対決
カラシ
と
トウガラシ
第733回 2004年5月23日
季節はもう少しで夏。暑い夏にはなぜか辛いものが食べたくなります。その辛味調味料の2大巨頭といえば、
カラシとトウガラシ
。日本はこの2種類とも食す、世界的にも珍しい国なのです。“唐(とう)”がくっつくかくっつかないかだけが名前の違いのこの2つ、
実はぜんぜん違う
ものらしいのです。
カラシとトウガラシは、いったい何から出来ているのでしょう。トウガラシはご存知の方も多いと思いますが、
ナス科のトウガラシの実
を乾燥させて作ります。赤いイメージがありますが、青や黄など色々な色があります。
さて、一方カラシの原料とは?街頭で伺っても答えられる方はほとんどいらっしゃいませんでした。実は
カラシは、菜の花の一種、カラシナという花の種子から作られる
のです。この種子をマスタードシードと呼びます。
スタジオにこの種子が登場。しかしこれを所さんが口にしますが、なかなか辛く感じないのです。実はこのマスタードシードは
すりつぶし、水を加えてじっくり練らないと辛くならない
のです。これは種子の中の辛味成分の素カラシ油配糖体と、ミロシナーゼという酵素が、普段は分かれていて混じることがないのですが、これが粉にされることで混じり、そして水が加わることで酵素反応を起こすためなのです。結果、
アリルイソチオシアネ−ト
という辛味成分になり、辛く感じられるのです。
カラシは、菜の花の1種・カラシナの種子、マスタードシードを粉にして水で混ぜることで出来るのだ!
カラシとトウガラシ、その役割を逆転させてみるとどうなる
のでしょう?そこで、中華料理店とサンドイッチ屋さんにご協力戴き、
カラシ入りの坦々麺
と、
トウガラシバター入りのサンドイッチ
をそれぞれお客さんに出させていただきました。するといずれの感想も
「辛くない!」
。いったいこれはどういうことなのでしょう。
そこで矢野さんがトウガラシとカラシを摂った時の舌の変化を、マイクロハイスコープで見てみました。するとカラシは普段と変化無かったのですが、
トウガラシの時は舌が赤くはれ上がった
のです。
トウガラシの辛味成分、カプサイシンは舌に痛いという刺激を与える
のです。実は
この痛さは、熱の痛さと同じ
。さらにカプサイシンは
熱がないと、なかなか水に溶けず、辛く感じられません
。なので熱い食品でカプサイシンは威力を発揮するのです。
一方、
カラシの辛味成分アリルイソチオシアネートは、揮発性があり、鼻やのどの粘膜に痛いという刺激を与え、辛いと感じさせます
。なので熱を加えると、この辛味成分が揮発して無くなってしまうため、辛く感じなくなってしまうのです。
トウガラシは熱い料理で、カラシは熱くない料理で、その威力を発揮する!
人はなぜ辛いものを食べるのでしょう?そこで矢野さんがキムチを食べ、その時の体表面温度の変化を見てみました。すると食事中からどんどん体表面温度は上昇したのです。これは
交感神経が刺激されて、心臓の動きが活発になり血行も良くなった
からなのです。
辛いものは基本的に体にとっても“痛い”もの。なのでこれを
早く排除しようと、だ液や消化液を活発に分泌
、結果
消化器系が活発になり、食欲増進につながる
のです。さらにこの
痛みを和らげようと、βエンドルフィンなどの快楽物質が脳から分泌されます
。この心地よさも、ヒトが辛いものを食べる理由となっているのです。