放送内容

第1441回
2018.09.09
かがくの里・田舎暮らし の科学 場所・建物 食べ物 水中の動物

 荒れ果てた土地を切り開き、科学の力で豊かな里山を蘇らせる、長期実験企画「目がテンかがくの里」2018年!
 今回は、夏野菜作り、そしてウナギの養殖の行方を追いかけます!

夏野菜のお世話は大変!

 今年の夏、かがくの里で初めて挑戦する「夏野菜」。栽培するのは、トマトやキュウリ、ナスといった定番の夏野菜に加え、スイカにゴーヤ、そしてトウモロコシです。夏野菜作りで一番大切なのは、水やりなど毎日の世話。そこで、阿部さんが1か月、つきっきりで野菜の世話をする「ひとり夏野菜生活」を始めることになりました。
 7月、野菜の世話の仕方を教えに来てくれた高橋先生と、畑の作物を見に行くと、スイカが間引きする予定だった一番果をカラスにやられていました。そこで、スイカに鳥よけ用の網を張って対策をします。続いて見に行ったキュウリは、ずいぶんとつるが伸びていました。キュウリの栽培方法は、支柱を立てて網を張ること。これで、つる同士が重なることなく、しっかりと伸びていきます。

 さらに、成長には欠かせない日当たりが良くなる効果も。そして、トマトやナスは、支柱に茎をひもで結わえ付け、実の重さで折れないようにします。と、その時、赤ちゃんサイズのトマトの実がなっているのを発見!その隣には黄色い花が咲いています。受粉すると、花がどんどん実になっていくのです。さらに、紫色のナスの花も。ナスやキュウリは、実のほとんどが水分です。だから、水をたっぷりやらないと、大きくならないのだそう。水やりをするペースは、朝と夕方の1日2回ほど。詳しく育て方を教えてもらったところで、阿部さんにカメラを渡して、ひとり夏野菜生活を自分で撮影してもらうことに。

 翌朝、阿部さんが撮影した映像を見てみると、キュウリのつるが網に巻き付くほど成長しているのが分かりました。水やりは朝夕2回。陽が高い日中に水やりをすると、太陽の熱で温まった水が夏野菜の根にダメージを与えてしまうのです。山の湧水を引いた水場は、畑まで距離があり、ホースが届きません。

 そこで、水場でバケツに水を汲み、畑まで運んでじょうろに移して水やりをすることに。1度の水やりで10往復も!これは、夏野菜で一番大事な作業。気温の下がる夕方にも再び10往復。ようやく作業が終了すると、里で採れたものを使って自炊をします。メニューは、ジャガイモの味噌汁とトウモロコシごはん。かなりシンプルですが、味は抜群!しっかり働くと、ご飯もより一層美味しく感じます。

ついに夏野菜収穫の時が!

 そして翌日、畑に作物を見に行くと、しっかりと水やりをしたかいもあり、小さなナスやトマトの実が、たくさん出来ていました!そして、初日にカラスにやられたスイカも順調に実を膨らましています。阿部さんが毎日いるおかげか、カラスも来なくなったようです。しかし、キュウリはというと、花は咲くものの肝心の実の部分が見当たりません。「花から実がなる」と聞いていた阿部さんも不安そう。そこで、高橋先生に見てもらうと…花の根元にわずかに膨らんだキュウリの実が見つかりました。キュウリは、1つの株に雄花と雌花の両方が咲きます。雄花が花粉をつけ、それをミツバチなどの虫が雌花に運ぶことで受粉し、雌花の根元が膨らんで実になるのです。

 しかし、花はそっくりな形をしているため、阿部さんは実がならない雄花ばかりチェックしていたようです。ともあれ、実は膨らみ始めているようで、あとは大きく育つのを待つのみです。
 あとは、ぐんぐん伸びて夏野菜の成長を脅かす雑草刈りを一時間。これで農作業がひと段落です。
 朝の仕事を終え、里で採れたジャガイモ「インカのめざめ」を使って肉じゃが作りを始めた阿部さん。と、その時、突然の強風が!風で火を強くすることができず、弱火でことこと1時間煮てようやく完成。苦労した甲斐あって、美味しくできました。

 阿部さんのひとり夏野菜生活は、ハプニングいっぱいで始まりました。
 その後、高橋先生や学生さんたちの助けも借りながら、キュウリもナスもぐんぐん大きくなっていきました。植えてからおよそ1か月、ついに収穫の時を迎えました!阿部さんも採れたてのキュウリを頂きます。音でも伝わるシャキシャキとした食感が美味しそう!そして、他の野菜も見に行くと…大きくてツヤツヤのナスが!ミニトマトも十分に収穫できる大きさ!ミニトマトは、へたが反り返ってきたら、収穫の合図なのだそう。そして、阿部さんが一番楽しみにしていた小玉スイカも、しっかりと大きくなっていました。カラスに襲われた時はどうなることかと思いましたが、無事収穫できました!早速冷やして、手伝ってくれた学生さんたちと一緒に頂きます。甘くて美味しいスイカになっていました!阿部さんのひとり夏野菜生活、色々ありましたが、豊作で結果オーライです!

一匹もいない!?うなぎ捕獲大作戦!

 かがくの里2018年のビッグプロジェクトのひとつ、うなぎの養殖の様子を見に行くことに。二ホンウナギは、生息数が減少し、絶滅危惧種にも指定されています。かがくの里で行う「うなぎ養殖」は、うなぎを絶滅の危機から救うかもしれない実験なのです。実は、一般的な養殖場の生け簀でうなぎを育てると、不思議なことにほとんどがオスになってしまいます。そこで、かがくの里のような自然環境に近い「ため池」で養殖すれば、オスとメスが半々になるのではないか、という大実験なのです。
 6月中旬に、千葉先生の研究室で10センチまで育てたうなぎの稚魚をため池に放流。それから2か月。千葉先生と一緒にうなぎを捕まえ、放流したうなぎがそれくらい大きくなっているのか確認してみることに。千葉先生が捕獲のために用意したのは、暗くて狭い場所を好むうなぎの行動を利用した、先生自作の捕獲機。中には餌があり、食べようと筒に入ると、内側に返しがあって一度入ると出られない、という仕組みです。

 全部で20個の捕獲機を丸一日沈めておき、一晩待てば、うなぎがかかっているはず!
 翌日、捕獲機を引き上げてみると…中はからっぽ。次々と仕掛けを引き上げますが、どれもからっぽです。ようやくかかった!と思ったら、それはドジョウ。実は、3年前の収穫祭の時に所さんが放流した100匹のドジョウが、うなぎよりも前にため池で養殖されていて、今回捕まえたのは、2世代目のドジョウだったのです。
 そして、肝心のうなぎはというと…1匹も捕まりませんでした。鳥に食べられてしまったのか、環境が合わずに死んでしまったのか。千葉先生によると、自然に近い環境なので、うなぎが棲み家を作って潜っていたなら、わざわざ出てくる必要がない、とのこと。かがくの里のため池は、水が抜けないようにビニールを張った上に、雨などで流れ込む土や田んぼからの栄養豊富な泥などが堆積して豊かな生態系を作り上げているのです。ため池自体に餌が豊富な環境なので、わざわざ仕掛けの餌を食べに来なかった可能性があるのです。
 そこで、次の作戦に。隠れ家として利用する個体がいるかもしれないので、もう一度仕掛けを池に沈め、1週間ほど置いて棲み家として入ってきたうなぎを捕まえよう、という方法です。そして1週間後、仕掛けを引き上げてみると…またもやからっぽ続き。仕掛けは残り3つ。本当に全滅してしまったのか、とさえ思い始めた時、ついに仕掛けの中からうなぎが出てきました!

 2か月前の稚魚の時と比べると、かなり大きくなっています。オスかメスかが分かるのは、20センチから30センチになってから、と言われています。そこで麻酔をかけ、大きさを測ってみると…20.5センチ!ギリギリ超えている大きさです。しかし、性別を確認するには、お腹を開いて生殖腺をチェックする必要があります。千葉先生も迷いましたが、ようやく捕れた一匹なので、今回は性別の確認は見送ることに。しかし放流から2か月、10センチだったうなぎは、なんと倍の20センチまで大きくなっていたんです!

 千葉先生によると、普通、川で暮らす天然うなぎが10センチぐらいから20センチ大になるには、およそ1年もかかる、というデータがあるのだそう。うなぎの餌となるよう放流したエビやドジョウの稚魚、水生昆虫といった生物がたくさんため池にいるため、成長がはやいのではないか、とのことです。