放送内容

第1432回
2018.07.01
かがくの里・田舎暮らし の科学 場所・建物 水中の動物 自然・電波・鉱物・エネルギー

 自然がテーマの科学者たちが未来に繋がる楽しい田舎暮らしを目指す長期実験企画「目がテンかがくの里」2018年!

“ひょう”が降って大豆がピンチ!

 去年、豆腐や味噌、もやしと大活躍だった大豆を「枝豆」にして食べたい!ということで、4月に枝豆に向いた品種の種を撒きました。
 でも、発芽したばかりの「子葉」と呼ばれる葉は栄養価が高く、鳥に食べられちゃいます。農業の専門家・高橋先生は、鳥よけ用のネットをかけて、葉を鳥から守ります。そして1か月後の5月、鳥に食べられない大きさまで葉が育ったので、ネットを外したその日…突然、大粒のひょうが大量に降ってきました!
 直撃を受けたはボロボロの状態に。中には、茎だけになってしまったものもあります。

 高橋先生も「相当、収穫には影響する」と言います。しかし、この後に「複葉」が出てきて復活するので、まるまる枯れることはないそうです。北関東では5月頃、ひょうがよく降るそう。ひょうの原因となるのは、上昇気流によって生まれる積乱雲。とても冷たい積乱雲の中で小さな氷の粒が生まれ、上昇気流で落ちてこられない氷の粒は、積乱雲の中でどんどん大きくなっていきます。氷の粒は上昇気流では支えきれないほど大きくなり、最後にひょうとなって落ちてくるのです。

 かがくの里がある茨城県では、ひょうの被害が特にひどく、昨年は例年のイノシシ被害を超える2億円以上の農業被害を出しました。

 そんな梅雨入り前の6月に、佐藤アナが初潜入!この日の作業は、田植え機を使っての苗植えです。田植えをまっすぐに行うと、除草や収穫が楽になり、生育が均一になりやすいのです。まずは佐藤アナが田植え機に初挑戦。

 滑り出しは上々でしたが、徐々にずれていきます。田植え機は、車輪が泥にとられて曲がりやすく、ハンドルを小刻みに動かす必要があります。続いては、昨年トラクターで水路を破壊する大惨事をひき起こした阿部さんが挑戦。その結果は…まっすぐに植えることができました!

 まさに失敗は成功の母!
 最後に、機械が入れない端の方は手で植えて終了。秋の実りが楽しみです!

ついにウナギを放流!

 続いては、かがくの里2018のビッグプロジェクトのひとつ、ウナギの養殖!里に放流されるウナギを見るために、北里大学の千葉先生の元に。すると、ウナギの赤ちゃんはシラスウナギから成長し、クロコウナギと呼ばれる、黒くてウナギらしい姿になっていました。大きさは5cm程度のもう少しで放流できるサイズです。

 この時、千葉先生からウナギのすごい能力について教えてもらいました。ウナギには、水の流れに対して向かっていくという“正の走流性”があります。なんと、栃木県の中禅寺湖にある華厳の滝をクロコウナギが登っていくというのです!どのようにしてそんな滝を上るのでしょうか?そこで、華厳の滝に見立てた70°という急角度の木の板を使って実験。
 木の板をウナギの水槽に入れ、ポンプでくみ上げた水を上から流し続けます。ウナギは夜行性なので、部屋を暗くして暗視カメラで観察することに。すると早速、水の流れに反応して蛇のようにニョロニョロと上り始めました。

 ウナギたちの上りたい意欲は強く、壁に張り付きながら少しずつ上っていく様子が数多く見られました。
 この実験では坂を上りきったウナギはいませんでしたが、分かったのは、ウナギは滝を泳いで上るのではなく、裏側の岩壁をニョロニョロと上っていく、ということ。でも一つ疑問が・・・。滝の裏側ということは、直接水に当たっていない所を上ることになるのですが、ウナギは大丈夫なのでしょうか?実は、ウナギは他の魚と違い、普段はエラから水中の酸素を受け取って呼吸をしているのですが、非常時には皮膚呼吸で酸素を60%ほど取り入れているというのです。ウナギは、ヌルヌルの粘液で体を乾燥から守りながら、皮膚呼吸で酸素を取り入れます。この能力のおかげで、滝の裏側のように湿度の高い場所なら、問題なくずっと生きていられるそうです。

 そして6月中旬、ついにウナギを里に放流する時が!実はウナギは、体長が20cm程度になる頃に性別が決まるため、放流する時点では性別がないのです。しかし、一般的な養殖場の生け簀で育てると、不思議なことにほとんどがオスになってしまいます。そこで、かがくの里のような自然環境に近い「ため池」で養殖すれば、オスとメスが半々になるのではないか、という実験でもあるのです。そして、里で生まれたメスウナギを川へ放流すれば、現在絶滅危惧種となっている二ホンウナギを増やせるのではないか、という壮大なプロジェクトの第一歩でもあるのです!

 いよいよ、ウナギを里に放流し、養殖がスタートしました!さらに、千葉先生はスジエビという在来種のエビも放流しました。このスジエビをウナギが食べれば、自然環境に近くても早く大きく育つのでなないか、という狙いです。目がテンがこれまで放流した生き物たちと一緒に、環境も復活したらいいですね!

間伐材で食器作り!

 続いては、今年から本格的に取り組み始めた、長年放置されていた裏山をよみがえらせる“かがくの里山再生プロジェクト”!木材利用の専門家、京都大学の村田先生と一緒に、間伐作業で切り出した木を活用していきます。
 第一弾となる今回は、日本各地の里山を代表する広葉樹“コナラ”。

 コナラは伐採しても枯れず、萌芽更新と言って切り株から新しい芽が出て伸びるのが特徴。成長スピードがとても速いため、昔から薪や炭などの燃料として役立ってきました。
 しかし村田先生は、燃料とは違う活用方法を考えている様子。先生が連れてきたのは、木材加工のプロフェッショナルである中島さん。コナラを加工して作るのは・・・秋の収穫祭に向けて里の恵みや料理を盛り付けるためのサラダボウル!
 中島さんの手ほどきを受けて、まずはチェーンソーで丸太を器型に荒く削り出します。そしてここからは、ウッドターニングという方法で正確に掘り出していきます。まず、器型に切り出した木の中心に器具を取り付け、木工旋盤という機械を差し込むと、クルクルと回転するようになります。さらに、先だけが刃になっている、大きな彫刻刀のような道具を使って、木を削っていきます。ウッドターニングは、機械で高速回転する木にこの道具を当てて削り、陶芸のろくろのように形を削っていくのです。
 阿部さんが、中島さんにも手伝ってもらいながらチャレンジ!最初は難しそうでしたが、コツをつかんだ後はきれいに丸く削ることができました。

 続いて裏側は、もっと大変です。器の厚さは2cmほどで貫通したら一巻の終わりです。慎重に削り続けること1時間・・・そしてついに、かがくの里で間伐したコナラでサラダボウルが完成!見事な出来栄えのサラダボウルができました!