中を見つめ、振り向いて外に目を向け、2分ほど、よーく観察して飛んでいきました。前より真剣にチェックしていたようにも見えましたが、果たして、この行動はどんな意味があったんでしょうか?
 それから12日後。昼間の気温が10度を超えた日。夜9時30分頃。再び、巣箱に現れたフクロウは、またジッと中を見つめると、この日は、のそりと巣箱の中へ!

 足元で何かを始めました。足元の木くずを咥え、動かしているようです。さらに、今度は脚で巣箱の床を掘ってもぞもぞと座り込み動かなくなりました。その後も、再び木くずを動かし、動かなくなります。これを何度か繰り返し、闇夜に消えていきました。
 翌日、夜11時30分頃。また、やってきました。連日、同じ巣箱を訪れたことはこれまでありません。この日は、勢いよく飛び降りて、昨夜と同じく、木くずを動かしてもぞもぞ。やはり座り心地を確かめているように見えます。この日、木くずを移動させ、座る、を繰り返すこと、なんと1時間以上。過去2年で観察できた中では、最長滞在時間になりました。
 そして次の日、夜8時30分頃。なんと!3日連続で同じ巣箱に現れました。この日も、いつもの通り、木くずを移動させもぞもぞし座ったんですが、ここでこの場所から、ほとんど動かなくなりました。同じ場所で同じ態勢のまま、なんと3時間が経過。
 時刻は夜11時23分。すると、いきなり尾羽を大きく上げました。これまで見せたことのない動き!果たしてこれは?

 巣箱に入ってから、4時間。そのとき、おもむろにフクロウが立ち上がりました。すると、そこにフクロウの卵が!

 産卵したフクロウは卵を残して巣箱を出てしまったのですが、わずか3分後に戻って来て、お腹の下に卵を入れて、温め始めました。その後、朝6時前まで温め続けました。白い卵。大きさは、直径およそ5cmと言われておりニワトリの卵よりも少し小さいんです。
 そして産卵から2日後。眠そうな顔をしてると思いきや、再び尾羽を上げるような動き。すると、フクロウが立ち上がると卵が2つに!フクロウの産卵は1度に1つずつ、日を置いて行われていたんです!
 ついにかがくの里で、フクロウが卵を産む姿を映像に捉えることができました。