放送内容

第1442回
2018.09.16
夜の生き物 の科学 地上の動物 水中の動物

 昼と違う表情を見せる夜の動物たち。いま、そんな“夜の生き物”を観察できるナイト動物園や水族館が大人気。つま先を上げて眠るペンギン!?ホッキョクグマの大胆過ぎる眠り方とは!?さらにほとんど眠らない動物、キリン。その貴重な寝姿を捉えるべく1週間の撮影。するとついに決定的瞬間が!?
 今回は、生き物たちの夜の姿に迫ります。

夜の水族館&動物園 生き物たちの驚きの姿

 裕太さんが向かったのは、千葉県の鴨川シーワールド。そして後藤さんがやってきたのは、北海道にある旭山動物園。今回は、動物園と水族館に暮らす、生き物たちの夜の姿を観察します。

 まず、夜の水族館で目撃したのは、人間では考えられないペンギンの“超辛そう”な寝姿!よく見てみると首がありません!さらに、昼間うたた寝をしているペンギン。つま先を上げて寝ているように見えますが、これは一体。

 実はこれ、体温が下がらないようにしている工夫。ペンギンの足やくちばしは毛がないため、その部分が冷えてしまわないよう、足はかかと立ち、くちばしはフリッパーと呼ばれる手の部分にしまって眠っているんです。
 でも、こんな不安定な状態で、寝づらくないのでしょうか?
 生き物の骨格に詳しい、東京大学の遠藤教授によると、ペンギンの骨格は常に膝を曲げて完全にしゃがんでいる状態。そのため前後のバランスが安定しやすいので寝ながらつま先を上げても、倒れることはないんです。

 寝ているときは動物にとって命が最も危険にさらされている瞬間、睡眠は弱い者にとってどうやったら睡眠状態から逃げられるか工夫をしているんです。
 中には、ちょっと変わった方法で眠る魚も。
 ここで目撃したのは、アミメハギのなんとも“健気過ぎる”寝姿。アミメハギは、水に流されないよう海草をくわえて寝るんです。
 さらに、水流との戦いはほかにも。ラッコは流されないよう、自然界では昆布を体に巻き付けて眠るそうですが、昆布のない水族館ではラッコ同士、仲良く手を繋いで寝ることもあるんだそうです。

 こちらは北海道の旭山動物園。ここで目撃したのは、お客さんも思わず心配する、アザラシのアブない寝姿。他のアザラシと様子が違うものがいるということで、探してみると、仰向けになり、微動だにしないアザラシ。すると数分後、ゆっくりと動き出しました。これは、体が浮き上がらないように間に挟まって寝ていたんです。アザラシは肺呼吸のため、20~30分たつと息が苦しくなって眠りから覚め水面にあがります。

 でも、なぜわざわざ息が続かない水中で眠るのでしょうか。野生のアザラシはエサを求め、陸地のない外洋に出ることが多く、水中の岩に挟まることで安定して寝ることが出来るんです。

 一方、水族館で目撃したのは、王者の貫禄漂う大胆なシャチの寝姿。
 シャチは肺呼吸のため長い時間水に潜っていることはできず、野生では水中で眠ることが多いようですが、動物園では、安心しきっているのか頭の噴気孔だけを出して水面で眠っています。

 「海の王者」と呼ばれるシャチ。プカプカと優雅に眠る姿は、貫禄たっぷりです。

 そして、こちらも氷の上では敵なしと言われるのが、旭山動物園の人気者・ホッキョクグマ。普段、どのように寝ているのでしょうか。特別に宿舎にカメラを仕掛けさせてもらい、その様子を観察します。
 夜9時を過ぎ、宿舎も真っ暗。するとホッキョクグマは横になり、眠りにつきました。気持ちよさそうに眠り続けること2時間。ここで、なんと寝返りを打つように仰向けの状態に!大の字で寝始めたんです。

 他の動物園でもまるで銭湯にいるオジサンのようにリラックスして寝るホッキョクグマの姿が目撃されています。

超貴重!イルカとキリンの寝姿!

 まず向かったのは、水族館の人気者・シロイルカの水槽。ここで目撃したのは、寝ているようで寝ていない!?シロイルカの“半球睡眠法”。
 肺呼吸のシロイルカは、熟睡してしまうと、溺れたり外敵に襲われてしまう危険性があるため片方の脳は寝ていても、もう片方は活動しているんです。

 片方ずつ休んでいるのは、反対側の目が閉じていて、反対側の目が開いていることでわかります。
 シロイルカは繊細なため、半球睡眠を撮影するのはかなり難しそう。そこで今回、特別に水槽前にカメラを仕掛けさせてもらい、そばから、シロイルカの様子をモニタリングします。
 観察開始から1時間。シロイルカは、まだ起きている様子。さらに、待つこと1時間。先程より、動きが明らかにゆっくりになってきました。
 シロイルカを見てみると、片方の目はしっかりと閉じて、もう片方は開いています。

 これが半球睡眠の決定的証拠。貴重なシロイルカの寝姿を撮影することができました。

 続いては、動物園の他の動物と比べても寝る時間が極端に少ないという「キリン」。ここで目撃したのは、飼育員も見たことがない!キリンが眠りにつく決定的瞬間。
 昼間のキリンは一向に眠る気配はありません。そこで、特別にキリンの宿舎にカメラを設置させてもらいました。
 その様子を遠藤先生に見てもらいます。
 午後6時半。長い首を下に下げました。そこから、体が左右に揺れ、ついに長い足を折り座り込みました。
 遠藤先生によると、動物園は敵がいなくて守られているので、過度にリラックスしているとのこと。
 そのまま過ごすこと2時間。ついに決定的瞬間が!キリンが首を折りまげ、背中のほうに顔を移動し目を閉じたのです。キリンの貴重な寝姿。このような寝姿は野生ではあまり見られず外敵のいない動物園ならではの究極にリラックスした状態だといいます。

 そして、眠りに入ったのもつかの間。その6分後には再び動き出しました。キリンはこのように短時間の睡眠を何回かに分けてとり1日2時間ほどしか眠らないんです。

夜になると元気になる動物たち!

 昼間は寝てばかりいるシンリンオオカミ。日も暮れ、閉園時間が近づくと、なんと閉園のアナウンスに反応し、一斉に鳴き始めました。一体どういうことなのでしょうか?
 オオカミは群れ同士が遭遇すると、争いになるので、それを避けるために遠吠えでコミュニケーションをとるんです。女性のアナウンスが流れると、何者かが近づいてきていると警戒し、遠吠えをしていると考えられています。

 続いては、シマフクロウ。日中は、枝につかまり、ひたすらじーーーっとしていますが、夜になると、その姿は一変。飛んできたフクロウは、池の中をじっと見つめています。人間の目では、池の様子はまったく見えませんが、次の瞬間、池に飛び込みます!そして、しっかりと魚をつかまえました!

 でも一体なぜ、真っ暗な環境の中でも魚をつかまえることができたのでしょうか。
 遠藤先生によると、フクロウの目は網膜を通過した光が眼底で反射し再び網膜を通るので周囲が暗くても見えるとのこと。

 続いては、夜に見られるコアラの意外な姿!コアラの宿舎にカメラを仕掛けてその1日を観察します。1日22時間も眠ると言われるコアラ。この日も、さまざまな体制でぐっすりと眠り続けています。
 夜の8時を回る頃、宿舎では、何やら動きが。
 コアラが隣の木にジャンプ!さらに、葉っぱをむしり取り、むしゃむしゃと勢いよく食べ始めました。夜は、22時間眠るコアラの、貴重な活動時間だったんです!