放送内容

第1433回
2018.07.08
人物ファイル・亀仙人 の科学 地上の動物 水中の動物

 世の中には、常人にはちょっと理解できないほど研究に情熱を注ぐ探求者がいます。目がテンでは、そんな探求者を番組独自のファイルにすべく、研究者からマニアまで、候補者たちに密着します!
 第二弾の「目がテン!人物ファイル」は、「カメ」を追い続ける平山廉(れん)教授に迫ります!

潜入!化石だらけのカメハウス!

 早稲田大学の平山先生を訪ねたのは、東京都の杉並区。先生の秘密基地だというマンションの一室に案内してもらうと・・・そこは、カメがたくさん飼育されている、通称「カメハウス」でした。現在飼育しているカメは、13匹。さらには、冷凍されたカメが100匹近くもいます。そう、先生の専門は「生きたカメ」ではなく、その「骨」!山積みされた箱の中には、1000点以上のカメの化石と骨格が収納されています。
 平山先生は、カメの化石を求めて、これまで世界20か国以上を調査し、なんと、17種類の新種を発見してきました。中でも、…ブラジルで発掘した、世界最古となる1億1000万年前のウミガメの化石は、権威ある科学誌「ネイチャー」に掲載され、世界を驚かせました。

 カメは、恐竜と同じ時代を生き、今も生き延びている生物です。そのため、カメの化石を見ると「恐竜の時代の環境」が分かってくると言います。カメの甲羅は丈夫な骨でできていて、化石として残りやすく、化石として見つかっているカメは1000種類以上もいます。平山先生は、今も生存する300種類のカメと化石を比べて、その生息環境を推測することで、地球の歴史を解読するのだと言います。
 平山先生がカメの化石を研究するようになったきっかけは、父親からもらった古生物図鑑。まずは、恐竜の研究を決意し、古生物を学べる亀井教授に師事しますが、「誰もやっていないから」という理由でカメの化石の研究を始めます。いざ研究を始めると、恐竜が生きていた時代のカメの化石を次々と発見し、化石を通して、恐竜が生きていた時代の環境が少しずつ見えてきたのです。

 「カメ使うとこんなおもしろい研究ができるのか」と研究に没頭し、以来40年もカメの化石に従事。まわりの石を溶かして化石だけを取り出す方法も、編み出して、61歳になった今も、カメの化石から恐竜に想いを馳せています。

究極の省エネこそが、カメの生存戦略!

 この日、世界14カ国から45人の研究者が来日し、「カメの進化」に関する研究発表のための「国際シンポジウム」が開かれました。1983年以来、世界各国で開かれ今年で6回目。そのすべてに参加している唯一の人物が、平山先生です。各国の研究者たちも、「平山廉先生はとても有名で尊敬できる科学者だ。世界を牽引するカメの研究者のひとりだよ」だと称賛します。

 翌日、先生は研究者を連れて、伊豆半島にある「イズー」に訪れました。「イズー」は、日本最大の爬虫類・両生類の動物園。爬虫類だけでも400種類、2000匹以上を飼育している、体感型の動物園です。カメに至っては、1000匹以上も飼育されていて、世界から120種類以上が集まる「カメの楽園」にもなっています。
 さらに、推定130歳、体重180キロもある「アルダブラゾウガメ」もお目見え。

 「イズー」は、日本最大の「ゾウガメ繁殖施設」でもあり、60匹以上も飼育しているんだとか。アルダブラゾウガメの、生後3ヶ月の赤ちゃんを見せてもらうと、信じられないくらいの小ささでした。
 すると突然、イズー名物の「カメレース」がスタート!海外の研究者もレースに大興奮していましたが、平山先生はカメの動きに注目します。平山先生は、この動きの遅さこそ、カメの生き残り戦略だと言います。

 カメにとって大事なのはエネルギーを無駄遣いしないこと。
 カメは動きが遅い分、種によっては数ヶ月のあいだ何も食べずに生きることができます。さらに、食べたものの8割を熱に変える人間や鳥と違い、カメは熱に変えずに全て栄養に使います。これだけで、食べ物を5分の1に抑えることができるのだとか。だから、環境が変わって食べ物が少なくなり、他の動物だったら飢えで苦しんだり餓死したりしてしまうような所でも、カメの場合は生き延びられるのだと平山先生は言います。ちなみに、人間は体温を一定に保つために、食べ続けなければならないのですが、カメはそれをしない手段を選んだため、常に暖かい場所でしか生きることができません。だから、今の日本で野生のカメが生きられるのは、関東地方が北限だと言われています。カメは究極の省エネ家だからこそ、恐竜の時代から生き延びてこられたのです!

いざ、化石発掘で大発見!

 平山先生の化石発掘に密着するためにやって来たのは、岩手県にある久慈市。やる気マンマンの大ベテラン、森アナが発掘にチャレンジします!
 先生が6年前から発掘調査をしているという、秘密の発掘現場に案内されると、そこにはカメが見つかりやすいという、火山灰の下の地層が掘れる場所がありました。

 ここは9050万年前からある地層で、恐竜の時代の古い岩なのにボロっと崩れるやわらかいのが特徴。一般に、日本の古い時代の地層は圧力やマグマの熱の影響を受けるため堅くなりますが、ここはすごく柔らかいままなのであまり圧力も熱も受けていないのです。このような場所は、大変珍しく奇跡的な場所だそうです。しかし、いくらやわらかく、掘りやすい地層とはいえ、一日で簡単に見つかるものではありません。
 はたして、カメの化石を見つけられるのか?さっそく発掘開始!まずは、上にある地層を切り崩します。さらに、工事現場で使う削岩機を使って下にある地層を掘り出します。森アナも人生初の削岩機に挑戦!そして、切り崩したブロックを詳細に見ていきます。カメの化石は平らな状態で見つかることが多いのだそう。

 さらにアイスピックを使って、より細かく砕いていくと、森アナが何かを発見!先生に聞くと、植物の化石だそう。やはり、カメの化石は簡単には見つかりません。さらに発掘を進めていくと、今度は変わった石のようなものを発見!こちらは、9000万年前に生えていた木の樹液が固まった「琥珀」です。

 実は、久慈(くじ)は琥珀(こはく)の産地。古くから宝石や香料として重宝され、古墳時代には奈良まで運ばれていたと言います。
 しかし目指すは、琥珀よりカメ!森アナも必死に掘り続けますが、なかなか見つかりません。作業開始から3時間、入社22年目の森アナの腰にもダメージが蓄積されていきます。そこで、近くの博物館のスタッフに手伝ってもらうことに!発掘から5時間が経過・・・すると、平山先生が何かを発見したようです!それは、新種と思われるカメの甲羅。9000万年前の「アドクス」という種類のカメだと言います。

 この発見から、9000万年前の現在の久慈一帯は、カメがたくさんいて、おそらく今の熱帯だった、という証拠になるそう。平山先生は、カメの化石は、種類や大きさが分かると、どういう場所に住んでいたかが分かってくるため、日本や地球の成り立ちを知ることができる古文書のようなものだと仰っていました。今回見つかったアドクスは新種の可能性が高いということで、先生は今年中に論文を書き上げて、提出する予定でいます。正式に受理されれば、大発見ということになるそうです!