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じゃがいも の科学
第1226回 2014年5月11日


 じゃがいもが今、大人気なワケを科学します! 

①新じゃがは春だけのものではない?

 ジャガイモといえば北海道!ではなく向かったのは九州!4〜5月、新じゃががとれるのが、長崎県島原市。この時期、新じゃがとして売られているじゃがいもは、ほとんど九州産なんです!長崎県は、圧倒的1位の北海道に次ぎ、およそ4%を生産する全国2位!掘り出された新じゃがの向こうにはまだ収穫前のじゃがいもの葉っぱが。じゃがいもは、へその緒のようなもので地上部分と繋がっていました。そして地上の茎以外に、地下にも地下茎と言う茎を持っています。これをストロンと呼ぶのですが、じゃがいもはストロンの先でデンプンが固まりになったもの。つまり実ではなく、茎の一部。なので当然、他に、花も実もあります!
 そしてこちらが、あまり見たことのないじゃがいもの実!中には、種が入っていて、ジャガイモは、この種から増やすこともできますが、現在は種イモと言われるイモを植えて栽培しています。
 長崎では新じゃがしか出荷していません。収穫したじゃがいもをすぐに出荷。実は、採れたてをすぐに出荷するものを新じゃがと呼んでいるんです!
 さらに、またまた意外な事実が!なんと新じゃがは、真冬を除き3月から10月まで出回るものだったんです!実は、じゃがいもはアンデス山脈という寒い地域が原産なので、暑さが苦手。そのため、暑さから逃れるように新じゃがの収穫は徐々に北上。最後は9月から10月に北海道で収穫されています。だからスーパーでは11月から2月ごろの真冬を除き、色んな産地の新ジャガが出回っているんです!

所さんのポイント
ポイント1
新じゃがの収穫は、桜前線みたいに、日本列島をどんどん北上するのだ!

②新じゃがと普通のじゃがいもの違いは?

 新じゃがじゃない普通のじゃがいもはどこにあるのか?長崎の農家、林田さんによると「北海道」との答えが。そこで今度は普通のじゃがいもを見に行くため日本縦断!訪れたのは、まだ雪が残る北海道倶知安町。畑は一面、雪景色。当然、じゃがいもは植えられてもいません。では、どこにあるの?地元農家さんに教えてもらった農業協同組合の貯蔵庫に伺うと・・・怪しげな光を放つ倉庫には大量のコンテナが…。コンテナの中にはじゃがいもがびっしり!一つのコンテナにおよそ1.3トン!そのコンテナが3400基!つまり、この倉庫には4420トンものじゃがいもがあるんです!!
 国内のじゃがいも生産量のおよそ8割を占める北海道。秋に収穫したじゃがいもを倉庫に貯蔵することで、採れない冬の間もジャガイモを出荷できます。我々がスーパーで見る、「普通」のじゃがいものほとんどは、北海道で貯蔵されているじゃがいものことだったんです!
 じゃがいもを貯蔵するため様々な仕掛けが、倉庫内で怪しげに光る緑色の作業灯。じゃがいもは、陽の光や蛍光灯の光に当たると緑に変色、ソラニンという毒を持つようになります。そのため植物に影響が少ない、緑色の照明にする必要があるんです。さらに、庫内の温度を2℃〜3℃に設定。温度が低いと芽が出ないという性質を利用して長期保存しているんです。こうして、北海道のじゃがいもは一年中、安定して出荷することができるんです。

所さんのポイント
ポイント2
新じゃが以外の普通のじゃがいものほとんどは北海道産の貯蔵されたものなのだ!

③ジャガイモには、どんな栄養が?

 子供の頃、よくお母さんから「野菜を食べなさい!」って言われませんでしたか?こんな時、じゃがいもってどうなんでしょうか?日本標準商品分類によると、じゃがいもは立派な野菜に分類されているんですが、街の人にじゃがいものイメージを聞いてみると…「カロリーがあるだけっていうか」「じゃがいもは栄養あんまり感じないです」との答えが。若い人達はジャガイモと言えばポテトチップやフライドポテトなどを連想し、あまり野菜としてのイメージはないようです。しかし専門家は…「じゃがいもっていうのは非常にビタミンCが多い」とのこと!それは確かめてみたい!ということで実験です。
 用意したのはうがい薬などに使うヨウ素液。このヨウ素液にビタミンCが多いレモンの絞り汁を垂らすと無色透明になります。これはヨウ素にビタミンCが反応することでヨウ化水素という無色の物質に変化したため。この性質を利用して、じゃがいもにビタミンCが入っているのか確かめてみます。
 こちらの液体は、じゃがいもをすりおろし、そのじゃがいものおろし汁を水に加えたもの。じゃがいも汁をヨウ素液に落としてみると・・・。なんとなく色が落ちてきました!さらにジャガイモ汁を加えると…今度は、間違いなく無色になりました!!つまりじゃがいもにビタミンCが確認されたんです!でも、じゃがいもって生で食べないですよね?そこで、薄くスライスしたじゃがいもを油で揚げ、ポテトチップを作りました。このポテトチップにどの程度ビタミンCが含まれているのか調べてみると…なんと生のじゃがいもよりもポテトチップの方がビタミンCの量が多くなったんです!
 専門家によると「じゃがいもの場合、大体8割が水分ですから加熱することでそれが飛んでしまってビタミンCが濃縮された。これが大きな理由です」。揚げることで、ビタミンCが増えたわけではありませんが、揚げてもビタミンCは十分残っていることがわかりました!つまりじゃがいもは、意外にもビタミンCを効率よく摂取できる『野菜』だったんです!

所さんのポイント
ポイント3
ポテトチップからビタミンCが採れるのだ!

④ジャガイモの美味しさの秘密は味が○○?

 じゃがいも料理の魅力を探るため、伺ったのはアンド・ザ・フリット。2013年12月にオープンして以来、行列が絶えないという、フレンチフライ専門店です。ここでは6種類のイモを使用、カットの仕方を変えて、全部で9通りのフレンチフライが食べられるんです。
 これもジャガイモなんですよ。紫色のノーザンルビーという品種。実はじゃがいもは、世界におよそ2000種!日本国内ではおよそ70種が栽培されています。
 そしてもう1店!自由が丘のポテトサラダ専門店では…マッシュポテトにトマトソースやカレーソース、醤油ベースの和風ソースなど様々な味を楽しめることも人気の秘密なんだそうです。じゃがいもが、色んな味に合いやすいのはあまり味に特徴がないからだというんです。それは本当なのか?実験してみましょう!
 用意したのは、じゃがいもの他に色んなおかずと合わせる主食、米、パスタ、パン。純粋に、本来の味だけを比較するため、それぞれ加熱調理した100gの食材に同量の水を入れミキサーにかけたものを用意。
 これらを、食べ比べてもらいどれが最も味がないかを判定してもらいます。判定員はこちらの3名!1人目は専門学校で栄養学を教える、大野先生。続いて2人目は野菜の専門家、野菜ソムリエのKAORUさん。そして最後は、野菜を活かしたイタリアンレストランのシェフ神保さんです。それでは食べ比べて頂きましょう!
 まずはAのじゃがいもから。やはりかなり味は薄いようです。この後、他の主食3種類も食べ比べてもらい最も味がなかったものは何か、聞いてみると、皆さんAのじゃがいもを挙げました!今度は味覚センサーで、じゃがいもの味を科学的に分析してみると…基本5味と言われる、甘味、旨味、酸味、塩味、苦味、どれをとってもジャガイモが最も数値が低かったんです!ほかの主食と比較しても、味に目立った特徴がなかったじゃがいも。そんなじゃがいもがなぜ、あれほどの大行列ができるほど人気なんでしょうか?専門家に聞いてみると…「じゃがいもというのは非常に味がシンプルですので塩味というのが非常に引き立ってくる」ポイントは塩味!塩は人間を含め、動物にとって必要不可欠。動物は、生きるために塩を本能的に求めます。シロイワヤギというヤギは岸壁についた塩をなめているのですが、実はここ…一つ間違えば命を落としかねない、絶壁なんです!これほど、動物は塩を欲するものなんです。突出した味のないじゃがいもは塩味を感じやすいため塩欲求を満たしてくれる最高の食べ物なのかもしれません!

所さんのポイント
ポイント4
塩の味を感じやすいじゃがいも料理なので、食べ始めるととまらなくなっちゃうのは、『塩欲求』も一役買っているかもしれないのだ!

⑤ジャガイモホクホクの秘密

 味以外にじゃがいも料理に魅力はないのか?そこでじゃがいも好きの女性、『イモ女』に集まって頂き、ふかしイモを食べながら、じゃがいもの好きなところを語ってもらうと、みなさん"ホクホク"という言葉でじゃがいものおいしさを表現していました。この"ホクホク"とは一体なんなのか?オノマトペ、擬音語擬態語の専門家によると、ホクホクとは柔らかくほぐれ崩れる食感のこと!そんな「ホクホク」は、おいしさを表現する言葉ランキングでも6年間の調査で、常に上位にランクインしています!一体じゃがいもはどの程度ホクホクしているのか?
 じゃがいもの他に、ホクホクと表現される食材。さつまいも、かぼちゃをそれぞれ串が通る程度まで茹でました。この三種類を専門機関に持ち込み、機械でホクホク感、つまり崩れやすさを測定します。数値が大きいほうが崩れやすいことになります。まずはじゃがいも。続いて他の2つもやってみると…食材が器具に張り付いてしまいました。計測機にかけただけで、見えてきた明らかな違い。サツマイモとかぼちゃには粘り気があるようです。結果を見てみると…じゃがいもがおよそ6.5ニュートンに対し、さつまいもはおよそ0.9ニュートン、かぼちゃに至ってはおよそ0.03ニュートンしかなく、じゃがいもがダントツで崩れやすかったんです!この理由を専門家に聞いてみると…「じゃがいもはさつまいもやかぼちゃに比べてアミラーゼという酵素の働きが弱い」。アミラーゼとは、デンプンを分解し糖に変える酵素。さつまいもやかぼちゃは、この酵素の働きが強くデンプンが糖に分解されやすいためベトベトとした粘り気が出ます。しかし、アミラーゼの働きが弱いじゃがいもはデンプンが粒のまま残るため、崩れやすくなります。この特徴が、口の中でもろく崩れやすい食感ホクホク感の秘密だったんです。

所さんのポイント
ポイント5
さつまいもやかぼちゃのようには、じゃがいもは甘くならないけど、ホクホクするのだ!




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