枝豆
の科学
第1184回 2013年6月30日
ビールがおいしいこの季節。そんなビールのお供といえば・・・そう!おつまみに欠かせない枝豆!今回の目がテンは、今が旬!枝豆のおいしい調理法や意外なヒミツを、科学の力で解明します。
①枝豆は鮮度が命!味にどれだけ違いがあるのか?
②枝豆をサヤから食べると気持ちいい?
③簡単!手間なし!「蒸し焼き」で枝豆がおいしくなる?
①枝豆は鮮度が命!味にどれだけ違いがあるのか?
今が旬という枝豆。ならば、その収穫の様子を見せてもらおうと向かったのは、日本有数の枝豆産地、千葉県野田市。早朝から収穫を行う農家の方に、さっそく話を伺ってみると、なんでも「枝豆は、豆じゃなくて野菜なので、朝獲らないと鮮度が落ちる」という。そう!農林水産省によると、枝豆は野菜類に分類されるんです。乾燥した小豆や落花生などの豆類ではなく、枝豆は鮮度の落ちやすい野菜に分類されるため、気温の低い早朝に収穫していたんです。しかも、その収穫作業もとにかくスピード勝負!鮮度が命の枝豆は、手際よくやらないと、味も落ちてしまうんだとか。では、一体どれだけ鮮度が大事なのか実験!
前日に収穫した枝豆と、先ほど採れたばかりの枝豆を用意し、この2つを同じ時間、同じ味付けで茹でます。果たして、たった1日で違いが出るのか?街の人に「A:前日収穫した枝豆」「B:採れたて枝豆」を食べ比べてもらったところ、なんと10人中全員が「Bの摂れたての枝豆が美味しい」と判定!さらに、皆さんは「Bの方が甘みがある」と答えました。枝豆の“甘み”の正体は、ニンジンやタマネギなど、多くの野菜に含まれる「ショ糖」。そこで、前日収穫の枝豆と、採れたての枝豆のショ糖の量を計ってみると、なんと前日のものは半分以下に減っていたんです。
なぜそこまで減るのか、専門家に伺うと・・・「呼吸をすると、ショ糖が消費されます。収穫すると新たにショ糖が作られなくなるため、ショ糖は減っていく一方になるわけです」。収穫しても枝豆は呼吸をし、エネルギーであるショ糖を消費していきます。しかも、枝豆の呼吸量は他の野菜よりもはるかに多いんです。だから、枝豆は鮮度が大事だったんです!
枝豆の旬は6月初頭〜8月中頃まで。
採れたての枝豆を新鮮なうちに食べるのが最も美味しいのだ!
②枝豆をサヤから食べると気持ちいい?
どうして枝豆は、サヤに入ったまま出てくるのでしょうか?そこで、「サヤあり」と「サヤなし」の枝豆、食べる量に違いがあるのか実験。枝豆を普通に食べてもらうため、とある男女4人に、飲み会での会話の様子を撮影させてほしいとウソをつき、飲み会の様子をモニタリング。制限時間は60分。カモフラージュのため、他のおつまみも提供。
まず「サヤあり」の枝豆500gを出したところ・・・60分後、残った枝豆をサヤから出すと、わずか18g。そして後日。前回と同じ4人の飲み会に、今度は「サヤなし」で出します。もちろん、他のおつまみも前回と一緒。こうして60分後、残した豆の重さを計ってみると、なんと128g!サヤありの時と比べると、その差は歴然。念のため、他の4人でも実験したところ、残った枝豆の量は「サヤあり7g」「サヤなし80g」と、やはり「サヤあり」の方を沢山食べたんです。では、どうしてサヤがあると沢山食べるのか理由を聞くと、どうも、自分の手でサヤから豆を出すことにヒミツがあるようです。
そこで、手で触る「触覚」について研究している専門家に伺うと・・・「枝豆を食べる時、サヤから豆を押し出す感覚が人を気持よくさせているのでは。パソコンや携帯電話のボタンなどを押した時のことを考えると、ボタンを押すと力がクッと抜けて軽くなる瞬間がある。そこが気持ちよく感じるんです。枝豆も同じで、最初力が強いが、クッと抜けてまた強くなる、この感じが気持ち良いのではと考えられる」という。
本当にそんなことが関係しているのか?そこで、キーボードやボタンを製作しているメーカーに行ってみました。
ボタンを作る際、計測しているのが「クリック感」と呼ばれる押し心地。ボタンに力を加えていった時、ある瞬間でボタンを押す力が少なくなります。この部分が「クリック感」。このクリック感があると、人は気持ちいいと感じるんです。では、枝豆にもそのクリック感はあるのか?メーカーの社員立ち会いの下、普段はボタンを測る装置で「枝豆のサヤを剥いた時の感覚」を計測してみると・・・ 結果はなんと、クリック感の強さを表すクリック率は80%超え!これはかなりの気持ちよさだそうです。
人を気持ちよくさせるクリック感があるため、枝豆はサヤ付きの方が良いのだ!
③簡単!手間なし!「蒸し焼き」で枝豆がおいしくなる?
枝豆で何よりも知りたいのが「おいしく食べる方法」。そこで向かったのは、ミシュランガイド1つ星を獲得した高級料亭。ここでは、豆の様子を見ながら、つきっきりで茹で加減に気を使い、味見をしながら一番豆がふっくらした状態を見極めます。そして、茹で上がった枝豆を氷水に5〜6秒つけます。こうすると枝豆の実が締まり、食感が良くなるそうです。枝豆が本来持つ、うま味や甘み成分のショ糖を逃さないように茹で加減を見極めているため、その味はまさに格別。でも、この方法を家庭でやるのは難しいので、もっと簡単においしくできる方法はないか聞いてみると、職人が答えたのは「蒸し焼き」。そこで主婦に、枝豆を蒸し焼きで作ってもらいます。
【蒸し焼き枝豆 作り方】
1.枝豆を水洗いし塩を入れ揉む。これで味付け完了
2.フライパンに枝豆を入れ、フタをする
3.弱火で7分間、水洗いの水分と枝豆の水分だけで蒸し焼きにしていく
4.途中フライパンをゆすり、まんべんなく火が通るようにするのがミソ
こんがり焼き色がついた、超お手軽な蒸し焼き枝豆は本当に美味しいの?そこで比較のため、普通に塩茹でした枝豆を作り、枝豆にこだわりを持つ男性10人に「A:蒸し焼き枝豆」「B:塩ゆで枝豆」を食べ比べてもらったところ、結果は、10人中9人がAの蒸し焼きの方が美味しいと判定!
一体どうしてなのか?専門家に聞いてみると・・・「蒸し焼きと塩茹ででおいしさが大きく異なるのは“糖の作り方”です。枝豆自身は元々、“麦芽糖(ばくがとう)”という糖を含んでおらず、これは加熱する過程で、酵素の働きで作られるものなんです」。
この麦芽糖を作る酵素は、50℃〜70℃の間で活発に働きます。塩茹では、沸騰したお湯に入れるので一気に熱が加わりますが、蒸し焼きは徐々に豆に熱が伝わっていくため、酵素が長時間働くんです。
蒸し焼き枝豆は、“麦芽糖”が沢山できて美味しくなるのだ!
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