米大統領選、くらべてみました~政策編~
世界が注目するアメリカの大統領選挙は、共和党の候補者・トランプ大統領と、民主党の候補者・バイデン氏の一騎打ち。外交政策や人種問題(BLM)、新型コロナ対策や気候変動への姿勢など、両陣営の政策を比べてみました。
◇外交政策◇
【トランプ候補】
■「アメリカ第一主義」で自国の利益を最優先
これまで、アメリカの雇用が奪われるとして「TPP=環太平洋経済連携協定」の離脱(2017年)や、イランによる核開発の制限を目的とした「イラン核合意」からも離脱(2018年)
最近では、新型コロナウイルスなどへの対応が中国寄りだとして「WHO=世界保健機関」からの脱退を通知するなど、国際的な枠組みから距離を置く動きが相次いでいる。
自らの岩盤支持層からは共感を得られる一方、国際社会から非難や懸念の声もあがり、各国との溝が浮き彫りに。
また、米軍駐留経費をめぐり「同盟国により応分の負担を求める」とも表明していて、日本にとっては、在日米軍駐留経費をめぐる日米交渉において、難航が予想されている。
■対中政策:強硬姿勢
新型コロナへの対応をめぐり、「中国に完全に責任を負わせる」と繰り返し発言したり、「中国に委託する企業とは発注契約を結ばない」ことを公約に盛り込んだりと、中国への牽制を強めている。引き続き中国に対し強硬姿勢を貫くことをアピール。
【バイデン候補】
■国際協調路線
トランプ大統領が離脱表明した「パリ協定」や「イラン核合意」など国際的枠組みに復帰する意向を示し、国際協調を重視する姿勢をアピール。「世界のリーダー」としての役割の復活を目指す。
■対中政策:硬軟織り交ぜる姿勢
選挙公約で中国について、「不公正な貿易慣習からアメリカの労働者を守る」と明記。一方で、直接“関税攻撃”するのではなく、同盟国などとの協調で対抗していく姿勢をとる方針。
また、民主党大会の指名受託演説で、対中政策について言及しなかった姿勢などに対し、トランプ大統領から「弱腰、バイデン氏の政策はメイド・イン・チャイナ」などと非難されている。
◇人種問題(BLM)◇
【トランプ候補】
全米に広がっている「BLACK LIVES MATTER」=人種差別抗議デモについては、一部暴徒化するデモ隊を「悪党」と呼び、鎮圧のために州兵を派遣。一時、連邦軍派遣も検討。
ニューヨーク市内にある自身のトランプタワー前の路上に「BLM」がペイントされるイベントについて、「増悪の象徴だ」として嫌悪感を明らかに。警察支持の姿勢を見せ、「法と秩序」をスローガンに強硬に抑え込む構え。
【バイデン候補】
平和的な抗議活動を支持。差別的な対応が指摘されている警察については、教育・訓練分野の予算を増額し、警察の質の向上をはかる方針。また、黒人女性のハリス氏を副大統領候補に選び、「多様性」をアピールし、人種差別を解消した上での団結を訴える。
◇移民政策◇
【トランプ候補】
前回の選挙では、不法移民排除のため「メキシコとの国境に壁建設」を目玉の公約に掲げ当選。“不法移民はアメリカへの侵略者”の考えは変っていない。
しかし、“壁”建設は、メキシコ国境沿い約3000kmのうち、500kmほどしか完成しておらず(米税関・国境警備局HPより 9/14時点)、十分な予算を確保できていないとの報道も。
今回も、「不法移民に社会保障や医療、学費を与えない」や、「新たな移民には経済的自立を義務づける」などの項目を公約に入れて、厳格な移民政策を継続。
【バイデン候補】
トランプ大統領による移民の入国制限に反対。「国境の壁」の建設を中止して、国境警備を強化する考え。
「経済を活性化させる移民政策」として、移民を経済成長の原動力とする意向。犯罪歴調査など適切な入国管理を行い、移民を受け入れ、市民権を与える方針。
◇コロナ対策・社会保障◇
【トランプ候補】
「新型コロナはいずれ消える」と楽観視し、経済活動の再開を優先。自身はマスクの着用を避け、公の場でマスク着用が初めて確認されたのは、7月になってから。
対策を軽視しているとの批判を受けたからか、共和党大会では、新型コロナの医療関係者が大統領の対応をたたえる映像を流す演出も。
前回の選挙から引き続き、オバマケア(2010年成立の医療保険制度改革)の撤回と、より低コストの医療保険制案を示す方針。
【バイデン候補】
医師・科学者の意見を尊重し、効果的かつ安全な経済活動の再開を主張。トランプ大統領の“マスク嫌い”とは反対に、全米規模でマスク着用を義務化する方針を発表。
オバマケアの拡充を約束。国民皆保険が目標。民間に代わる公的な高齢者皆保険を提唱していて、トランプ政権による“富裕層への減税”を撤回し、財源に充てる考え。
◇気候変動◇
【トランプ候補】
「地球温暖化はでっち上げだ」と主張(2016年)。「パリ協定」(地球温暖化防止のための国際的枠組み)は、アメリカに不公平な経済的負担を強いていて、「エネルギー産業の雇用への死刑宣告」だとして、離脱を通告(2019年)するなど、対策には後ろ向き。
【バイデン候補】
二酸化炭素排出規制に前向き。環境規制と外交努力による気候変動問題の解決に意欲を示している。「エネルギー分野で世界を主導し、雇用も増やせる」との見方も。また、トランプ大統領が離脱を通告している「パリ協定」への復帰を表明。
◇抱える主な課題◇
【トランプ候補】
・新型コロナへの責任
「多くは鼻風邪」や「消毒液を体内に注射できないか」など非科学的な発言を繰り返し、批判を浴びている。
民主党ハリス副大統領候補からも、「感染が世界最多になったのは大統領のせい」と厳しく批判されている。
・経済・雇用の回復
新型コロナ感染拡大にともない、外出制限や休業要請などで失業者が急増。失業率は、4月には第二次世界大戦後最悪の14.4%を記録。感染収束の目途がたたない中、経済回復の勢いは緩やかだ。
経済政策を売りにしていたトランプ大統領だが、自らの“コロナ対策”の甘さに苦しめられる形に。
・人種差別抗議への対応
抗議デモなどへの対応をめぐり、“差別を助長している”と批判されているトランプ大統領。
暴徒化するデモを「テロ」と非難したり、SNS上で人々が「ホワイトパワー(白人至上主義者のスローガン)」と叫ぶ映像に「偉大な人々」とコメント(現在は削除)するなど、岩盤支持層にアピールする狙いだが、問題に正面から向き合わない姿勢に、白人の中からも批判の声が強まっている。
【バイデン候補】
・討論会のパフォーマンス
穏やかで落ち着いた話し方が特徴だが、華やかさや盛り上がりに欠けるとの意見も。
大統領候補テレビ討論会(3回)で、トランプ大統領との直接対決が注目される。
・次男のウクライナ疑惑
オバマ政権で副大統領を務めていた2014年、ウクライナの検事総長解任を求めたことについて、次男が役員を務めていたウクライナの民間ガス会社に対する汚職捜査をやめさせるためだったのではないかとの疑惑を持たれている。(バイデン氏は否定)
・中国への姿勢
中国による知的財産権の侵害などに厳しい姿勢を示す一方、気候変動や核不拡散の問題では米中協調路線を目指す。
オバマ政権時代の“対中融和路線”に回帰するのではとの見方も。