放送内容

第1680回
2023.06.18
測量 の科学 場所・建物 物・その他

 測量とは、道路や土地の位置や長さを正確に記録すること。このデータが、様々な地図の元となっています。現在私たちが様々な地図を利用して、便利な生活を送れているのも、測量を行い正確なデータをとったから。しかし、国土を測り記録する大事な仕事なのに我々は測量のことをほとんど知りません。
 そこで、裕太さんが測量調査を体験!さらに、入社2年目番組初登場の林田アナウンサーが最新測量に挑戦!
 今回の目がテン!は、「測量の科学」です!

測量現場で見かけるアレってな~に?

 国土地理院で長年にわたり測量に携わってきた海津先生に教えていただきます。測量の現場で見かける三脚の上に載っている部分、これをトータルステーションといいます。

 距離が分かる測距儀と、角度が分かる経緯儀を一緒にした、トータルで扱う機械です。
 距離を測るとき、トータルステーションを覗いた先に設置するのがターゲット。

 測量現場では、人が支えていることもあります。中心にはプリズムがついていて、入ってきた光を、入ってきた方向にまっすぐ反射します。戻ってくる時間を測ることで2点間の距離が分かるんです。距離の他にも測れるのが角度。角度はターゲットがなくても測ることができます。内蔵された機械式の分度器が角度を割り出します。

 そして、距離と角度がわかれば、とてつもなく大きくて、直接測れないものの長さなどを知ることができるんです。

 そこで、茨城県にある日本最大の青銅製大仏立像「牛久大仏」の身長を、トータルステーションを使い測ってみることに。
 まずは、角度を測ります。今回は、台座を引いた、足もとから頭のてっぺんまでの長さ、身長を測ってみます。トータルステーションを置くのは、直線状に2か所A地点とB地点。A地点とB地点から測るのは共に、頭のてっぺんまでの角度。そこに、AB間の距離を測り計算すると、台座を含めた全体の高さがでてきます。

 同様に、A地点とB地点共に、足元までの角度を測り、AB間の距離をあわせて計算することで、台座の高さを求めます。

 最後に、全体の高さから台座の高さを引くことで大仏様の身長が分かるということ。

 具体的な計算は先生にお任せして、裕太さんは測量を始めます。
 大仏様が大きすぎて頭のてっぺんが見えないため、落雷防止の避雷針の先端を測ります。センターに避雷針をとらえて測量。A地点から避雷針の角度は、49度40分50.4秒。続いて、A地点から足元の角度も測ります。A地点からの角度が測り終えたら、A地点とB地点の距離を測ります。
 距離を測るためターゲットを置くと、31.9740m。そして、B地点からも角度を測って、測量したデータを計算。すると、牛久大仏の身長は、避雷針から足もとまで103.1m。避雷針は3mということなので、大仏の身長は100mと10cmと出ました。

 果たしてどれくらい正確なのか?管理事務所の方に聞いてみると設計上100mとのこと!ほぼぴったり!
 でも、気になるのが10cm…。実は、大仏は青銅でできているので伸び縮みするとのこと。
 ということで、ほぼ正確に巨大な大仏様の高さを測ることが出来ました!

どうやって地図を画くのか!?

 測量の役割にひとつが地図作り。それを学ぶためにやってきたのは長野県佐久市。ここにある龍岡城の城跡は珍しい形をしているんです。

 今回はこの城跡を上空から見るのではなく、測量で地図を作って、どんな形なのかを調べます。
 しっかりとした地図にするにはまずは座標を決める必要があります。その為の装置がGNSS受信機。

 世界各国の衛星から信号を受け取り、この場所の正確な位置を測定します。計測が終わったところでトータルステーションに載せ替えます。この場所を基準点として計測開始です。
 早速、石垣の角を測っていきます。実はGNSSで測定した基準点は2点。裕太さんが測ったのは、この2点を基準に、石垣の角が何度の方向にあり、何m離れているか。これを曲がり角ごとに繰り返していきます。そして、計測した点同士を結んでいくと形が分かる地図になるのです。

 次に裕太さんが測りたいのは、石垣の角の奥にある曲がり角。測量を進めていくと、最初に決めた基準点から見えない場所を測る必要が出てきます。そういう時は、測りたい場所と元の基準点が両方見える位置に、新しい基準点を定めトータルステーションを移動させます。そうすれば、もともと見えなかった場所も正確に測量していくことができるのです。

 新しい基準点を定めたら、そのターゲットを外し、トータルステーションに載せ替えます。もともと見えなかった曲がり角を、新しい基準点から測量します。これを繰り返し4時間、測量。お城を1周してスタート地点に戻ってきました。
 測量した点を見てみると、城壁の31カ所を測ることができていました。そして、その点同士をつなげると、なんと、星形のような地図になりました。

 ドローンで答え合わせをしてみると、裕太さんの書いた地図とも一致。裕太さんが地図を作ったのは、日本に2か所しかない五稜郭だったんです。

最新の測量はスゴイことになっていた!?

 林田アナが芝浦工業大学の中川先生を訪ねました。中川先生の研究というのがジオインフォマティクス。言葉だけだとよく分からないので、実際に体験してみることに。
 使うのはレーザースキャナー。従来のトータルステーションなどでの測量は、1つの測量点を計るのに数秒かかりますが、レーザースキャナーならば1秒間に100万点~200万点の計測をすることができます。

 この機械は都市空間のデジタルコピーを取る研究に使います。デジタルコピーとは、目に見えるものに大量の点を打ち、立体的に計測すること。今回は、この部屋を立体的に計測。部屋の形や飾り、部屋のあらゆるものを点にします。林田アナにはポーズをとってもらい、部屋と一緒に、立体的に計測してもらいます。
 スキャン開始です。角度を変えつつ3カ所から計測しました。すると、ポーズをとる林田アナと、部屋の様子が測量され、そのすべてが立体的に記録されていました。

 そして、この機材は1眼レフカメラを搭載しているため色を付けることも可能です。よく見てみると、数多くの点が集まって画像を構成していることがわかります。

 このように、点の集まりで三次元空間を表現したデータを点群データといいます。従来の測量は点と点を線で繋いだものでしたが、大量の点を測れるようになったことで、現実世界をうつし、立体の地図が作れるようになったんです。
 この技術で山などを計測すると、例えば土砂の堆積状況が、従来よりも、よく確認することができ、防災に役立てられ、一部実用化もされています。

 研究はこんなところでも行われています。中川先生と共同で研究をしている、東京海洋大学の清水先生と久保先生。文部科学省の研究プロジェクトで、船舶の実験で三次元データをとっています。
 船にレーザースキャナーや360度カメラ、現在位置を計測するGNSSなどの装置をつけて、東京都心の川の様子を立体的に計測していきます。
 今回は、東京海洋大学がある越中島から出発して、隅田川に沿って、日本橋川へと入ります。そして、水道橋で神田川へ入り秋葉原方面に移動。再び、隅田川を経由して大学に戻ってきます。
 船が進む都心の川は、ビルに挟まれ、いくつもの橋がかかり、場所によっては高速道路が覆っています。これまでは、障害物が多く人工衛星からの信号が届かないのに加え、衛星や航空機での写真撮影もできないため、都心の川の正確な地図を作るのは困難でした。
 しかし、船に取り付けられたレーザースキャナーが測ったデータを画像化すると、位置情報を持った点群で、橋の裏側や川岸の細かい形状まで立体で記録できていました。

 さらに、このデータを処理すると、どんどん川の地図を生成することができるんです。

 川の正確な地図を作る意味というのが、渋滞のない交通手段として、さらに、大規模な地震などが起きた時に、災害に強いインフラになりえるということ。
 その様な環境を整えるためにも、都心の川の正確に計測することが重要になってくるのです。