かがくの里・田舎暮らし
の科学
第1341回 2016年9月11日
自然をテーマに研究してきた科学者たちが集結し誰もがやってみたくなる、田舎暮らしを実践する長期実験企画。今回は真夏のピザパーティー・スペシャル!
①小麦の収穫までの軌跡!
去年11月。松村先生がかがくの里にまいた小麦。実は普通の小麦じゃなかったんです。一般的な国産の小麦は麺類に向いたものばかりで、パン用の小麦はほとんど外国からの輸入なんです。小麦といっても、品種によって粘りや弾力を生むグルテンの元となる、タンパク質の量が違います。
グルテンが多くできる小麦は強力粉と言って、パンを作るのにぴったり。グルテンがあまりできないものは薄力粉や中力粉になりお菓子やうどんなどを作るのに、向いています。これまで、日本では、気候などの関係で、パン作りに合った強力粉の品種が育ちにくかったのですが長い間、試行錯誤してきた品種改良が近頃、ようやく成功!グルテンが多く、日本の気候に合う品種が次々と生まれました。かがくの里にまかれた「ゆめかおり」も パン専用の品種だったのです。
パンが焼ける日を夢見ながら収穫まで成長を見守ること7ヶ月。小麦は立派な穂をつけてくれました。そして迎えた6月中旬、小麦は美しい黄金色に実りました!いよいよ収穫。刈り取りは手作業。暑さに耐えながら、麦を刈ること2時間。収穫できた小麦は16袋!小麦粉にする前に、水分を抜く必要があるそうで、2週間ほど干して乾燥させます。乾いたら、穂を足でこするように踏むんです。これが脱穀。これで穂から実の部分が外れるんです。実が外れたとこころで、藁を取り除いてトレーの中へ。このように振ると、軽いもみ殻と実が分かれていくんです。すべて手作業で脱穀もなんとか終了。収穫できた小麦は、全部で14キロでした。あとは「製粉」。これを小麦粉にするだけですが、製粉は手作業では出来ないので、地元の製粉工場に協力してもらいました。
けれど、思い出すのは、小麦畑を襲った、あの危機・・・。今年5月、電気柵で守られていたはずのかがくの里にイノシシが侵入。作物を掘り返され、大切に育てていた小麦の一部がなぎ倒されてしまいました。イノシシに突破されてしまった電気柵は整備したものの、いつまた、イノシシが襲ってくるかわかりません。そこで、この被害を受けて市からかがくの里に派遣されてきたのが狩猟免許を持つ現役のハンター・地元猟友会の皆さんです。今回、イノシシ対策のひとつとして、山に罠を仕掛けることに。荒れ放題の裏山はやはりイノシシの痕跡だらけ!
今回仕掛けるのはイノシシ用のくくり罠。これなら踏んだ瞬間にワイヤーが足をはさみイノシシは逃げられません。罠をイノシシが通りそうなポイント2箇所に設置。見守っていくことになりました。すると猟友会の中川さんが阿部さんに渡したいものがあるというのでついていくと…中川さんが仕留めたイノシシのお肉をおすそ分け。ありがとうございます!
小麦にイノシシ!これが、科学でどんな料理に生まれ変わるのか楽しみなのだ!
②料理専門の美人科学者がイノシシ肉のベーコン作り!
7月下旬。料理科学の専門家・露久保先生に収穫したものと、地元猟友会の方にいただいたイノシシ肉をどう料理するか相談していました。すると露久保先生が手作り燻製器でベーコンを作るという提案が。燻製器から簡単に手作りできるのか…イノシシベーコン作りスタート!
まず肉に塩を揉み込み、下味をつけます。冷蔵庫で一週間寝かせたのち、肉を水に漬けます。塩抜きして余分な塩分を抜きます。脱水シートにくるんで、しっかり水分を取り、いよいよ燻製にしていきます。実は、家にあるもので簡単に、お手軽燻製器が作れるそうです。用意するものは大きめのダンボールと焼き網だけ。まず、ダンボールの向かい合う側面に、同じ高さで切れ込みを入れます。
その切れ込みにこんな風に焼き網を通せば完成。次に用意するのは、燻製用のスモークウッド。火は出ずに煙だけが出るもので、ホームセンターなどで簡単に手に入るそうです。イノシシの獣臭さを消すための香りづけとして、香りの強いピートパウダーをふりかけ、その上に燻製器をセットします。後は、肉を並べてじっくりスモークするだけ。待つこと2時間…イノシシのベーコンが完成!ベーコンにすることで、日持ちもよくなり、旨みもぎゅっと凝縮します。
③小麦粉とベーコンと夏野菜で手作りピザ作り!
イノシシベーコンが出来上がった翌日、科学者の皆さんには、ある計画が。小麦も収穫、イノシシベーコンも出来たことだし、かがく里の恵みを地元の方にも振る舞おうという素敵な計画!そこで、製粉した小麦粉で、松村先生念願のパンとピザを作ります!パンの生地の材料は風通の小麦粉とかがくの里特製の小麦粉。
普通に売っている小麦粉は、実の中心にある「胚乳」という部分だけを粉にするので、真っ白になるんですが、今回、かがくの里特製の小麦粉を製粉するときに、あえて小麦を丸ごとすりつぶしてもらいました。普通は、捨てる部分の表皮や胚芽もすべて粉にする全粒粉。全粒粉は、真っ白な小麦粉よりも、料理や加工が少し難しく、手間が掛かりますが栄養満点。ということで、美味しくて栄養たっぷりのかがくの里特製パンを作っていきます!
全粒粉だけではパンがふくらみにくいので、強力粉と混ぜて、栄養と美味しさの「いいとこどり」。あとは一般的な作り方と同じ!材料を全部混ぜあわせて・・・、生地をよくこねてから、30分休ませ、発酵させます。発酵が終わったら、パンの形にしていく作業!さらに発酵させた後、表面に卵を塗って、あとは焼くだけ。続いてはピザです!パンと同じやり方で作った生地に具をトッピングしていきます。野菜は全部、ここ常陸太田のもの。オープンしたばかりで大賑わいの道の駅で手に入れた新鮮な地元の野菜。そして特製のイノシシベーコンに加えモッツァレラチーズも露久保先生の手作り。それぞれが思いを込めてピザのトッピング。ピザやパンを焼くのは、もちろん阿部さんが作った窯。そして実はもう1台!阿部さんの窯と同じ原理ですが、焼き窯をロケットストーブに乗せるだけの、お手軽な窯が。
実はこれ、阿部さんの窯作りに創作意欲を刺激された松村先生が農作業の合間にコツコツ作っていたものでした。この2台の窯で、ピザを焼いていきます。完成したのは、露久保先生が作ったトマトとチーズがたっぷりのピザ。そして松村先生作ベーコンがたっぷり乗ったボリューム満点のピザ!地元の皆さんと一緒にいただきました!そして、前回はピザ1枚に1時間もかかっていた阿倍さんの窯も15分でパンも香ばしくてもちもちの食感に!全粒粉なので栄養も満点で皆さんに大好評でした。
美味しい料理で、地元の方と大盛り上がり!秋にはさらに盛り上がる大収穫祭が待っているのだ!
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