第1403回 2017.12.03 |
かがくの里・田舎暮らし の科学[収穫祭3] | 人間科学 食べ物 水中の動物 |
3年目となった2017年11月のかがくの里。今年も秋の豊かな自然の中で、里山の恵みを存分に味わう「かがくの里3回目の大収穫祭」を開催。今回は完結編!
エビの養殖プロジェクトの結果は?
2017年のビックプロジェクト、エビの養殖が動き出したのは、雪が降る1月下旬。魚養殖の専門家、千葉先生と阿部さんはインドネシアで行われている最先端のエビ養殖を視察!マングローブの横に水路に養殖場の池が掘られ、そこでエビを育てていたんです。実はこれは最先端の養殖方法。マングローブの葉が水路に落ちて、それを分解する微生物が増え、プランクトンも増えます。そのプランクトンがエビのエサになるんです。つまり人がエサを与えなくても自然循環の中でエビが育つということ。
自然を生かし、環境にも優しい最先端の養殖を実践する、日本初のプロジェクトが、かがくの里で動き出しました。栄養豊富な田んぼの土からプランクトンが発生。自然に増えたプランクトンでエビを育てる計画。通常、養殖エビのエサは天然の魚。実は1キロのエビを養殖するのに、1キロ以上の天然の魚がいるんです。つまり海の資源をどんどん使っちゃっているってこと。この点で、かがくの里で行うエサを与えないエビ養殖はとっても意味があるんだそうです。里の水路で育てるエビは淡水でも育つオニテナガエビに決定!6月中旬、試しにエビを放流。そして7月上旬、5000匹の赤ちゃんエビを田んぼの水路に放流。予備的にカゴに入れてエビを水路の中にいれておいたモノを見ると2倍の大きさに育っていました。
では、後で放流した5000匹の赤ちゃんエビたちはどうなったんでしょう?放流した稚エビは1センチ。大きいものでは5センチになりましたが、残念なことにあまり大きくなっていないエビも多いみたい。
どうして、計画通りに大きくならなかったのでしょうか?千葉先生によると、自然循環型の養殖は、餌を与える養殖に比べ、予想以上にエビの成長速度が遅かったよう。ちゃんと育ちはしましたが、もっと大きくするにはもっと長い期間が必要だったみたい。千葉先生も初めての挑戦だったので、もう一つ誤算が、収穫祭の準備の時に発覚。水路にいるエビを捕まえようとした時、なぜか、なかなかエビが見つからない。5000匹もいた稚エビがたったの200匹程度に減っていました。その代わりに、大漁だったのが魚。
実はこの魚、去年の6月、かがくの里で放流した淡水で育つ高級魚、ホンモロコ!今年は放流していないのに、去年放したホンモロコが自然に繁殖、2世代目が育っていたんです。つまり、里の環境が良かったため、こちらも想像していなかったほどホンモロコが繁殖。知らないうちに水路に増えていたことで、放した稚エビの多くは、ホンモロコに食べられちゃったみたい。
わずかに生き残ったエビたちを北大路魯山人の直系の弟子にあたる和の巨匠・笹岡隆次さんに調理して頂きます。今回作るのは、ちらし寿司。具材はかがくの里で採れたものばかり!5月、かがくの里で初めて挑戦したうるち米、新品種の「ゆうだい21」。美味しく炊き上げたゆうだい21を酢飯にしてゴマ、にんじんを加えよく混ぜ合わせていきます。続いて、収穫祭でも美味しいことを食べて確認済みのサツマイモ、安納芋。サツマイモはお酢と相性がよく、ちらし寿司にほんのりとした甘みを加えてくれるんです。そして、今年の大雨にも負けずにぐんぐんと成長、たくましく育ったラッカセイ!歯ごたえのある食感がちらし寿司のアクセントに。そして果実の専門家井上先生が見つけてくれた梅!忘れられたこの梅を、調理科学の専門家、露久保先生が梅干しにしてくれました!そして今回の一番の目玉、オニテナガエビ。お酒でシンプルにいることで、エビの旨味を逃すこと無く泥臭さを抜いていきます。そして稚エビを食べて、増えたホンモロコ。せっかくなので、2世代目のホンモロコも入れちゃいます。片栗粉を軽くまぶして、油でさっと揚げるだけで、ちらし寿司に美味しさをプラス。
最後に、彩りよく全ての具材を盛り付けていき、かがくの里の恵みが詰まった、特製ちらし寿司のできあがり!
オニテナガエビは物足りなけど、他でカバーできたのだ!
2018年の養殖プロジェクト「ウナギ」
千葉先生が2018年にかがくの里で行う養殖は「ウナギ」。この池でうなぎの養殖にチャレンジする理由には、日本を救うかもしれない壮大な計画が!
数が減り、3年前絶滅危惧種に指定されたニホンウナギ。今は、天然ウナギの稚魚を捕まえて養殖しているんですが、稚魚を獲るのが制限されると、ウナギが食べられなくなるかも!卵からの完全養殖はまだ難しく、育てたメスを海に放流して卵を産ませ、うなぎの稚魚の数を増やすのが近道なんですが、実は、養殖のうなぎは、99%がなぜかオスになってしまうそうなんです。
稚魚の頃は性別が決まっていないうなぎ。どんな風にオスメスが分かれるのかも、分かっていないんです。千葉先生によると、かがくの里の池は自然に近い形だからメスができる可能性があり、学術的には有用な研究になる、とのこと。ホンモロコが自然繁殖したり、絶滅危惧種のタガメが発見されるなどとても自然に近い環境だという里の池でうなぎを養殖しながら、オスメスが分かれるメカニズムを明らかにし、さらに美味しく食べちゃおうという欲張りなプロジェクトです!
そして阿部さんからも新プロジェクト「里山再生プロジェクト」を発表。去年、2017年、阿部さんはヘルニアになってしまい農作業はなんとかできましたが、山仕事は難しく里山の整備ができない状態でした。収穫祭の直前にヘルニアが完治したみたいなので、地元、森林組合の方に協力して頂き里山整備をようやくスタートさせました。まず必要なのは木を間引く、間伐という作業。日あたりを良くすることで、イノシシが里に近づくことを防ぐことができます。2年越しの始動です!
かがくの里はどんな進化を遂げるのか?楽しみなのだ!