知識の宝庫!目がテン!ライブラリー


抗菌 梅干し & 無糖 梅酒
第887回 2007年6月17日


 梅の雨と書いて梅雨とあるように、梅雨はウメも旬を迎えます。今回は梅酒や様々な食品などでブームとなっている、ウメを色々な角度から科学していきます。

 日本のウメの歴史は古く、実は遥か昔にもウメブームがありました。700年代後半の「万葉集」の中に、梅について詠まれた歌が118首もあるのです。しかし、それ以前の「古事記」などにはウメが登場しないため、ウメは700年代の中盤に原産地である中国の南、長江沿いの地域から伝わり、日本に大ブームを巻き起こしたと言われています。
 そんなウメの収穫を見に、矢野さんは小田原市にある梅林を訪れました。青梅は、実に傷付けないように丁寧に手でもいで収穫されていました。この青梅は主に梅酒に使われ、6月半ば過ぎの黄色く熟した梅は梅干しに使われます。
 さて、梅はどんなに熟してもすっぱい味がします。そこでこのすっぱい梅を動物は食べるのか実験です。用意したのはすっぱい梅とレモン、そして甘いリンゴです。これらをタヌキの小屋へ入れてみると、タヌキはリンゴをあっさり完食しましたが、ウメに対しては匂いをかぐものの食べません。レモンも食べませんでした。続いては梅の故郷、中国を中心に生息しているハクビシンに与えてみます。するとリンゴとレモンは食べたものの、梅は加えて噛んだ後、吐き出してしまいました。次に、何でも食べる雑食性のニホンザルにも与えてみました。しかし皮を剥いて味見だけして捨ててしまいました。結局どの動物もウメの実は食べませんでした。
 そこで、これらの果物のすっぱさの元となる有機酸の量を計測してみると、結果は、梅は5.7%、レモンは7.5%でした。ウメはレモンよりすっぱくなかったのです。しかし「糖度」は梅が6.4%でレモンより低い数値でした。つまり、梅は甘さが少ないのですっぱく感じていたのです。
カラスがウメを食べている様子  では、鳥類はどうなのでしょう?カラスで実験してみると、見事に梅の実をついばみ、しっかり果肉を飲み込みました。鳥は、哺乳類と違い、酸味や渋みをあまり感じないとされていて、梅の原種は今よりずっと実が小さくて鳥が食べるのに最適なサイズだったと言われているのです。

 こんなにすっぱい梅ですが、梅酒は砂糖を使用していて甘いので女性にも大人気です。そこで、佐藤アナが梅酒作りに挑戦しました。用意するのは青梅1キロに対して氷砂糖500グラムに焼酎が1.8リットルです。青梅を水で洗い、ヘタをとり除いた後、容器に入れます。そこに氷砂糖をいれて上から焼酎を注ぎます。あとは日の当たらないところに置いておけば3ヶ月で美味しい梅酒が出来ます。そして同じ工程で砂糖を全く使わない梅酒も作ってみました。半月後、熟成途中ですが、2つの梅酒の有機酸量を比較してみたところ、砂糖ありが1.3%で砂糖なしが0.5%でした。なんと砂糖入りの方が3倍近く梅の成分が出ていたのです。これはなぜでしょう?
 実は、焼酎に砂糖を入れると梅の実の内側より外側の濃度が高くなります。液体には、濃度が一定になろうとする性質があるため濃度が低い梅の実の内側から外側へ水分が移動するのです。この時、梅の実の成分が水と一緒に外に溶け出すのです。

所さんのポイント
ポイント1
梅酒作りに砂糖が欠かせないのは、砂糖を入れないと、ウメの実の成分が焼酎に溶け出しにくいからだった!

 ところで、最近の梅干しは減塩指向から様々な塩分濃度に分けられて売られています。そこで塩分濃度が20%、12%、10%、7%と違う4種類の梅干しを用意して、20人の人に街で試食してもらい、好きなものを選んでもらいました。結果、塩分濃度が一番低い7%のものが一番人気となりました。しかし、これを年代別で見ると、40代以下の人は塩分濃度が低いものを、50代以上の人は高いものを選んでいたのです。そして、50代以上の人が好む梅干しの商品表示を見てみると「梅干し」と書いてあるのですが、若い世代の人が好む梅干しの表示には「調味梅干し」と書いてあったのです。この違いとは何なのでしょう?
 まず、取れたての梅に塩をまぶし水分を出して、天日に干して水分を飛ばして作られる本来の「梅干し」の塩分濃度はおよそ20%です。一方「調味梅干し」とは、塩分濃度20%の梅干しを原料に使います。梅干しを真水で洗い、水に浸けて塩抜きをして塩分濃度を10%まで下げていきます。しかしこの時塩分と一緒に梅の成分も抜けてしまうため酢やアミノ酸に改めて漬けて味をととのえていくのです。

所さんのポイント
ポイント2
最近スーパーでよく売られている「調味梅干し」は、「梅干し」を原料に使い、その塩分濃度を下げた新しい梅干だった!

 さて、よく梅干しのおにぎりは抗菌作用があって腐らないと言われていますが、これが本当なのか実験してみました。用意したのは定番の「梅干し」「ツナマヨ」「昆布」の3種類。まずは炊きたてのごはんに腐敗細菌のひとつ、「枯草菌」をかけよく混ぜ合わせ、さらに抗菌作用がある塩は使わずに握ります。 6時間後の3つの具のコロニー比較 このおにぎりをリュックに入れて矢野さん一家がピクニックに持って行きました。炎天下のリュックの中で6時間放置した後、最初にかけたおにぎりの枯草菌を調べてみると、ツナマヨと昆布のおにぎりにはコロニーと呼ばれる細菌の塊が大量についていましたが、やはり梅干しは酸と塩の力による抗菌作用のおかげでほとんど菌が繁殖しませんでした。梅干しのおにぎりが他に比べて腐りにくいというのは本当だったのです。しかし、梅干しの抗菌作用はその周囲にしか及ばないので、長時間になると外側から腐敗が進みます。



植物編へ食べ物編へ
前週 次週
ページトップ

ジャンル別一覧 日付別一覧