第1681回 2023.06.25 |
かがくの里 の科学 | 場所・建物 地上の動物 |
里山の生態系の頂点に立つ生き物を里に呼び込もうと、かがくの里で3年半前から取り組んできたのがフクロウプロジェクト!そして今年ついに!フクロウが卵を2つ産んだ瞬間を撮影することに成功!
そこで今回は!その後のフクロウの様子を初公開!1か月にわたり、卵を温めるフクロウの貴重な姿を観察!
今回の目がテンは、フクロウの卵はどうなった?1カ月密着スペシャルです!
卵がかえるまでの1か月
フクロウプロジェクトの始まりは、2019年の12月。フクロウは生態系の上位種。生態系の頂点をアンブレラ種といい、フクロウが減ってしまうとフクロウのエサであるネズミなどが増えてしまい、ネズミなどが食べる植物の種子などが減ってしまう危険性があるんです。
実は、かがくの里でも、ネズミが増えている可能性を示すある被害が。油を搾ろうと、収穫したヒマワリの種。それを畑の横のビニールハウスに保管していたところ、ほとんどをネズミに食い荒らされてしまったんです。
里の生態系のバランスを整えてくれるフクロウを呼び寄せ、裏山にすみ着いてもらいたい!
そこで、フクロウが里で繁殖できるよう、樹洞代わりの巣箱を西野さんの力をかりて7つ設置。そして3年の月日が経ち、ついに今年。
3月、お気に入りの巣箱にフクロウが昼も夜も居座るようになり、観察していると、尾羽を大きく上げる見たことのない動きを見せました。30分後、フクロウが立ち上がると、そこには卵が!さらにその3日後、またもや同じ、尾羽を上げる動き。すると2つ目の卵が!卵のサイズはおよそ5cm。ニワトリの卵よりもちょっと小さめです。
そもそもフクロウは、繁殖期以外は巣を持たずに森の中で過ごします。卵がかえるまでおよそ一カ月。巣箱の中で卵を産んだフクロウのメスはどんな行動を見せるのでしょうか。
10分後、フクロウのメスが戻り、卵をじーっと見つめゆっくり巣箱の中へ。卵を温め始めました。1時間後、急にもぞもぞと動きだしました。これが実は卵を温める上で重要な行動だったんです。顔をあげると、くちばしで自分の羽毛を抜いていました。
これは、繁殖期の鳥類に見られる行動。抱卵斑と呼ばれるおなかの真ん中あたりの羽毛がホルモンの働きで抜け落ち、皮膚が露出した部分には血管が集まり温度が高くそこで卵を温めるんです。このフクロウの場合自ら抜くことで、羽毛の脱落が進むように促しているのではないかと考えられます。
そして2つの卵を産んでから2日目の3月9日。朝6時。一度、目を開きましたがすぐに眠りの中へ。
20分後。今度は目を覚まし、羽づくろいを始めました。ヒナが孵るまではおよそ1ヶ月。その間フクロウのメスはずっと卵を温め続けます。夜行性のフクロウにとって日中は眠りにつく時間。熟睡しているのか、くちばしを開けて寝ています。
夕方5時半。深い眠りから覚め、それから4時間後の夜9時半。もぞもぞと動き出し、卵を気にしながらそーっと歩き外へ。
飛び出してから40分。戻ってきました。卵を温めるメスの行動範囲は巣から数100mほど。
そこでオスからエサを貰っていると言います。オスが狩りをし、メスが卵を温める分業制。オスが運んでくるエサを外に受け取りに行くこともあれば、オスが巣まで運んでくれることもあるといいます。
卵を産んでから3日目、深夜11時45分。メスが卵を温めていると、オスが狩りで獲ったネズミを持ってきました。受け取ったネズミを、メスはのどの奥に流し込むようにして丸飲み。定点カメラの映像から、かわいらしいしぐさだけでなく、厳しい自然の中、野生生物として、懸命に生きる姿が見えてきました。
卵を産んで7日目の深夜0時過ぎ。この日もオスがネズミをお届け。さらに6時間後にも2匹目のネズミを持って来たんです。
この辺りのネズミを捕りつくしてしまわないか心配になりますが、フクロウが狩りをし、適度にネズミを食べることは生態系のバランスを整える上で大事なこと。二人三脚でそれぞれの役割を果たすオスとメスの姿がありました。
フクロウのメスとオスのコミュニケーション
抱卵中のフクロウの生態に関して、守山先生から興味深い情報が。
なんと、オスがエサを運ぶとき、巣箱にいるメスに対してホーホー、クルックホーホーという、いわゆるフクロウの鳴き声を出して近づいてきて、それに対してメスも少しシワガレたような声で鳴きかえすことがあるといいます。
そこで、守山先生指導のもと、細心の注意を払って少し離れた場所に小型の録音機材を設置。
すると、エサを持ってくる時のオスとメスの鳴き声を捉えることに成功しました!
その鳴き声は、まさにはオスのホーホー、クルックホーホーとメスの少しシワガレた声!オスがエサを持ってきたことを巣の外から鳴き声で知らせていたんです。
産卵から1か月!ついにヒナが孵化!
卵を産んで29日目。フクロウのメスはこの日も卵を温め続けます。卵を温め続けておよそ一ヶ月近く。いつヒナがかえってもおかしくない時期です。
朝6時半。突然、体を反らせて足元の卵を気にしているよう。ヒナが卵の中から出ようと殻を割り始めた可能性が。1分ほど足元でメスフクロウは何かしていましたが、卵を抱く体勢に戻りました。
そして午後3時半頃、また足元を気にしはじめたメス。2分ほど、下を向きごそごそ。その時!白い動く物体!ヒナです!
くちばしの先には、卵歯と呼ばれる卵の殻を割るための突起が付いたままなので産まれたばかりのヒナだと分かります。
ついにフクロウのヒナが一羽かえりました!
翌日の夜中1時半ごろ。フクロウのメスが立ち上がり外へ。初めて、生まれたヒナの全身を確認。
5分後、すぐにメスは戻ってきてヒナと卵を踏まないようにそーっと巣箱の中へ。また温め始めました。
その翌日の4月7日。午後3時、またメスフクロウが立ち上がり、足元を気にしています。2羽目のヒナは無事に孵ったのか?確認するにはメスが動くのを待つしかありません。
次の日、ついにメスが動き出しました!すると、2羽のヒナの姿が!大きさはおよそ5cm、白い産毛に覆われています。かがくの里の山で、フクロウのヒナの誕生をつぶさに観察することができました。