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冷凍の科学
第1171回 2013年3月30日


 長期間保存できる冷凍技術は今や無くてはならないもの。ですが、冷凍庫に放置して味が落ちてしまったり、解凍に失敗して台無しになってしまったり…。そこで今回は冷凍した食材をおいしくする科学の知恵をご紹介!

①2年半冷凍庫に眠っていたエビに起きた「冷凍やけ」とは?

 冷凍庫は便利な反面、つい食材を入れっぱなしにしてしまうことも。街頭インタビューしたところ、「消費期限が2年半前の解凍エビ」が出てきました!専門の機関で検査し、火を通せば食べても問題ないとのことなので、冷凍庫から発掘したエビの味を確かめてみることに!
 料理のプロにお願いし調理開始。味がよくわかるよう、塩とオリーブオイルだけでソテーすると、見た目は美味しそうな普通のエビに。恐る恐る食べてみると…食感が悪くエビの風味や味もなくなっていました。専門家によると、原因は「冷凍やけ」。冷凍庫内は乾燥しているため、長期間冷凍すると食材の細胞から水分が抜けてしまうそうです。
 実は2年半前に冷凍したエビについていた霜は、エビの細胞から抜けた水分が凍ったもの。パサパサの食感は水分が抜けたせいだったのです。さらに、水分が抜けて細胞に空気が入り込むと、タンパク質が変化したり脂質が酸化したりして味がない状態に。しかもこの冷凍やけ、家庭用の冷凍庫では短い期間でも起こってしまうことがあります。用意したのは1週間家庭用の冷凍庫で凍らせたAとBのマグロ。10人の主婦にそれぞれを試食してもらった結果…、10人中8人がBのマグロが美味しいと答えました。実はAのマグロは、ラップをせずそのまま冷凍庫に入れ、さらに冷凍庫を頻繁に開け閉めし、わざと冷凍庫の温度が上下するようにしていました。その結果、溶けたり凍ったりして1週間で冷凍やけが進んだのです。
 ちなみに、よく買ってきたパックのまま冷凍しがちですが、出来るだけ空気と触れ合わないよう食材を一度パックから出し、ぴったりラップしてから冷凍するのが冷凍やけしないコツです。

所さんのポイント
ポイント1
冷凍庫に入れる前、少しの手間で「冷凍やけ」を起こしにくくできるのだ!

②冷凍食品に学べ!美味しく保存する技とは?

 冷凍食品の賞味期限は多くの場合、製造からおよそ1年。一般に家庭で冷凍した食材の賞味期限は1か月程度が目安。なぜ冷凍食品は賞味期限が長いの?専門家によると、食品を冷凍保存する場合、加熱調理した方が、長期保存できて美味しさも保てるとのこと。確かに冷凍食品は調理されたものが多い。それでは、どんな料理でも調理して冷凍すればいいのか?
 まずは、ハンバーグから実験。Aは調理してから冷凍したもの。Bはミンチ肉の状態で冷凍、食べる前で調理したもの。10人の主婦に食べ比べてもらった結果…、調理して冷凍したAのハンバーグが、8対2で勝利! 続いてロールキャベツを同様に食べ比べてもらった結果…、調理して冷凍したAが圧勝!専門家によると、食品の中に含まれている酵素が食べ物の味を悪くしたり、食感を悪くしたりするそうで、加熱調理すると酵素の働きを減らし、食べ物を美味しく保てるようになるんだそうです。
 ちなみに、全部調理してから冷凍したほうが良いという訳ではありません。水分が多く含まれる、カレーや肉じゃが、筑前煮などの場合、冷凍するとニンジン、こんにゃく、豆腐などの水分が抜けてスカスカになってしまい冷凍には向きません。逆に肉料理などは冷凍に向いているそうです。

所さんのポイント
ポイント2
肉料理は調理してから冷凍するのだ!

③おいしく保てる冷凍技術 急速凍結って何?

 スーパーで売っている冷凍の肉や魚ついて街で聞いたところ「昔の冷凍したお魚は水っぽい」「味よくなった」という意見が。家庭で冷凍したものとの違いは「急速凍結」!これは、マイナス50度から60度で一気に食材を冷やす冷凍方法。専門家によると、食品を凍結すると細胞内の水分が凍り結晶化するそうで、家庭での凍結だとその結晶化が大きくなりすぎ細胞を壊すため味が損なわれるそうです。
 では、ここで実験!家庭の冷凍庫で凍らせたマグロと、急速凍結させたマグロ。この2つを解凍してみると、どんな違いがあるのか?3時間後、家庭の冷凍庫で冷凍したマグロからは旨味や栄養の入ったドリップが。家庭で凍らせた場合は、細胞内の水分が大きな氷の粒になって細胞の壁を壊しドリップが出てしまうのですが、急速凍結した細胞は氷が小さくなるため、細胞の壁が壊れにくいそうです。専門家に伺うと「細胞内の氷はマイナス1℃〜マイナス5℃の温度帯を通過する間に一番結晶化が進む。急速凍結はその温度帯を素早く通過することができるため、細胞へのダメージを最小限に抑えられます。」つまり、大事なのは氷ができる温度帯をいかに早く通過するか。急速凍結すれば、冷凍しても美味しさが損なわれにくいのです。

所さんのポイント
ポイント3
家庭では冷凍庫を一杯にして温度設定を強に。魚や肉はできるだけ薄く小分けにするのだ!

④科学で素早く解凍する方法とは?

 街なかで聞いてみると、解凍方法で多かったのが室温での自然解凍。しかし、実際にマグロを室温で解凍するとドリップがたっぷり!専門家によると、解凍の場合も冷凍と同じで、氷結温度帯のマイナス5度からマイナス1度を30分以内に通過する方がよく、空気は熱伝導率が悪いから時間がかかるとのこと。熱伝導率の高いものが食材のまわりにあれば、より早く解凍できるとのこと。そこで熱伝導率が空気の10万倍あるダイヤモンドで実験!しかし本物はマグロを包むだけ用意できなかったので…同じ伝導率のある人工ダイヤモンドを使います。これでもお値段500万円!
 試しにダイヤを氷に押し付けると、氷が切れていく不思議な現象が!実はこれ、ダイヤから手の熱が伝わり氷が溶けているんです。サーモグラフィーで見てもダイヤを通して冷気が手に伝わっているのがわかります。ダイヤを使えばすばやく解凍できるはず!
 まずは、室温でどのくらいの時間で解凍できるのか65グラムのマグロで計測。マイナス4℃からスタートし3℃になったところで解凍完了とします。室温で自然解凍すると、かかった時間は1時間15分。では、同じ大きさの冷凍マグロを人工のダイヤモンドで挟み溶かしてみると…タイムはわずか30分!ダイヤモンドを使えば、倍以上早く解凍できることがわかりました!
 でも、当然ダイヤなんか手に入りません。そこで身近に手に入る物質で調べると、アルミニウムは空気のおよそ1万倍の熱伝導率があることがわかりました。そこでアルミを使ってチャレンジ!
 まず、同じ大きさの凍ったマグロをアルミホイルでピッチリと包み、これをさらにアルミ鍋の中へ。先ほどと同じ方法でタイムを計ると…時間は45分!室温解凍より30分早かったのです。はたして味に違いは?主婦10人に食べ比べてもらったその結果…、10人中7人がアルミホイル解凍の方がおいしいと答えました。アルミを使えば、美味しく解凍できることが分かりました!

所さんのポイント
ポイント4
アルミなら、自然解凍よりも早く解凍できて、食材の味が保たれるのだ!




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