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超甘い イチゴ で(秘)ケーキ
第912回 2007年12月16日


 いよいよやってきたクリスマスシーズンに欠かせないものといえば、ケーキ。そして、その定番といえば「イチゴ」のショートケーキですよね。でも、身近なイチゴには私達が知らない秘密がたくさんあったのです。

 日本のクリスマスには定番のイチゴのショートケーキですが、他の国のクリスマスケーキを見てもイチゴは見当たりません。実は、真っ白な生クリームに真っ赤なイチゴという色合いが、雪とサンタクロースを思わせるということから昭和40年代にケーキ業界が仕掛けたイメージ戦略だったんです。もともと初夏が収穫期のイチゴでしたが、最近ではクリスマスでイチゴが必要なため、12月からの入荷が多くなっています。つまりイチゴは旬が初夏から冬に変わってしまったんです。では、一体出荷時期をどうやって変えているのでしょう?矢野さんはその秘密を探りに栃木県のイチゴ畑を訪れました。ビニールハウスの中に入ると、外の気温は7度なのに中の温度は27度もありました。真っ赤なイチゴが実っているビニールハウス内には地面の温度が10度以下になると温風を自動で送り出す装置や、冬の短い日照時間を補うために日没後にハウス内を照らす装置などが設置されていました。そして、イチゴを間近で見ていた矢野さんは、クキとは別に株からツルのようなものが伸びているのに気が付きました。実は、これはランナーという人間で言えばへその緒のようなもの。イチゴはこのランナーを伸ばしどんどん仲間を増やしていくのです。この親株から子株を、子株から孫株をと、どんどん新しい株を生み出す様子から、イチゴは「草かんむり」に「母」と書くようになったとも言われています。
イチゴアップ 「赤い部分は花托」「これが果実」  ところで、イチゴのつぶつぶは種だと思っている方も多いのでは?しかし、あのつぶつぶは果実なのです。私達が食べている赤い部分は花托(かたく)と呼ばれるめしべを支える土台の部分なのです。
 イチゴは本来なら膨らんで果実になるはずの子房の部分が膨らまない代わりに、土台である花托が果実のように大きくなるのです。だから、この花托の上に乗っているつぶつぶが本当の果実なのです。では、本当の種はどこにあるのでしょう?なんと、つぶつぶの果実の中に種が入っているんです。
 メスでつぶつぶを割ってみると特に果肉はなく、白い粒が出てきました。これが本当の種なんです。ならば本当にイチゴのつぶつぶをまいたら、本当に芽を出すのでしょうか?試しにシャーレで栽培してみました。すると、栽培を始めて5日後、小さな芽を出し、その後も見事に成長しました。この芽はおよそ10ヵ月後に実をつけるようになるそうです。

所さんのポイント
ポイント1
イチゴのつぶつぶは種ではなく果実だった。そしてイチゴの本当の種はこの果実の中に入っているのだ!

 さて、イチゴは品種改良がしやすいという点から、どんどん甘い品種が作られるようになりました。そのおかげで、昔のように、酸っぱいイチゴを潰して砂糖をかけて食べることも少なくなり、イチゴを潰すスプーンの生産量も大幅に減ったそうです。そして、今一番甘いといわれているのはアイベリーという品種です。ということはこのアイベリーを使えばとっても美味しいショートケーキが作れるはず。そこで、おなじみ不二家のご協力で高級なアイベリーを使ったスペシャルショートケーキを作っていただきました。そして街行く人20人に不二家の定番ショートケーキと食べ比べてもらいました。すると、スペシャルケーキのほうが美味しいと答えた人は20人中わずか3人だけだったのです。ちなみにイチゴだけを食べ比べてもらったら、20人中20人全員がアイベリーのほうが美味しいと選んだのです。これはなぜでしょう?食べ比べた人に感想を聞くと、定番ショートケーキは全体に甘味があり、酸味のバランスが取れているというのです。実は定番ケーキは全体の味を楽しむために、あえて酸味の強いイチゴが使われていたのです。2つのイチゴの糖度を比較してみても、3.4度も差があったのです。ちなみにいちご大福も、同じ理由で甘味が少なく酸味の強いイチゴが使われているのだそうです。

所さんのポイント
ポイント2
ショートケーキやいちご大福には、全体の味のバランスをとるために、あえて甘味が少なく酸っぱいイチゴが使われているのだ!

 ところで、熟すと真っ赤に色づくイチゴはそもそもなぜ赤くなるのでしょうか?農業試験場の方に伺うと、その理由は、鳥や動物達に食べてもらい、フンをいろんなところに広げてもらうための子孫繁栄策だというのです。ならばと動物園で実験です。エリマキキツネザルの檻の中に、全てほぼ同じ大きさの赤く色づいたイチゴと、まだ色づいてない白いイチゴを5個ずつ置いてみました。赤いイチゴを手に取り食べるサルすると、エリマキキツネザルは赤いイチゴを5個中4個食べたのに対し、白いイチゴには全く手をつけませんでした。でも、もしかしたら味で赤い方を選んでいるのかもしれません。ということで、今度は白いイチゴを食紅で着色し、白いイチゴ同士で比べてみることに。すると、白いイチゴは1個だけ食べ、赤く着色したイチゴは5個中4個も食べました。やはりイチゴは動物に食べてもらうためにわざわざ赤くなっているのかも知れません。
 さて、イチゴについている緑のヘタは当然捨ててしまいますよね。これはもったいないということで、スタッフはヘタに含まれる葉緑素に目をつけました。葉緑素とは光合成を行う植物の葉や茎に含まれる緑色の色素で、爽やかな色合いと消臭効果があることからガムに使われていたりします。そこで、葉緑素入りのイチゴのヘタガム作りにチャレンジしてみました。不二家やいちご大福を作っている和菓子屋さんでヘタをもらい、集めたヘタをガムメーカーの研究所へ持って行きました。そして、粉末となったヘタをガムベースに混ぜ、ついにオリジナルのヘタトールガムが完成しました。所さんが噛んでみると、さっぱりとした味は好評でしたが、やがて口の中でボロボロになり、ついにはドロドロになってしまいました。実はイチゴのヘタは繊維質が多く、噛み続けるとガムベースが分断されてボロボロになってしまうので商品化が難しいのだそうです。



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