放送内容

第1398回
2017.10.29
○○すぎる動物 の科学
[Part4]
地上の動物 水中の動物

 世にも不思議な生態を持った数多くの動物たち。
 これまで番組では、細長すぎる魚、「チンアナゴ」や、カラダの毛がモフモフすぎる「アンゴラうさぎ」など、見た目や生態が○○すぎる動物たちをご紹介してきました。そして、それらの動物たちは将来、人類の役に立つ驚きの可能性を秘めていることも明らかになりました。今回も、そんな◯◯過ぎる動物たちを徹底解明!ちょっと気になるアニマルシリーズ「○○すぎる動物たちパート4」です!

美しいのに恐ろしすぎる!強烈キック「ヘビクイワシ」

 やってきたのは…静岡・掛川市にある「掛川花鳥園」。お目当ては…スラリと伸びた長い脚に、鮮やかな色の顔、そして長いまつ毛が特徴的な鳥「ヘビクイワシ」。フクロウやワシと同じ猛禽類の鳥です。野生ではヘビなどがエサなんですが、狩りの姿がとにかく“恐ろしい”とのこと。普通とは一味ちがう、その恐ろしい“捕り方”とは…?目の前には、ヘビに見立てたおもちゃが。すると…長い脚をつかって猛烈にキック!さらに、ただ蹴っているわけではなく、ヘビの頭をめがけて攻撃していました。

 ヘビが頭を上げたら…みごとな上段蹴りまで!でも、なぜこのような方法でエサをとるのでしょうか?飼育員さんによると「ヘビクイワシの生息地であるサバンナの方ではあまりエサが取れない。そのため、効率よく餌を探して仕留めるためにできるだけ自分も歩いて生活をしてすぐに仕留めに行けるように進化したのでは」と解説。そこで、より野生の状態を見るべく、人間が操るおもちゃではなく、より生きたヘビの動きに近いロボットを置いて、さらに観察。すると…先ほどは見られなかった、羽を大きく広げて、ヘビを牽制する姿が!そして、強烈なキック!しかも、なんとキックの衝撃でヘビのカラダが真っ二つに!
 実は、ヘビクイワシの羽には血管が通っておらず、羽を盾にすることで毒蛇の攻撃を防いでいたんです。

 では、このキック力は一体どれくらい強力なのでしょうか?そこで実験!用意したのは、板に設置した割り箸。これを地面に置き、瓦割りの要領で蹴ってもらいます。一本ずつ本数を増やし、何本折ることができるのか?検証します。そのまま蹴ると鳥がケガをしてしまうので、マットを敷いて行います。まずは、4本まで挑戦!さっそく実験スタートです。キックが割り箸にヒットしたら、次の割り箸へ挑戦していきます。結果、1本と2本は余裕でクリア。そして3本・4本もクリア!その後8本まで挑戦し…結果、5本の割り箸まで折ることができました。

 さらに、このキック力を数値化すると、一体どれほどの力があるか?計測器を使って詳しく調べます。あわせて8回蹴ってもらった結果…最も強いキックで444ニュートン。これは、カナヅチで釘を打つ強さに匹敵します。
 では、スラリとした細長い脚でなぜあんなに強力なキックを繰り出せるのでしょうか?生物の構造を工学的に研究する、千葉大学・大学院工学研究科機械系コースの中田敏是特任助教授に聞いてみると…「秘密はその骨格にある。ヘビクイワシの足の骨は、同じサイズの鳥と比較して1.5倍から2倍程度と非常に長い。そのような長い足をもつおかげで、振り下ろした際に足の先端速度が増して獲物に対して力強い蹴りを加えることができる。そのほかにも、筋肉のサイズ、配置などが、力強く、しかも正確に獲物に対して蹴りを加えるために最適化されていると考えられる」と解説。

 さらに、ヘビクイワシには人類の役に立つ"ある可能性"が…中田先生によると「ヘビクイワシは、華奢な体でありながら、立ったままの姿勢で、とても力強く正確な蹴りを獲物に加えることができる。そのため、ヘビクイワシの蹴りの仕組みを解明することで、人間の義足の進化につながるということが考えられる」と解説。ヘビクイワシの"蹴りの仕組み"をヒントに、近い将来、細くてもとても大きな力に耐えられる義足や、高額な義足の構造をシンプルにし、より安く作れる可能性があると考えられるそう。

ポイント1

サバンナで生き残るその生態には、人間の生活に役立つ大きなヒントが秘められていたのだ!

さかなクン大注目!頭の吸盤でくっつく「コバンザメ」

 コバンザメとは一体どんな魚なのでしょうか?そこで、この人に聞いてみました!魚をこよなく愛する、魚類学者「さかなクン」。さかなクンによると、コバンザメはいろんな魚にくっついて移動する“ちゃっかり者”。
 コバンザメとは、大きな魚にくっついて生活をする魚。詳しい生態を調べるべく、アクアワールド・大洗へ向かいました。飼育員さんの案内で、コバンザメがいる水槽へ。大水槽のなかには、約80種、2万匹もの魚が展示されています。では、大きい魚にくっつくコバンザメは一体どこに?

 あれ?魚ではなく、壁にくっついていたんです。これは一体…?
 さかなクンによると、「くっつく相手がいないときは、水族館の水槽だと、壁にくっついている」という。なんと、コバンザメがくっつくのは何も大きな魚やウミガメなどに限らないんだそうで…壁にくっつくこともあるそうなんです。さらにここで、ある意外な事実が!実はコバンザメは、サメの仲間ではなく、タイやアジが属する、スズキ目の魚。サメとは骨格の性質も異なる別種類の魚だったんです!

 では、一体なぜこのような名前がついたのでしょうか?さかなクンによると、「名前の通り頭に小判型の吸盤があるっていうあの特徴は他のお魚にはなかなかない。頭に吸盤がある魚っていうのはぱっと思い浮かばない」と言うんです。さらに水族館の飼育員さんによると、「形もサメに似ているような形をしているのでどうやらサメという名前がついてしまった」と解説。
 そう、頭の特徴的な部分が、コバンの由来。ここが吸盤の役割を果たしており、魚や壁にくっつくことができるんです。また泳いでいる姿は、たしかにサメに似ていますよね?そしてコバンザメ最大の特徴であるこの吸盤、実は…コバンザメの吸盤は、一般的な魚の背びれが変化したものなんです。
 吸盤は、一般的な魚の“せびれ”にあたり成長するにつれ、吸盤へと形成されていきます。つまり、水槽越しに見えているのは、お腹ではなくコバンザメの「背中側」になるんです!くっつく理由は、自分で泳がずに移動できたり…強いものにくっついて、外敵から身を守ったりするため。さらに…なんと、くっついている魚が食べるエサの“おこぼれ”をもらえるというメリットも!

 他にも、さかなクンによると…「お魚は水の流れに逆らって泳ぐため、くっついているだけで水が口の中に入ってきて息もしやすい。そして1匹だけでなく数匹でくっついていれば、子孫を残す時に相手を見つけやすい。結婚しやすい」と解説。知れば知るほど、不思議な生態を持つコバンザメ。その姿を水槽越しではなく間近で見るため、今回特別に、後藤アナが水中から観察!果たして、水中で目にするコバンザメの姿とは?すると…コバンザメが間近に接近!「くっつかれたらどうしよう」と思いながらも、吸盤はもちろん、全身の質感までしっかりと観察することができました!

さかなクン大興奮!コバンザメの吸盤を徹底検証!

 コバンザメの吸盤の謎をさらに調べるため、向かったのは…京都大学フィールド科学教育研究センター「舞鶴水産実験所」。教えてくれるのは、魚類の分類学を研究している、甲斐嘉晃先生。手のひらサイズのコバンザメを使って、吸盤について教えてくれます。コバンザメの吸盤に並んだ、筋状の板。吸盤をくっつけた時、この板を立てるように動かし、中の圧力を下げることによって接着するという仕組み。

 ここで後藤アナが、手のひらサイズのコバンザメで吸盤を体感!すると…後藤アナの手にピッタリとくっついてきました。そして、もう1つ驚きの特徴が!甲斐先生によると「コバンザメは基本的に速く泳ぐ魚にくっついているため、引っ付いて 泳ぎ行っているので、前からの力にはすごい強いけれど、逆に後ろからの力には弱い」と解説。試しに、魚が泳ぐ方向へ動かしてみても、まったく離れませんが、逆方向に動かしてみると…確かに吸着力は、片方に対しては強く、もう片方に対しては弱かったんです。
 そこで、様々な材質の板を用意し、実験です。それぞれの板を水中に設置し、コバンザメがくっつくのか検証します。まずはコルクで実験。コバンザメは近くにあるものにくっつく性質があるので、コバンザメを板に近づけてみます。すると…見事くっつきました! 続いては、発泡スチロール。早速検証してみると…発泡スチロールにもしっかり吸着!続いては、断熱材。コバンザメに近づけてみると…断熱材には、くっつけず!この理由について甲斐先生は、「細かい穴で水が出入りしてしまうんだと思う」と解説。そして最後は…デコボコした壁材。こんな凸凹にもくっつくことができるのでしょうか?
 すると…壁材にも、見事くっつきました!結果は…コルクと発泡スチロール、そして壁材はくっつきましたが、断熱材はくっつきませんでした。

 甲斐先生によると、近い将来、コバンザメの吸盤の性質を応用しひょっとしたらお風呂場でも絶対に取れない吸盤などができるかもしれないと言うんです。

ポイント2

人任せな魚でも、人に役立つ可能性を秘めていたのだ!